「おはようございます」
セバスチャンはマリアの頭と額と頬にキスを落とす。
アーリーモーニングティーを渡すが飲まず、不機嫌で悲しそうな顔をする。
「いらない!」
布団に潜り込んでしまうマリア
「はぁ…今日はお知り合いの伯爵のパーティーでしょう」
「行きたくない!」
バサッと布団を強引に剥がし
「マリア、いい加減になさい。最近の貴女はまるで子どものようで…」
「だって…」
「だってセバスチャンが一緒じゃないと嫌なの」
ぽろぽろと涙を流しながら話すマリア
まるで駄々をこねる子ども。
「先週だってシエルとの任務で居なくて、やっと会えたのよ?…行きたくない、セバスチャンと一緒に居たい」
任務でしばらく二人は離れていて、やっと帰って来たらマリアはパーティーでまた離れてしまう。
セバスチャンは、マリアの横に座り、呆れた顔をし、手袋を外して涙を拭った。
2年前の彼女はもっと強さを見せていて自立した少女に見えた。
婚約をし、彼女と距離がなくなると、凄く弱く脆く無理をして強がっていた一人の女だった。
「では、マリアは今日は具合が悪いのでここで休んでいる事にしましょう、パーティーには参加されないで大丈夫ですよ。私から連絡しておきます」
呆れてしまう。
自分に。
彼女にはとことん甘い自分に。
本当に彼女は不思議で私に色々な感情を芽生えさせる。
「いいの?」
マリアは起き上がってセバスチャンに抱き付いた。
「今日だけですよ?」
昼過ぎ。
使用人達と弟とセバスチャンが外で騒がしくしているいつも通りの光景。
使用人と弟とセバスチャンが出かけるのを窓から見て悲しくなるマリア
「私も出掛けたいなぁ」
一人で居るのが憂鬱。
一人窓から庭を眺めながらマリアは色々考えていた。
セバスチャンと出会った頃は
とにかく嫌いで
だんだん好きになってきて
好きと伝えて断られて悲しくて悲しくてここを飛び出して
戻ってきたら彼にプロポーズされて、
セバスチャン。彼は私に必要不可欠な人(?)になっていた。
成長して変わり果てた私の体型を誉めてくれたり、私の相談相手になってくれたり、強がっている私を受け止めてくれた。
マダムレッドがヴィンセントにコンプレックスだった赤い髪を誉められてどんなに嬉しかっただろうか…
自分が幸せになる度考えてしまう。
マダムレッドはどんなに辛かったか。
布団に潜り込んで泣いてしまう。
私はこんなに弱くなかったはず。
弱い私をセバスチャンは嫌わないかな。
マダムレッドが生きていたら、たくさん恋の相談をしていたんだろうな。
「…マリア、マリア」
「セバスチャン?!」
目の前に、セバスチャンが立っていた。
「また泣いて。何度もノックをしましたのに」
「ねえ、セバスチャン、私の事嫌いにならない?」
マリアは布団から飛び出て立ち上がった。
「いきなり何ですか」
「自分でもよくわからないけど、セバスチャンが私の事を嫌いになったり遠くに行っちゃったりしないか怖くて…」
セバスチャンはマリアを抱き締めた。
「嫌いになどなりませんよ。私もマリアと同じ。自分でもよく分かりませんが、ずっと貴女の事を考えていますし、なんだか貴女を甘やかしてしまいますねぇ…」
しばらくマリアをセバスチャンは抱き締めて居た。
マリアはセバスチャンから離れて、手を握った。
「あ!大変!今日は2月14日!」
昨日から憂鬱で乙女のイベントを忘れて居たマリア
セバスチャンが大きな紙袋を持ってきた。
「これは?」
「こちらが坊っちゃん、使用人、こちらがソーマさんとアグニさん、こちらがエドワード様とエリザベス様、こちらがニナさんとサリヴァン様」
紙袋には大量のチョコレートの袋や箱が入っていた。
一つ一つに「早く元気になって下さい」、「いつもありがとう」などと各自から沢山のメッセージが書いてあった。
「それと、こちらは私からです。愛しのレディ・マリア」
小さな黒い箱には赤いリボンが巻かれていた。
「心から愛していますよ」
マリアの頬にキスをした。