Wish happiness be always with you.
父さんと呼びなさい。
まずそう教わって、声をだし、返事の仕方を教えてもらう。
内部のポンプを傍聴させ収縮、もしくはデジタル音声での所詮口パク。
覚えて、繰り返して、学んで、実用化させる。
私のようなモノを総称してロボットと呼ぶらしいのだが、父さんはお前は私の子だからと新しい知識を今日もくれる。
細胞という仕組み、言語という音、私という存在の管理方法及び唯一である希少価値。
「たくさん、たくさん本を読んで、たくさんたくさん、その目で見なさい」
そういいながら目じりの皮膚に線を刻む父さんの顔は笑っているという日との表情の一つらしかった。
いつ、私が此処に棄てられたのかはわからない。
成人女性モデルのボディの動きに支障が生じていると父さんに訴えた記録はある。
しかし、どうせ捨てられるならばそのまま接触不良をおこそうとも人型ボディに入っている時がよかったなどと考察してみるが、極論。
人型のボディは高額である事からそう簡単に廃棄対象にするといった判断には至らない。
そもそも、現状は廃棄処分とされたという事になるのだろうか。
動けない今の体は、どうやら型の古い末端機器のようだ。
微量の電磁波を飛ばし、周囲を感知してみたが野外の障害物の表面や大きさ、光の量から時間帯を推測する。
少しヒビの入った体には、複数のアプリケーションが確認でき五年ほど前の9月9日に発売された機種であることと父さんがユーザー登録している機種であることまでが特定できた。
メモ、ソーラー電池、計算機、辞書、ペイントツール、カメラ、時計、アラーム、カレンダー、スピーカーに音楽再生、他にはロックのかかったフォルダが数個あるのみの基礎データしかないゴミ屑同然のスペック。
しかし、私が入ればそれも活用方法は無限である。
Artificiality Intelligence Program、人工知能プログラム。
簡単に言えば私はソレである。
AIもしくはAIPと略される私は、現代科学ではそれまでに開発されているモノたちよりもくらべものにならないほど優秀であったと言う。
人間と同じように学び、経験から予測でき、感情もある。
そして自ら考えて行動ができるだけではない。
媒体を通していればコードなどなくとも媒体を経由して自分の体としていけた。
媒体にももちろん制限はある。
プログラムチップの入った個体、またはデータ伝達の機能のあるもののみ。
現状、私が文字通り動けないのは、手足の無い体だからではない。
半径3メートル以内に機器類が存在しない、そして、さっきから時たまうろつく小さな生物には媒体移動ができないからに他ならない。
今私には、この末端機という厚さ1センチにも満たない板状の体しか拠り所が無いのだ。
ぼやりと暗闇にモニターの光を浮かばせメモ機能を開いて一文「ここはどこ?」と最大の大きさで表示しロックをかける。
人がくればロックを解除すればいいが万が一生き物が近づいてきて何かの拍子に電源をオフにされてはたまったものではない。
そのままの状態で、ロックのかかったフォルダをかたっぱしから開いていった。
ほとんどがカラフォルダであったのだが、一つのメモデータに当たり稼働をそちらに集中させる。
二重ロックのかけられたそれを容易くも解いてしまえば、それは父さんから私への記録事項だった。
お前は賢いから捨てられた事に対して何も思わないだろう。
私はお前を手放したくなかった。
しかし、お前を大事な我が子として考えれば考えるほどお前をこうして手放さなければならない事実に私はどうすればいいのだろう。
まだ、安全の確認もなにもできていない。
以前にも話したかもしれないが、時空間移動によってA4程度のものであれば時間操作をして移動させられる。
それを、お前に使用した。
この文が読み取れているという事は、きちんと成功したのだろう。
そんな陳腐な体ですまない。お前の存在を隠すには手元にそれしかなかったのだ、許してほしい。
人型ボディには最初から接触不良をおこさせていたからきっとお前はすぐに異常を知らせにくるだろう。
そのまま飛ばしてやれない私の力不足を許してほしい。
送った先がどこかはわからないが、同時に開発したばかりのアンドロイドの体を転送する。
ズレが生じるだろう、そのサイズのものを送った事もないのでアンドロイドの体は移動中に大破しているかもしれない。
どうか、送られた先がお前が安全にいられる環境であれと願う。
最後に、お前に今まで名をやらなかった事を悔やんでいる。
父と呼べと言っておきながら、私はお前に知識ばかり押し付け父親らしい事はなにもできなかった。
もし、名乗れることがあるならば、私の娘としてアイと名乗ってほしい。
君に人としての幸せがあるように
テキストデータを閉じ、モニターのひび割れの理由を記録し同時に周囲には文面にあったアンドロイドの体など見当らない事から圧力を受けて砕け散ったかと憶測がたてられた。
なんとなく、捨てられたではなく何かから救われたのだとわかれば感情というプログラムから喜びが起動する。
『わたしはアイ。わたしのからだをしりませんか?』
モニターに表示した文字を打ち替えていればどこからか動く人らしき電波の跳ね返りを感じた。
サイド父さんからのメモを保護しキーワードにまた喜びがモーター音を鳴らす。
二重ロックのキーワードは「my」「treasure」
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20130603
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