初めて合った印象値






独特の、トンネルの匂い。
そんな中で私は目覚めた。

「ぁ…」
「おい、大丈夫か?」

顔を上げると、綺麗な顔立ちをした男性が立っていた。うわ、私に話しかけたのか。大丈夫です。と言って私が立ち上がると男性はビックリした様子で後ろへと後退りをした。え。なんでそんなにビックリしてるの。

「お、おん、な…!?」

なんとなく想像はついた。私は今、つなぎを着ていて、髪はベリーショートだし、顔立ちもお父さんに似てしまっていてお母さんみたいにそこまで女らしい顔立ちではない。傍から見たらやや貧弱な男性なのだろう。
すると、男性は膝まついた。
…え?

「これはこれは。すみません。お嬢さん。」
「う、ううん?」

こいつ、生粋のラテン系だな。直感で思った。イタリア人とかフランス人辺だろう。しかし私は生粋の日本人なのでこんな時はどのようにかわせばいいのか検討もつかない。でも男性はせっせと長くなんと言っているのかよく分からない言葉を発している。

「…一緒にお茶でもしませんか?」
「はい?あの、えと、その」

本当に参ってしまった。どうやって断ればいいのだろう。すっぱりといいえ。と返事をしてしまえば、何だか怖くなった。殴られそうで。
だからといってもはい。と言うのもどうなのだろうか。まだお互いのことをよく知らない仲でお茶など。祖国が聞いたら顔を紅く染めて「なんと破廉恥な!」と言うだろう。

…話がとてもそれた気がするが、気にしてはいけない。そもそもどうして私はヨーロッパのトンネルに眠っていたのか、この男性は誰なのか。

「ん…?ヘーゼルの、瞳…っ!ま、まさかっ、お前、みょうじなまえか…!?」
「?はい…そうです、けど」

ヘーゼルの瞳なんてヨーロッパ人ではよくいるだろう。日本人…アジア人は少なくても多少はいる、筈。そんな中から、どうして私の名前が出たのか。

「日本から聞いてんだよ…お前、昨日の夜にイギリスのヤローと会ったんだよな?」

なるほど。その時に祖国から私について色々聞いたのだろう。この男性は私がイギリスに変な魔法をかけられたことも知っているようだった。
ここで眠っているのは、その魔法のせいだとか。…イギリスは本当に紳士なのか?私だってこんなんでも女なんだから、もっと優しく扱ってくれてもいいものを…

「おい、大丈夫か?」
「え、…あ、はい。」
「とりあえず、俺の家来るか。こんな汚い服は女性は嫌だろう?」

確かに着ているつなぎは所々黒く汚れているが、これは別になんとも思わない。しかし家に入れるというのはなんとも嬉しいことなので甘えることにした。