9/エメラルドの瞳

ここ数日間の間に悪魔や死神、通常では考えられない事を体験して居たマリアはアンダーテイカーから昔に貰った絵本を読んでいた。





『お嬢ちゃん、面白い本をあげるよ』


『しにがみ?あくま?』

『この世界には死神も悪魔も存在するかもねぇ…ヒッヒッ…』







まさか本当に存在して居たとは…




久しぶりにアンダーテイカーの店へ寄ろうと思ったマリア。
「アンダーテイカー居る?」


「やぁお嬢ちゃん」




冷めた紅茶と骨型クッキーを食べる。




「どうしたんだい?疲れた顔して」


「色々あってね」


「好きな人でもできたのかい」


「そんなの居ないわよ」

「お嬢ちゃんもお年頃だからねぇ…いずれお嫁に行く時が来るだろう」


「行かないわよ」


「君のお父様も君がお嫁に行って幸せになるのを望んでたよ」


「はいはい。マダムレッドもみんなそう言うんだから…」


「なんなら小生の所にお嫁に来るかい?」




アンダーテイカーは前髪をかきあげた。




予想外に整った顔に一瞬驚くマリア。




「冗談だよ…小生にとってお嬢ちゃんは娘みたいなものだからねぇ…ヒッヒッ…」






アンダーテイカーの瞳とグレルの瞳の色が綺麗な黄緑色だ。と思ったマリア。




最初はただの偶然かと思っていた。


アンダーテイカーからまた不気味な悪魔の本を貰った帰り道。



ロンドンの街を歩いてるとグレルが居た。



隣には七三分けの神経質そうな人。



「グレル!」


「ウィル〜…アラ、マリア」


「グレル・サトクリフこのレディは?」


「ファントムハイヴの娘ヨ」


「あの害獣の…?」



眉間にシワを寄せるウィリアム。



「紹介するワ。ウィリアム。アタシの同僚」


「先輩達早いッス〜」




後から金髪の後輩らしき人が追いかけて来た。




「ロナルド遅いワヨ!」



「グレル、この人達も死神?」


「そうヨ」





さっき見たアンダーテイカーの瞳


この三人の瞳



同じ色だ。





マリアは走り出した。




「チョットマリア何処行くのヨ」


「グレル・サトクリフ、貴方は人間と接触してまたよからぬ事をするつもりですか?」


「違うワヨ!みんなアタシの事疑って」


「さっきの子可愛かったな〜連絡先聞いとけばイテッ」


「ロナルド・ノックス貴方も何を考えているのですか」


「じょ、冗談ッス」

アンダーテイカーの店へ引き返すマリア。



「おや?どうしたんだい?お嬢ちゃん」


「アンダーテイカー…貴方も死神ね」


「急にどうしたんだい?」


「アンダーテイカーの瞳はグレル達と同じ瞳の色ですもの」


「…ヒッヒッ…お嬢ちゃんは相変わらず勘がいいねぇ…」






髪をかきあげるアンダーテイカー。



美しい黄緑色の瞳がマリアを見る。



「“死神”そう呼ばれるのは久しぶりだねぇ…」

「私、ずっと前から死神と接触してたんだ」


「そうだねぇ…お嬢ちゃんは赤い死神君達にも会ったようだねぇ」


「えぇ。会ったわ」

「執事君の事も知っているのかい?」


「もちろん。ねぇアンダーテイカー、悪魔を封印する方法知らない?」


「小生知らないなぁ」


「残念だわ。ねぇ、アンダーテイカーは何でこの世界に来て葬儀屋なんてしてるの?」


「それは内緒だよ…ヒッヒッヒッ…でも小生はお嬢ちゃんの味方だからね」











マリアはその日眠れなかった。




自分の周りに死神や悪魔が存在している不思議で通常では考えられない事が日常的に存在していたから…


“流石ファントムハイヴの血を引く者”


そう思ったマリアであった。