記憶安心


正直に言おう、左右田。助けてくれ。頼む!

「えへへ…日向さぁん、話聞いてます?」
「あ、あぁ聞いてるぞ!それでなんだ?」
「そうですねぇ…みょうじさんと洋服を選んだ話はしましたっけ…」

あぁ聞いた。これで何回目だ、三回目だ。そろそろある程度の言葉なら覚えられそうだ。どんだけ聞かされるのだろう、なんで罪木とみょうじはこんなに仲良くなったんだ。最初はみょうじが罪木の周りをうろちょろしてただけだっただろう、それなのに、いつから。

「なぁ…罪木、」
「はい?なんでしょうか」
「…お前は、みょうじのどこが好きなんだ?」
「……」

急に真顔になる罪木。なんだろう、なんか聞いてはいけないことでも聞いてしまったのだろうか?
と、思ったがそうではなさそうだ。直ぐに罪木は、光悦の表情を浮かべ、頬に手を付けた。

「なんて言うんでしょうか、何か昔に、みょうじさんと似たような人を見た気がするんですぅ。なんだか、その人を思い浮かべると、ふわふわした気持ちになるというか、幸せになるんですぅ。…えへへ、やっぱり私、みょうじさんが好きなんですねぇ」

つまりは昔の憧れの人に似てるから好きなのか?
なんだ、それ。
でもまあ分からんでもない。たまにアイツが何処を見てるのか分からないときの顔は、何かが過ぎる。それと同時に頭が痛くなるのだ。まるで、何かを忘れているようなーー

「罪木さん!」

バン!と音が鳴ったと思えば、左右田とみょうじがやって来た。インターホンも押したようだが、全く分からなかった。左右田は嫌そうな顔で、みょうじは嬉しそうな顔でそれぞれ俺、罪木に近づいた。

「あぁ罪木さん…さっきの、言葉は…」
「本当ですよぉ…?こんなゲロ豚な私ですけど、私でもいいですか…?」
「あぁ、良いに決まってる!」

それでヒシッ!とお互いにハグをした。

「みょうじ、ずっと罪木罪木コールしてて煩かったんだよな。お陰でまた機械弄りできるぜー」
「…お疲れ、左右田」

俺は左右田の肩をポンポン、と叩いた。