聞いてないよこんなの






朝起きて、ロマーノが全裸で寝ていたから発狂して、一緒に朝食をつくった。イタリア料理は美味しかった。そして、観光することになった。

「おぉー、私イタリア観光したこと無かったんだー」
「無いのか?バカ弟のところとか…」
「いや、ない。祖国がイタリア化?するからダメって」
「なんだよ、イタリア化って」
「ヴェーヴェー言っちゃうんだってさ。」

ヴェーとはイタリアの口癖だけど、祖国が言ってたって考えたら笑いがこみ上げてくる。どうしよう。
一人で口元を隠しながらニヤケを抑えてる私を、不審に思ったのだろう、ロマーノが頭に『?』を浮かべながらこちらを見てきた。
咄嗟に「なんでもない。」と誤魔化した。
そんな中で食べたジェラートはとても美味しかった。

「はぁ…それにしても、人が多いなー」
「おいなまえ!逸れるんじゃねーぞ!」
「分かってるよ…でも人がおおすぎるし、私背小さいし…」
「ぅ、っ…しゃーねーな!」

するとロマーノは私の腕を掴み、指と軽く絡ませた。恋人つなぎ、とでも言うのだろうか。
突然のことに頭が回らない。ショート寸前だ。恋人つなぎなんて、した事ないのに…!

「あ、わ。ロマ、さん?」
「べっ、別にそーゆー意味じゃねぇからな!?なまえが逸れたら困るから繋ぐんだからな!」
「あ、ハイ」

そうですよね。でも私だってそろそろ成人しますよ?確かに、ロマーノよりははるかに年下ですけど…
子供扱いしないでほしいな…
あ、ロマーノの手が、暖かい。意外に子供体温なんだろうか。中心から、じんわりと人肌特有の温かさが伝わる。
恋人が出来たら、こんな感じのが毎日なのかな。羨ましい。
誰かと、こんなことを毎日出来たら。

誰かも分からない理想の男の人を思い浮かばせていると、突然手の温かさが消えた。

「え…?」

まじで逸れた?ロマーノと?
……どうしよう。
まって、ロマーノどこ。人が多いから、分からない、ロマーノが、何処にいるかなんて、分からない。

「ロ、ロマーノ!どこ!?」

大声を出しても、知らない人が振り向いて、はてなを出したような仕草をして、また歩き出す。どうしよう。いやだ、一人は怖い。
その怖さを隠すように速く速く歩くと、後ろから、手が伸びてきて私の肩を掴んだ。
ロマーノが来てくれた。良かった。

「ロマ…「Ciao!オネーサン、美人だねぇ?一緒に遊ばない?」

誰?私よりも、ロマーノよりも背の高い人。顔立ちはいいけれど、ロマーノやイタリアとは違う。そう感じた。
先程よりも怖くて、声が出ない。ぱくぱくと、金魚のように、口が動く。

「ぁ……ゃ…」
「んー?どうしたの?オネーサン?速く行こーよ。どこに行きたい?」

誰か分からない人に、その長い腕で腰を寄せられた。いやだ、怖い、一人よりも、怖い。嘘、いや、ロマーノ、誰か、お願い、助けて。
視界がぼやける。泣きそう。声が出ない。空いた手を握られる。ロマーノよりも、冷たい掌。冷たい。あの時の、ような。「離してください」と言いたいのだけれど、言葉が回らない。
そんな時に、あの安心する声が聞こえた。

「なまえちゃん!?その男達誰!?」
「お前、みょうじに何をする?」
「え…」
「は!?っ…他に連れがいるなら先に言えよな…!」

さっきまでの勢いはどこに言ったのか、名前も知らない誰かさんは逃げて行った。
あぁ、助かったんだ。良かった。
途端にズルリと足が崩れる。握られていた掌は震えていて、イタリアとドイツがいなかったら、私はどうなっていたのだろう。

「ふ…は、良か、た」
「みょうじ…大丈夫か?立てるか?」
「無理、そ」
「ヴェ〜あの男、なまえちゃんに酷いことしやがって!」
「あはは、」

うまく笑えてないのは、わかっているけど、頑張って笑う。そうしたらドイツに「無理して笑うな」と、言われた。

「そういえば!おにぃちゃんがなまえちゃんのこと探してたんだよ?三人で手分けして探してたから、多分反対道で探してると思う。」

うそ。探してくれてたの?
ロマーノ、会いたい。「大丈夫。二人に助けられたから、平気だよ」って、言いたい。
ひとり言のように考えていたと思ったけど、イタリアとドイツに聞こえてたらしい。二人共、優しく微笑んでくれて

「じゃあ、一緒におにぃちゃん探しに行く?」

そう言われた。
私は、ロマーノに会いたくて、首を縦に振る以外考えなかった。





ーーーオマケーーー

(ねぇ、何で二人は此処にいるの?)
(んー?ドイツのイタリア観光ついでに、“なまえに会いに行こう”って、ドイツが言ったからだよ〜)
(イ、タ、リ、ア?)
(ひぇっ!お、俺、本当のことしかいってないよぉー!)
(ふふ…相変わらず二人は仲良いね)
(あ、うん…)