だいっきらい!


それでも憎めないのはあなたの大切な人だから
※エリック→サクモモ描写あります。

弟のエリックが発情期のオーガの女の匂いを身体にまとってやってきた。
きっと何人もいるセフレのオーガの女性が発情期で、その人とセックスをした後なのだろうが…。
その噎せ返るようなにおいが鼻につき、いやでもオーガである自分は反応してしまいそうになる。
「帰れ」
手で鼻と口を抑えて、キョトンとするエリックを尻目に勢いよく扉を閉めた。
すると、どんどんと扉を叩いてなにやら言っているが、ガン無視をキメてやることにする。
「絶対にわざとだろ…」
匂いを遮断したはずだというのに、体は熱を持ち、下半身がずくずくと疼いてくる。
オーガのこういう野性的な本能がイヤだ…と深いため息と嫌悪が襲う。
心に決めた人がいるというのに、別個体の女のにおいに反応してしまうなんて自分はなんて浅はかな存在なんだろうと頭を抱えた。
「最低だ…」
サクラさんが帰宅する前になんとかしよう。と、モモンは風呂場へと向かった。

*

「何してんの」
早朝、トラックを職場に置いて愛する旦那が待つ自宅へと帰宅したら、玄関先に座り込むツンツン頭の魚がいた。
ゆっくりとこちらを向くその顔は誰が見ても息をするのを忘れるくらいの美貌、整った切れ長の目は一瞬だけ、私を睨む。
しかし、その目は一瞬にしていつもの目へと戻ってしまった。
危険な雰囲気をモンちゃんがいる状態では絶対に見せない、本当に掴めない男だ。
「え〜?発情期のオーガの女の匂いつけてアニキ誘いにきた」
「…帰って」
しょうもない事を考えたものだ…と呆れかえりながら、自宅に入るべく脚を進める。
段々と近づいて、目前まできたときにニヤリと笑うこの男は、本当に嫌いだ。
「しょーがねえなぁ」
首に手を当てながら怠そうに歩き、彼は私の横を通りすぎていく。
「あ、そーだ」
「なによ」
何か思い立ったように後ろで声をあげるが絶対に振り返らない。きっとあいつも振り返っていない。
「兄貴とハメたら写真よろしく〜」
兄貴のヤッてるときの顔、すっげーエロかわいいもんな〜とケタケタ笑いながら言い残す奴に、カッとなって振り返ってしまったが既にルーラストーンで飛んでしまった後だった。
誰もいない玄関先で、足元の石を掴み、空に向かって投げるがどうせ聞こえもしてないし当たりもしないだろう。
だがこの苛立ちはそうすることでしか収めることはできなさそうだった。
「誰が送るか!!」