嫌われたんだと考えた。
俺も、槍である蜻蛉切や日本号とよりも、きっと、短刀である薬研や脇差の堀川との方が話しやすい事も分かってた。でも、俺は御手杵さんと話をしたかった。それほど出会う前から御手杵さんに惚れていたのは、自分でも驚きだった。だから、さっき言われたことは仕方の無いことと思っても、どうしても産まれたての脳味噌じゃ考え切れなかった。

「……え?」

あぁ、嫌われたんだ。と思ったんだ。

「っあ、……わ、わるい……」
「気にしないで、ください…」

無言。それが延々と続いている。それが気まずくて、空気が圧迫されそうだ。主の霊気は澄んでいて綺麗な筈なのに、気持ちが悪い。

「俺、先に行くぜ…」
「えっ、あ…はい…」

まだ昼餉を食べたばかりだと言うのに、何処へ行くのだろうか。知りたい、聞きたい。でも聞けない。怖い。怖いのだ。行ってほしくない。
それでも、御手杵さんはスタスタと歩いていった。遂に姿が見えなくなる。一人になると、空気が軽くなったように感じた。どっと汗が流れる。息が荒れる。

「はっ…はぁ、…ぁ…」

小さく、足音が聞こえる。恐らく短刀だろう。一体誰だ。
ひょっこり見えたのは、白衣に眼鏡をつけた、あの小さくとも男らしい奴だった。

「なまえの旦那ぁー…って、何かあったか?」
「……やげ、ん」

俺は薬研に御手杵さんとの事を話した。それはもうスラスラと言葉が出てきた。それを薬研は何も口出さずに、頷きながら聞いてくれた。俺よりも幼いのに俺よりも年が上だからか、謎の安心感があった。だからボロボロと涙が溢れる。薬研はその黒の手袋で拭ってくれる。
「そうか、そうか」
たったそれだけ。それだけで結構救われた。

「うぅ…御手杵さぁん……」
「なぁなまえ」

数分ぶりにまともな言葉を発した薬研を見る。艶やかな黒が光って眩しく見えた。

「今の日本じゃぁ、知られてる言葉があるんだが……」

押してだめなら引いてみろ。

「を、やってみたらどうだ?」

それはあまりにも突然過ぎて、俺はあんぐり口を開いた。