バニラの香り

 ある昼下がり、
 だけど、先生と話していたから、いつものように彼のもとへ駆け寄ることはかなわない。
 背中に全神経を集中させる。
 ふあ、と香りが抜けていった。
 香水?
 男性用の香水で、あんなに甘い匂いがするものなんてあるだろうか。
 だれかのを借りたのかな。
 悲哀が身体を突き抜けた。


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 楽しそうに笑っている。
 気づけよ、と念じた。
 もっとふりかけて来れば良かった。匂いで彼女が、僕に気づいたかも知れないのに。


すれ違う恋心