主の夢を見た。
新しく就任した主ではない。彼の母である、前の主だ。この身を与えてくれた。長谷部、と名前を呼んでくれた。刀としての役目を再び与えてくれた。
戦でひときわ活躍した時、「お前は私の誇りだよ」と顔を綻ばせてくれた。
桜の花びらで彩られたそれらの記憶に目を向ければ、いつでも暖かい感情を与えてくれた。

「…………あるじ」

目が覚めると天井が滲んでいて、ザアザアとした音が聞こえる。
雨粒が本丸や地面を激しく叩いている音だ。
幾度も聞いたことのあるそれに、ふと、主の愛でた桜が散ってしまわないだろうかと気になった。

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