一万人のレプリカと共に障気中和をしようとしているアッシュを止める為に、ルーク達はレムの塔へやって来た。
 ガイの姉マリィベルのレプリカが、残りの仲間の為に犠牲になると語った。

「お前達も、我等の死を求めているのではないのか?」

 そこへ、アッシュが現れた。

「オレがやると言っただろう! 何故此処に来た!?」
「レプリカ達を助ける為だ!」

 レオンが怒鳴り返す。

「何だと?! こいつ等を犠牲にせずに、どう障気を中和するって言うんだ!?」
「エルドラントを使う」

 アッシュは、愕然とした。

「エ、エルドラントだと?! しかし、オレには時間が…!」

 アッシュは思い付いていなかった事を、そう言って誤魔化す。

「お前一人の都合で、彼等を殺すんじゃねぇよ!」

 アッシュは言い返せずに、黙り込んだ。

「全く、どいつもこいつも、視野が狭くて嫌になるぜ! 何処かの『死霊使い』様もレプリカを犠牲にする案しか思い付かないとか! 他の研究者に相談する事も思い付かないとか!」

 ダアトで散々馬鹿にされたジェイドは、今はベルケンドで他の研究者と共に、ルークやアッシュの負担を減らす方法を考えている。

「しかし、時間をかければ犠牲者が増えるだろう!」

 アッシュがそう怒鳴ると、レオンはアッシュを白い目で見た。

「タルタロスを襲撃して、アクゼリュスでの障気触害犠牲者を増やす事に加担した人間が、随分立派な事を言うじゃないか」
「…オ、オレは、イオンを取り戻す為と聞いていたんだ!」
「だから、何だよ? 元から立派だったとでも? ルークのフォンスロットを開く為だけに、アリエッタに、軍港襲撃を命じてキムラスカ兵多数殺害させた国家反逆者が!」
「オレは、反逆者なんかじゃ…! それに、ヴァンを探らせる為に必要な事だったんだぞ! レプリカがヴァンを妄信した所為で、無駄に終わったがな!」
「お前がルークを操って人殺しさせようとしたからだろ、ボケ! レプリカに自我がある事も判らない、馬鹿が! ルークが劣化レプリカだとか言ってたが、お前は劣化本人だ! 10歳の頃の方が頭良かったんじゃねーの?!」

 ジェイドに大爆発の事を白状させたレオンは、コーラル城でフォンスロットを開いた所為でその時期が早まったのではないかと、アッシュに怒りを抱いていた。
 一応、前回捕えたディスト共々、大爆発を防ぐ方法も考えさせてはいるが。

「大体、アクゼリュス消滅は、お前がわざわざ、アクゼリュス消滅を阻止出来なかった時の為に巻き込もうとティアを連れて来るなんて余計な事しなかったら、阻止出来たかもしれないんだぞ! それとも、あれか?! 『真っ直ぐ駆け着けても、どうせヴァンの方が強いから止められないし・万が一自分が消滅させられるような事になっても嫌だから、ヴァンの妹を巻き込んでやる為に部下から奪って時間稼ぎするか』って事だったのか?!」
「そ、そんなつもりじゃ…! レプリカがオレの言う事を聞いていたら」
「だから、諦めて時間稼ぎしたんだろう!? ルークが消滅させられる間に駆け付けて、自分が消滅させられたら嫌だから!」
「違う!」
「ルークがあの時点でお前の言う事を聞く筈無いんだよ! タルタロス襲撃して・自分を殺そうとして・アリエッタに自国の軍港を襲撃させて・人質取って・イオンを誘拐して・自分を操って人殺しさせようとした奴なんかの言う事信じる馬鹿がいたら、お目にかかりたいわ! ああ、既に会ってたっけ! 何処かのユリアの子孫様に! あっさり信じて間違いないとか言っておきながら、『迂闊に信用出来ない』とか言ってたっけなぁ!」

 そう言った時にぼろくそに言われたティアは、しつこいと言わんばかりにレオンを睨む。

「そのつもりは無かったとしても・アクゼリュスがどういう状況か知らなかったとしても・障気触害と言う病気を知らなかったとしても、お前は障気触害の犠牲者を増やす事に加担したんだから、『悪いに決まっている』よなぁ? 自分でそう言ったもんなぁ!?」
「レオン、それぐらいにして下さいませ。貴方は言い過ぎですわ」

 ナタリアが止めると、レオンは不満気に話題を戻した。

「兎に角、障気中和は、エルドラントを使って行う。その方法についても、キムラスカとマルクトと教団が協力して研究している」
「しかし!」
「お前が勝手に、レプリカ達を犠牲にして超振動を使って失敗したら、どう責任を取るつもりだ?! ここは、かつて『鉱山の街』だった。秘預言には、『ローレライの力を継ぐ若者』が『力を災い』とすると詠まれているんだぞ!」
「す、既に、アクゼリュスが消滅しているだろうが!」
「でも、『ローレライの力を継ぐ若者』が『街と一緒に消滅』していないじゃないか!」

 アッシュは怯み、漸く、障気中和を断念した。



「我等は、どうなる?」

 マリィベルのレプリカが、口を開いた。

「偏見は、そう簡単には無くならない。ここは、まだ何処の領地でもないし、ナタリアの養父である国王と、ジェイドの親友の皇帝に頼んで、保護区か自治区にして貰おう」
「そうですわね。出来る限りの支援を約束いたしますわ」
「まあ、でも、国民達は、自分達の税金をレプリカに使う事を不満に思うだろうし、将来返して貰うって事にしたらどうだ? 無期限で」
「…それでも、不満に思う者はいますわよね」
「仕方ないさ。何なら、グランツ家の財産没収しても良いんじゃないか?」
「どうして、そうなるんだ!」

 ガイが抗議の声を上げる。

「彼等を生み出したのは、ヴァン・グランツだから。それとも、世が世ならば、ヴァンデスデルカが仕えていたガルディオス伯爵が払うか?」
「ヴァンの罪はヴァンの責任だろう」
「ファブレ公爵の罪でルークやアッシュの命を狙っていたのは、何処の伯爵様でしたかね?!」

 ガイは言葉に詰まった。

「まあ、そう言う訳だけど、反対派も多いだろうから、あんまり期待せずに待っていてくれ」

 レオンが、マリィベルのレプリカにそう言う。

「あ、そうだ。下に少ないけれど食料を持って来たんだ。取りに来てくれないか?」



 下に降りると、ルーク達は、アルビオールからいくつかの木箱を降ろした。

「後、これ、釣竿と魚の餌。これは、釣りの手引書。フォニック語は読めるんだよな?」
「ああ。問題無い」
「こっちは農具と種と肥料。で、手引書」
「後、これ、魔物と戦う為の武器と指南書」
「で、こっちが、譜術の教本」

 ルークとアニスも、渡しながら説明する。

「少なくて申し訳ありませんが、毛布もありますわ」
「調理器具とレシピ本です」

 ナタリアとノエルもそう言いながら、渡した。

「戦い方を教えるべきじゃないかしら? 戦う覚悟も無いでしょうし」

 ティアがそう言うと、レオンが透かさずティアを貶した。

「お前よりは有りそうに見えるけどな」

 ティアは、無言でレオンを睨む。

「此処にいるレプリカは、皆、自力でここまで辿り着いたんだ。治癒術士もいないのに、ほぼ全員無傷だし、戦い方も刷り込まれているんだろう。殆ど、被験者より強いんじゃないか?」
「劣化していないって事か?」

 ルークがレオンに尋ねた。

「ああ。ルークだって、今年まで実戦経験が無かったのに、アッシュと殆ど変らないだろう?」
「それは、オレのレプリカだからだろう!」
「レプリカはそんな不思議生物じゃねーよ! 被験者が何処にいようが、自動で能力コピーするとでも思ってんのか!? お前と剣の実力が同じぐらいでもルークが優れていないと言うなら、お前が訓練や実戦を殆どしていないって事だな! あ、そっかー。特務師団長って、名前だけだったんだな。そういや、誘拐被害者だものな。超振動が必要なだけだし、仲間扱いなんてされて無かったか。だから、勉強もさせて貰えなかったんだな。道理で…」

 ヴァンは自分の超振動だけを必要としていると解っていても、そう指摘されてアッシュは傷付いた。





「さて、アッシュ。自分にはもう神童と呼ばれる頭は無いって、自覚は出来たか? また自分勝手な考えで人殺しされても迷惑なんで、オレ達と行動を共にして貰う」
「もうしない!」
「『一度失った信用は、簡単には取り戻せない』のさ。ま、精々、ナタリアに見限られないよう、頑張りな」




掲載日:2013.10.10

レムの塔の屋上は、一万人も乗れるほど広いのだろうか?
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