※一人称視点です。人格に問題があるイオン様の話。
一部キャラ捏造、PM厳しめ。


どうも、皆さんこんにちは。いえ、あるいはこんばんはでしょうか。どちらでもいいことですね。
挨拶はさておき、僕は導師イオンの8番目のレプリカです。オリジナルが病死だか暗殺だかされて、とにかく死亡してしまったので、代わりに僕が作られました。 今は僕が導師イオンを名乗ってます。8番目ということで理解していただけるでしょうが、僕の上に兄が数人います。ですが、残念ながら一人の兄を除いて全員乖離してしまいました。

とても悲しいことです。この悲しみはモースとヴァンにぶつけました。 樽豚と年齢詐称疑惑髭が安らかに眠るよう、お祈りしなくて結構ですよ。あいつらに貴方の慈悲はもったいない。それ以前に死んでませんから。あ、話がそれました。とにかく僕は導師イオンの成功作のレプリカだそうです。樽豚と髭は導師イオンのレプリカとして、僕を良いように扱う気をしていたそうですが、今の導師は僕です。そうレプリカの僕なんです!
どうして見下してくる部下の樽豚と髭の良いように扱われなければいけないんでしょうか。僕が教団のトップなのに。

僕がトップなのに見下してくる部下二名+@はとりあえず身を弁えさせてやることにしました。何をしたなんて聞かないでください。教団の機密に…当たりませんが、良心が咎める行いを部下二名+@にはしてきたので、善良なる貴方に言うのはちょっと。

僕が導師になって2年。当初は僕を侮っていた樽豚は日々悲鳴を上げて大詠師を辞職させてくださいと言ってますが、当然僕は受理しませんでした。そんな簡単に解放されると思っていた樽豚の脳はとても平和ですよね。僕がそう簡単に樽豚を解放するわけないのに。いろいろと樽豚には恨みが降り積もってるんです。
それに今、樽豚を解放すると、せっかく僕の言うことに諾と従ってくれる都合の良いお人形さん、間違えました大詠師を、他人に変えないといけないじゃないですか。せっかく僕の都合の良いように扱える大詠師を、他の人に変える気は今のところありません。なので樽豚にはひいひい言いながら働いてもらってます。最近肥満気味だったようなので、樽豚には良いダイエットでしょう。今まで権力に胡坐かいて寝ていたんですから、せいぜいその肥え溜めた贅肉と神経すり減らして必死こいて働いてください。

樽豚は僕にクビにしてもらおうと、わかりやすく不正をするようになりましたが、甘い魂胆ですよね。僕は樽豚の不正はしっかりと掴んでますが、樽豚は野放しにして、樽豚と髭の罪を、彼らの手駒に擦り付けて減らしてます。今頃、自分たちが使える手駒が格段と減っている事実に慄いている頃なんじゃないですか?
冤罪じゃないか? ええそうですね。だからなんだというんでしょう。僕は善人ではありませんので、障害になるものはどんな手段を使っても排除することにしてます。僕の敵は、冤罪擦り付けて牢にぶち込むか、もれなく僕に寝返らせます。髭に心酔しているやつは僕に寝返ることはあんまり無いんですが、樽豚の手駒は利害の一致か、もしくは樽豚に弱みを握られた人間が大半なので結構寝返ってくれます。導師がそんな真っ黒いところを見せるわけにはいかないので、僕に寝返るというよりも、シンクに寝返っているんですけどね。シンクは僕の代弁者なので。
僕が目の敵にしているのは樽豚と髭と僕の敵になる奴なので、僕を選んでくれる方には優しく接してます。ちゃんと給料や福利厚生はしっかりと保証してますし、何気に高待遇です。だから僕に寝返ってくれた方々は、やたらと感謝してくれます。僕はべつに彼らを救っているつもりはないので、感謝されても心苦しいだけです。本当ですよ。樽豚や髭が彼らの家族や大切な人を人質に取ろうとしても、僕の権力のほうが彼らを上回ってますし、そういう動きを感知しだい潰すか吸収しますので問題ありません。おかげでローレライ教団の殆どの兵士が僕の私兵になりました。外にもたくさんいます。トップって素敵ですよね。…僕の思うがまま!

僕の弱みを握ろうと無駄な足掻きをした樽豚が寄こしてきた導師守護役はスパイでした。どうやらスパイは樽豚に弱みがあったようなので、解放してあげました 。
弱みの原因は馬鹿正直でお人よしな両親にあったようなので、親馬鹿ならぬ馬鹿親は人格を変えてくれると評判の道場に一ヶ月ばかり預けておきました。すると不思議なことに、両親はお人よしの性格が一転、悪徳業者を見つけるとオラオラと責めて説教するようになったようです。おかげで悪徳業者がダアトから減るようになって、治安が良くなりました。これもお人よし馬鹿両親を道場に預けた僕のおかげですね。

とは言え、スパイ行為は犯罪なので導師守護役を辞めさせて、恩返しをしたいと言ってきたスパイはしょうがないので軍の士官学校に放り込んであげました。そこで主席とって卒業できたら僕に恩返しさせてやってもいいですよ。そう言ったら、まだ素直だったスパイは軍学校を主席で卒業して、軍に入ったかと思うと、自力で導師守護役見習いまで這い上がってきました。かつてオリジナルが贔屓で守護役にしていたアリエッタと共に、現在スパイ…アニスは、導師守護役として教育を受けていたようです。アリエッタが教育を受けているのは、オリジナルが贔屓で守護役にしやがったので、ちゃんと教育がなってなかったためです。教育を受けていないのに、導師守護役になっていた所為で、アリエッタは影で「導師の愛人」と呼ばれていたんですよ、まったく。オリジナルはアリエッタが導師の愛人呼ばわりされている状況をむしろ喜んでいた節があります。オリジナルはアリエッタにべた惚れしてましたから。でもそのことが原因でアリエッタが悪意に晒されていたというのに、オリジナルはその現状を放置しっぱなしでした。人間のことに疎いアリエッタは、悪意に晒される原因もわからず、その結果自分に優しくしてくれるオリジナルに傾倒していきました。アリエッタが僕に依存しているように見えるくらい入れ込んでいたのは、オリジナルがアリエッタの傍には僕さえいれば良いというくだらない独占欲の被害にあったからです。このことに関して、僕はオリジナルを心底軽蔑しました。
なので僕はアリエッタに一から教育を受けさせたわけなんですが、教育を受けていく最中にアニスと友達になり、アリエッタは嬉しそうにしてました。昔より今のほうがずっと楽しい、と。僕の傍にいられる時間が減ったことは寂しいと零してましたけど、狭い世界が広がっていくことが楽しくてしょうがないらしく、その所為で傷つくことも無論ありますが、様々な経験をすることでアリエッタの人生が豊かに色づくことだと信じて、僕はアリエッタを無闇に贔屓しないことにしています。
オリジナルはレプリカの僕にアリエッタを守れ、でも近づくな、と理不尽なことを言ってましたが、僕はオリジナルの言うことは徹底的に反してやろうと心に決めています。それはともかくとして、そろそろ彼女らの教育の成果が見たいので、和平仲介役にキムラスカに赴く僕の同行者として、そろそろアリエッタたちを連れて行こうと思います。

最近の樽豚は理由をつけてキムラスカの王城に避難しているようです。まったく根性がない。その点、髭は根性があって良いですね。何をやってもへこたれないあの神経には敬意を表します。

ところで、髭がこっそりとファブレ公爵領のベルケンドを乗っ取っていたので、僕もこっそりとファブレ公爵に密告しておきました。さらにこっそりと髭を総長の座から外しました。まだ教団には公にしてませんが、あの髭、無職なんですよ。それでいて、自分が総長だと思って、仕事をこなす姿は笑えますね。
ちなみに今のローレライ教団の総長は年長組であるラルゴたちがあんまりにも頼りにならないので、シンクにしました。 シンクはあまりにもヴァンが哀れなので同情してヴァンの部下をやってあげているようです。僕の兄は優しいですね。

あ、あとあの髭、ベルケンド乗っ取りだけでなく、ファブレ公爵のご子息も誘拐してレプリカとすり替えたようだったので、僕はファブレ公爵と内密に髭引渡し条約を結んでおきました。時が来ればファブレ公爵は髭をとっ捕まえる気満々のようです。このことはインゴベルト陛下にも話が通してあるらしく、キムラスカでは髭は立派な犯罪者です。ユリアの預言の年になるまで逮捕は待っているようですが、僕は髭がいつ後ろからグサリと刺されるのか楽しみで仕方ありません。

ところで、ファブレ公爵のご子息ですが、反抗的ですがヴァンの部下をきちんとやっているようなので、帰る気はないんでしょうね。いい加減帰らないと勘当されてしまいますよ…って、そう言えばすでに勘当されてました。僕ったらついうっかり忘れてました。現在ファブレ公爵のご子息はレプリカのルーク・フォン・ファブレのみだそうです。髪の色も聖なる焔の光、ルークに相応しいようなので、ファブレ公爵はアッシュの存在をむしろ黒歴史と見なしているようです。ご愁傷様です。

被験者ルークが誘拐されて、レプリカルークとすり替えられたことを知ったキムラスカは、ユリアの第六譜石に従わない方針に決めたらしいです。まあそうですよね、従った先に未来で待っているのは世界の破滅ですから。
被験者イオンの知識を刷り込まれた僕は、かつて被験者がザレッホ火山にある譜石を詠んで世界の破滅を知っていたので、キムラスカにこのまま預言に従えば待っているのは世界の破滅だとリークしておきました。ついでにピオニー陛下が即位してから、マルクトにも。
両国は預言離脱の方向で纏まったそうです。ダアトは僕が治めてから、預言は数ある未来のひとつという方向性で纏まってます。当たる確率が高い占いですね。近々、預言によるユリア宗教国ではなく、ローレライを神と讃える宗教国に鞍替えする予定です。両国の預言離脱の手始めに、マルクトとキムラスカは和平を結ぶことになりました。

そこで僕が和平仲介役に選出されました。使い走りなんて嫌だったので、断りましたが、ルークに逢ってみたかったので仕方なく承ることにしました。
ルークは僕の唯一の大事な友達、親友です。
ルークとはファブレ公爵を通じて、手紙を交わして親友になったんですが、彼の婚約者にあたるナタリア殿下が大変「マジうぜー、ナタリア何とかならねぇ?」だそうです。

ナタリア殿下って、そう言えば偽姫なんですよね。せっかくキムラスカに赴くので、ナタリア殿下が偽姫であることを理由に婚約解消させてあげるつもりです。そしてルークには可愛いお嫁さんを娶って欲しいです。待っていてください、ルーク! 貴方のイオンが向かいます! あ、一応言っておきますが、僕はルークのことを無二の親友としてみてますが、恋愛感情はありません。貴方のイオン云々はノリで言ってみました。

さて、僕の人となりは大体理解して頂けたでしょうか?
これは、そんな僕と親友のルークと+@の物語です。


・・・


「も、もしや、貴方はルーク…?」
「イオン…お前、イオンなのか?」
「ええ、貴方のイオンです!」
「イオーン!」
「ルークー!」

僕とルークはがっしりと抱き合った。ああ、これが友情なんですね…!

「…え? ちょっと待ってください。これはいったいどういう展開ですか?」

うるさいですね、この駄眼鏡ジェイドが! 
今ルークと感動の対面を果たしているんですよ、ちょっと黙っててくれませんか?

食糧の村エンゲーブ。
ピオニー皇帝によって和平仲介役に選ばれた僕は、これから食卓に並ぶ運命のブウサギがぶうぶうと無く、家畜共が当たり前のように歩き回る家畜臭い村にいました。獣臭いです、とても。何でも和平使者のジェイドが、和平親書をうっかりとピオニー陛下から貰ってくるのを忘れたらしいです。35歳にして記憶力が劣化してしまったなんて、可哀想な話です。
ジェイドの所為で僕らはエンゲーブで和平親書が届くのを待つ羽目になりました。

僕の時間を無駄にしてくれたことについて、ジェイドをネチネチと責めてあげようと思ったんですが、彼がうっかりを仕出かしてくれたおかげでルークと思いがけず対面できたので、僕の時間を無駄にしたことを許してあげませんが、少しだけ譲歩してバチカルに着くまでの財布代わりにして許してあげようと思います。お金で買えない時間の損出をその程度で埋めてあげるんですから、僕って優しいですよね。
とりあえず赤毛の少し身体が小さいブウサギをジェイドのお金で買ってピオニー陛下宛てに送ってあげましょう。ブウサギの名前はもちろんルークです。これは譲りません。

「ど、導師イオン?!」

なんですか、脇役その1。ルークの背後から姿を現したローレライ教団の衣服を着用した女に、僕はとんと見覚えがありません。
変ですね、僕は仕事ができる男なので、見覚えが無い教団員は一般信者以外いないはずなんですが。どちら様でしょう。

亜麻色の髪は真っ直ぐに腰近くまで伸びて綺麗です。しかし、長く伸びた前髪が片目の視界を遮っているんですが、すごく邪魔じゃないでしょうか。顔を俯かせたりしたら、食事時にフケとかゴミとか料理に入りそうで不潔です。
メロンを連想させる胸を強調して二の腕を晒して、足まで晒してると、軍服が卑猥に見えるのでやめてもらえませんか。女性の性をこうも見せ付けられると、反対に萎えるタイプなんですけど、僕は。肌を出すことに恥じらいを持たない女性は嫌いです。僕の好みはともかくとして、まともな意見を言えば、教団員全員がこんな格好をしていると思われたらトップとして遺憾なので、やめていただけませんか。ほら、アリエッタとアニスが物凄く不快な目を貴方に向けていますよ。たぶんそれは発育段階の過程にある女性の嫉妬もこめられているんでしょうが。
アリエッタもこのくらいの胸欲しいんですか? アリエッタは今のままでも充分可愛いと思いますよ。アニスはこれからでしょう。
胸の大小の有無で男は結婚相手を決めたりしませんから、安心しなさい。え? 恋人は決めるのかって? 決めるかも知れません、性欲に忠実な男性は。
でも非難してはいけませんよ、男性が女性ホルモンがむき出しになってる女性に惹かれるのは子孫を残すための本能が働いた結果ですからね。
せいぜい「これだから男は馬鹿なんだから」って思って呆れてやりなさい。男は意外とナイーブなので、その言葉に傷ついて萎えたり、図太い人間は開き直ったりしますが、気にすることはありません。
ところで僕、なんで男女の話をしているんでしょう。まだ2歳なのに。知ったかぶってすみません。

「貴方は?」

僕が尋ねると、亜麻色の髪の女性は姿勢を正した。

「申し遅れました。私は、大詠師モース旗本第三情報部所属のティア・グランツ響長です」
「ああ、貴方があの…」
「! 導師イオンに名を覚えていただけて、大変光栄です!」

喜びに顔を輝かせたティア・グランツは、もしかして僕が彼女の名前を覚えていたことに、自分が仕事が出来る女だからだと思ったのでしょうか。たぶん、そうでしょうね。彼女の反応を見る限り。アニス、笑いを堪えきれていませんよ。僕も釣られて笑ってしまうじゃないですか、せっかく我慢しているのに!

「どうして貴方がルークと共に?」
「え…あ、それは、その、」
「こいつ、譜歌を使って俺の邸を襲撃した犯罪者」
「…はい?」

幻聴でしょうか? ティア・グランツが譜歌を使って犯罪を犯したと、ルークが言ったような気がしたんですが。
アニスもアリエッタも目を丸くしてますね。僕と同じ幻聴が聞こえたようです。

「ルーク、誤解させるようなことを言わないでちょうだい。私はあなたの邸を襲撃なんかいないわ」
「お前が自覚してねーだけで、世間一般的に見てお前は俺ン家を襲撃したんだよ」
「世間一般的に見てって…擬似超振動のことも理解していなかったあなたに言われてもね。知ったかぶるのは良くないわよ」
「はあ!? あん時は寝起き早々にお前が擬似超振動がどうたらこうたらと言うから、すぐに頭が働かなかっただけだっつーの!」

ため息を吐きながら告げるティアは明らかにルークを《何も知らない世間知らずのお坊ちゃま》という目で見てました。
仮にルークが世間知らずだとしても、ティアが馬鹿に出来るような御方ではないというのに、それを何この馬鹿娘は堂々と馬鹿にしているんでしょうか。
ルークってキムラスカ王族ですよ。王位継承権第三位という、次期国王になることを確実視されている身分ですよ。なんたって二位がルークのご母堂ですし、現在一位のナタリア王女はキムラスカ王族と何の関係ない娘ですから時期に失脚する身です。
ルークは王子と言っても過言ではない身分なのに、それをたかが一介のオラクル兵が馬鹿にするとは。
いえ、彼女は本当はオラクル兵ではないんですが、仮にも情報部の軍人を名乗っておいて、そんなこともわからないとは彼女は馬鹿ですか? そう、馬鹿でしたね。

「…ティア・馬鹿ンツ」
「え? ば、バカンツ?」
「間違えました、ティア・グランツ。あなたは仮にも情報部所属の軍人を名乗っているというのに、キムラスカ王国の事情に疎いだけでなく、どうも世間一般常識にも疎いようですね」
「っ」

僕がそう言うと、ティアは真っ赤な顔になりました。それは怒りによるものでしょうか、それとも恥辱でしょうか。
どちらでも構いませんが、僕に文句があるような目で見てくるのは何事でしょうね。アニスとアリエッタが殺意がこもった目で睨んでますよ。疎いティアは気づけないようですけど、それでいいんですか? 名だけとはいえ、仮にも兵士なのに。
僕が上司であるからか、面と向かって文句は言ってこないようですが、ティアは明らかに不満を顔に浮かべています。

「ルークの言葉が事実であるのなら、あなたは犯罪者です」
「…それはっ」
「なんですか? 犯罪行為を正当化する事情があなたにあるとでも? いいですか、あなたにどんな事情があるにせよ、事実だけを客観的に見れば、あなたが仕出かしたことは犯罪行為です。理解したなら、その軍服脱いでサッサと逮捕されなさい、似非軍人」

偉そうなことを口にしている僕自身も冤罪行為など犯罪を犯してる犯罪者なんですが、それは秘密です。
僕が笑顔で毒づくとティアの表情が引きつりました。

「アニス、ティアが着ている軍服剥ぎ取ってください」
「はい!」

いい返事ですね。アニスは腕まくりをして、呆然としているティアの軍服を剥ぎ取りにかかりました。
公開ストリップショーの開催です。さすがに下着を剥ぎ取るような真似は致しませんが、全裸よりも下手したらエロいかも知れませんね。二歳児の僕には刺激が大きいし、ティアのストリップショーにも興味がなかったので眼を逸らしました。
見る見るうちに剥ぎ取られていく衣服にようやく我に返ったティアが抵抗し始めたらしく、ぎゃあぎゃあうるさいです。頭の回転だけでなく、危機察知能力も鈍いようですね、ティアは。

「きゃあ! ちょっと、何するの!?」
「何ってアンタの服剥ぎ取ってんの! も〜、本物のオラクル兵でもないくせに、軍服着て犯罪犯して、ローレライ教団に迷惑かけないでよね!」
「ど、どういうこと!?」

本物のオラクル兵でもないくせに、というアニスの言葉が引っかかったらしく問いかけてます。
アニスが窺うように見てきたので僕は相槌をひとつ打ちました。暴露しても構いませんよ。べつに隠しておいたわけでもないですしね。
それに僕、ティアに構ってるより、ルークと遊んでいたいんですよ。僕こう見えても2歳だし、子供らしく時には遊びたいんです。というわけでルーク、子供が見るにはまだ早いストリップショーを見て顔を真っ赤にしていないで、僕と遊んでください。

「アンタは本当はオラクル兵なんかじゃないってこと! その軍服は本物だけど、ティア・グランツの軍籍ってローレライ教団に無いんだよ」
「う、うそよ!」
「こんな得にならないうそなんかつくわけないじゃん」
「っ私は本当にローレライ教団に所属している軍人よ。軍籍が無いなんて、そんな馬鹿なことあるわけないでしょう。それにモース様は私をお認めになってくれているのよ!」
「だから何? いい? ローレライ教団の頂点に立っている人はイオン様なの! アンタはモース様のお気に入りだけど、イオン様はアンタが軍人であることを認めていないし、そんなアンタの軍籍があるわけないでしょ! モース様旗本の第三情報部はね、教団内ではモース様の愛人所属部隊って噂なんだから」
「う、うそ…うそだわ、そんなの!」
「大体アンタ、軍学校卒業してないじゃん。っていうか、アンタ、リグレット副官直々に師事受けてたんでしょ? 自分がヴァン総長の妹であるからっていうことを理由に。軍学校にも行かずに個人授業を受けただけで、ろくな訓練もしていないのに、それで一端の軍人気取りなんだから良い身分だよね」
「私はっ」
「あ〜、はいはい、アンタの話は後で聞いてあげるから。サッサとその軍服脱いで、おとなしく捕まってよ。イオン様たち、お待たせしちゃうじゃない」
「アニス、これ、です」
「あ、服。ありがとう、アリエッタ! はい、アンタは軍服脱いだらこれ着てね。ちょっとアンタには小さいかも知れないけど」

そうそう、さっきエンゲーブを見て回ったときに、たまたま食料庫の近くでこそこそやっていた青いチーグルを見つけたんです。ほら、これです、これ。
頭がやたらと重そうなうえに鳴き声が非常にうざったいこの生物、女子供には人気なんですよ。シュザンヌ様のお土産にいかがですか? 火も吐けるようなので、あとでこのチーグルに吐かせた火で焼き芋でもしませんか?
僕が手渡したチーグルをルークは興味深そうに眺めたあと、ぶんぶんとぬいぐるみのように振り回し始めました。豪快な遊び方ですね。

「みゅみゅみゅ〜!」
「うわ、うっぜー鳴き声」
「本当ですね。こう…癇に障る鬱陶しい声です」
「みゅう…」

あ、チーグルが目を回したようです。ルークは片手で持ったまま「おい、起きろ」と気絶したチーグルに鞭打ってます。
素敵な性格ですね、さすが僕の親友!

「…むかつく、です」
「…ホント、むかつくよね〜。なんで3歳しか違わないのに、こんなに…」
「……」
「ちょ、アリエッタ泣かないでよ! どうして泣いてんの!? …あ、そう言えばアリエッタって…」
「アリエッタ、幼児体型じゃないもん!」
「…イオン様〜、アリエッタ慰めてくださいよぉ」

まったくなんだって言うんでしょう。せっかくルークと一緒にチーグルをいじくり回して遊んでいたっていうのに。
アニスに話しかけられてしぶしぶ僕が視線を向けると、そこにはアリエッタと思しき服を着ているティアがいました。…それはいくらなんでも無理があります。
巨乳が収まりきってなくて、胸の形とかブラジャーの線とかハッキリ見えているんですけど…。アリエッタが着れば普通のワンピースのはずが、ティアが着るとパンツを隠す程度が精一杯らしく、太股がむっちりしている上にパンツの紐が…ああ目に毒です。健全な男の子の僕になんてものを見せるんですか。慌ててルークの両目を塞いでしまったじゃないですか。
これはティアと同年齢のアリエッタは悔しい結果なんでしょうね。

「大丈夫です、アリエッタ。あなたはまだ二次性徴がきていないだけで、これから成長する希望はあります」
「ほんと、ですか? イオン様」
「本当です。あなたはライガクイーンに育てられてた頃、肉類しか食していないでしょう。今も肉を好んで食べて、それ以外の物はフルーツしか食べないと聞いてますよ。偏食を直して規則正しい生活を心がければ女性ホルモンが働いて、自然に体は成長してゆきます」

適当なことを自信満々に言うと、それらしく聞こえるって言いますよね。
僕の話を素直に信じたアリエッタはぐすぐす鼻を鳴らしながら、袖で涙を拭いました。適当なことを言った僕ですが、アリエッタがティアに嫉妬する必要はないと思ってます。体の成長に個人差が出るのは当然のことです。
それにティアはすでに完成された肉体美を持ちますが、アリエッタの成長途中にある体も大変魅力的だと思いますよ。
だってほら、揉んで大きくさせる楽しみがあるじゃないですか。胸なんて揉めば大きくなると言いますし、将来アリエッタに恋人ができたらいくらでも揉んでもらえばいいだけの話ではありませんか。
胸の大きさでふる男がいるなら、そんな男アリエッタのほうからふってしまえばいい。
大体、異性の体のどこそこに不満を抱える者は、自分も相手から同じような不満を大抵は抱えられているものですよ。
…だからなんで僕は2歳児なのに、こんなことを…。

「そうそう、アニス」
「はい?」
「あなたは当分導師守護役見習いのままですね。ついでに一ヶ月の減棒です」
「ええええええ!?」
「ええええええじゃないですよ、まったく。何ぺらぺらと第三情報部がモースの愛人所属部隊だと言っているんですか(ダアトでは公認の事実ですが)ローレライ教団は各国のお布施で運営をしているのに、世間体が悪いでしょう。お布施が減ったらどうしてくれるんですか?」
「申し訳ございませんでした!」

見事な土下座ですね。アニスはいったいどこでそういうのを覚えてくるんですか?
お布施が減ったらヴァンとモースとついでにリグレットたちが脱税してきた数千万ガルドを徴収して、当面の運営費に当てることにしますから、まあ何とかなりますけど、善意でくれると言っていたタダ金がなくなるのは勿体無いですよね。
まあ、いろいろと僕に貸しがある、優しい方がいるので、快く、寄付をしてくれるとは思いますけれど。

「…イオン様」
「あれ、ジェイドいたんですか?」
「!?」

そう言えば居たんですよね。
空気のような存在感だったので、すっかりと忘れてました。
そんなショックを受けた顔しないでください。鬱陶しいです、ものすごく。

「あ、そうそう、ジェイド。ティアを拘束してタルタロスの牢屋に入れておいてください。その際に口を縄で塞いでおいてくださいね。彼女は譜歌使いですから」
「え、あ、はい…」
「ルーク、これから僕たちキムラスカに行くんですけど、一緒に行きませんか?」
「え? いいのか」
「もちろん」
「ちょっと待ってください、イオン様。我々には重大な役目があるんですよ。私にもちゃんと話を「文句があるなら残念ですけど、ここでお別れですね」脅迫ですか!?」

脅迫なんてしてるつもりはありません。僕にとって和平仲介役の任務よりもルークのほうが圧倒的に比重が傾いているだけのことです。
もともと僕が和平仲介役を引き受けた理由もルークに会いに行くついで感覚です。ルークと出会えた今、ルークと離れてまで和平仲介役をやる理由が見出せないんですよ、残念ながら。世界平和よりも、僕は親友が大事です。

ジェイドは苦渋に歪んだ表情をして、深いため息を吐きました。ジェイド、そんなに重たいため息を吐くと禿げますよ。いえ、むしろ是非とも禿げてください。僕は禿げたジェイドが見てみたいです。

「…わかりましたよ…」
「良かったですね、ルーク。マルクトには観光名所がいくつかあるので、観光してからキムラスカに行きましょうね」
「ああ、いいな!」
「タルタロスを足に使うおつもりですか…」

「そんな暇は無いんですけどねぇ」と呟くジェイドに僕は「和平親書をうっかりと貰って来ることを忘れた人の台詞だと思えませんね」と言っておきました。
何たそがれているんですか、ジェイド。似合いませんよ。
大体、アクゼリュスのことを気にしているなら大丈夫ですよ。和平というのは建前でしかありません。アクゼリュス住民救助も建前の一つです。
すでにキムラスカとマルクトは和平を結んでいるも同然、僕が和平仲介役をやることによって、両国が和平を結んだということを世界中に公布するのが狙いなんですよ。

今頃ファブレ公爵がマルクトに貸しを作る良いチャンスだとインゴベルト陛下を唆して、キムラスカ側の街道沿いの通行許可をマルクト側に発行しているはずです。ピオニー陛下はそれを受けて、住民救助のための特殊部隊を組んで派遣していることでしょう。
さっきジェイドが漆黒の翼を深追いさせて、ローテルロー橋をまんまと爆破させてましたから、救助には難航すると思いますけどね。あそこはマルクトとキムラスカを繋ぐ重要な橋ですし、あの橋があるのと無いのでは、救助にかかる時間に大きな差が生まれます。ジェイドと漆黒の翼の所為で、救助が間に合わずに死亡する住民も出てくるかも知れません。
今回の一件でマルクトは漆黒の翼を国際犯罪者として大きく指名手配することでしょう。ジェイド自身もグランコクマに戻ったら覚悟しておいたほうが良いでしょう。本人自身の進退が危険なことにまったく無自覚のようですけど。馬鹿ですよね、ジェイドって。

「そうと決まればジェイド、早速ティア牢屋に入れて行きましょう。まずはチーグルの森に寄ってくださいね。あそこも観光名所のひとつですし、食料泥棒の一件でチーグルをライガに食わせないといけないので」
「みゅ!?」

ルークの手の中でチーグルの子供が泣いた。ルークが玩具として貴方をどうやら気に入っているので、貴方は食わせませんよ。僕は親友に優しい人間です。

「イオン様、一応チーグルは教団の聖獣ですよぅ」
「問題ありません。僕が今、問題ないと決めました」

さ、パパッと食料泥棒事件を解決して、キムラスカに行ってナタリア殿下に失脚していただきましょうか。




END.

2011.09.29
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