幣帚千金の子供


※ドラクエモンスターズ軸でテリーさんが出ます。



モンスターなんて大嫌い。みんながみんな、モンスターを連れて楽しそうにしてる。羨ましいわけじゃない。ほんとうに嫌いなのだ。あんな可愛くないのを連れて相棒なんて呼んで何が良いの?
そう思っていたら、後ろで圧倒的な存在感を放つ竜王様がクスクスと笑う。思わずムッとして振り返る。

「ナマエ、思考がダダ漏れだぞ」
「魔力消費しないんだからそれくらい、いいじゃないですか。」

私の竜王様は確かにな、と頭を撫でるように自身の頭を、私の頭の上に乗せた。爪は危ないから配慮してくれたのだろう。なんて優しい。紳士とは彼のような人を言うんだ。人ではないけれど。

私が竜王様に出会ったのは去年の春。10歳の誕生日に、お母さんとお父さんにスライムをプレゼントされた。お前もそろそろ持つべきだろうって言われたけれど、私はモンスターが怖かった。スライムの性格が悪かった訳でもないのに嫌がった私を両親は不思議がったけど、私は堪らず家を飛び出していた。
当てもなくふらふらしていたら、青いバンダナを巻いた男の人が、話しかけてきて、プレゼントをあげよう、と言って、自分の連れていたとてもカッコイイモンスターを譲ってくれた。

「コイツは主人を噛んだりしないから大丈夫。キミもモンスターを育ててみるといい。」

モンスターなんて嫌いだった私に、彼はそう言った。竜王様と向き合った時私は思った。彼こそ真のモンスターだ。そこらの森にいる凶悪なモンスターでもなければ、従順なように育てられただけのモンスターでもない。異様な圧。そしてこの王者の風格がどうしようもなく、格好良かったのだ。
試しに彼の伸びた首を触ってみた。鱗が気持ちよかった。目を合わせた。真っ直ぐに見据えてくれる竜王様。すごく、嬉しかった。

「あ、あの!本当に良いんですか......?」
「ああ。コイツも、それを望んでるみたいだからな」
「ありがとうございます!大事にします!」

恐怖なんて彼の前では皆無だった。青いバンダナの人は、微笑んで、どこかへ去ろうとする。そんな彼を呼び止めて、名前を聞いた。テから始まるステキな響きの彼が見えなくなるまで頭を下げていた。

「私、ナマエ。アナタの名前は?」
「我が名は闇の覇者、竜王。」

竜王様は強かった。コロシアムへも行けるようになった。私が危ない時は何度も庇ってくれた。凄く嬉しかった。でもいつからか、竜王様のことを誰にも渡したくないし、私だけが彼のパートナーだと思うようになった。簡単に言えば、そう、竜王様を独占していたいと思ったのだ。

他のモンスターにはまだ触れないし欲しくもない。私には竜王様だけでいい。私の考えは私の中で留めるだけだった。しかし。
どうしてもテレパシーを使わなければいけない状況になった際に、発動したらテレパシーが止まらずそのままなのだ。力の使い方を誤ったのか、止める方法が一切分からないのだ。危険は特にないので構わないが、恥ずかしいったらない。

「竜王様、ごめんなさい」
「何故謝る」
「だって」
「我は困っている訳ではない。ただ主人の面白い思考が覗けて楽しい。」

そう言ってまた笑う竜王様は素敵だ。どうして彼だけ大丈夫なのか。それはよくわからないけど。でも、やっぱり。

「それが恥ずかしいんです......。」

当分彼に隠し事はできなさそうだ。けれど彼への想いを閉じ込めなくて良いのだと思うと、気分は晴れやかになる。これから先、何があっても竜王様と一緒に居たい。その気持ちはきっと竜王様も同じなはずだから。




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