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問答無用の魔法 番外編
俺のもの!
「汐音、こっちだよー★」
明るい笑顔を振り返りながら椿が汐音の手を引っ張る。
前日『デートしようぜ★』といきなり提案してきた椿に、汐音は行き先も分からずについてきていた。
「椿さん、ここって…?」
「ん?いーからいーから!」
引っ張られたまま入った先で、椿が手際よく受付を済ませる。
それから程なくして汐音は名前を呼ばれた。
個室に入ると、精密機械がたくさん並んでいる。
「…椿さん、ここは?」
「そうだな、もー言ってもいいか。今日は汐音のイヤモニを作りに来たんだよー★俺からのプレゼント。」
「え!?」
「せっかく同じイベントに参加するんだし!しかも、汐音にとっちゃ復帰1発目なんだし!!」
耳型とるからちょっとくすぐったいかもよー、と屈託なく笑う椿に汐音の頭はつていけない。
「イヤモニって…」
「ん?知らねー?」
「いえ、知っていますけど…」
イヤモニはイン・イヤー・モニターの略。
アーティストや歌手など、大きい場所で音楽のパフォーマンスをする時によく使われている。
「だって今回、汐音も歌うんだろー?だったら必須じゃん。」
「でも…」
「いーからいーから。ココ、俺と梓も作ったとこなんだ。3人でおそろい★」
押し出すようにして汐音を椅子に座らせて、よろしくお願いしまーすと担当者に挨拶をする。
数十分で耳型を取り終わった汐音達はその場を出ると、椿の運転する車に乗った。
「帰ったら色とかデザインとか決めよーな。けっこー種類があるんだぜ★」
隣に汐音を乗せた椿が、いつもよりスピードを抑えながら運転をする。
「…あの、椿さん。イヤモニって結構なお値段しますよね?プレゼントってそんなに簡単に…」
「あー…まー確かにイイ値段はするけど。俺がプレゼントしたいの★だって汐音と一緒にイベントに出られるんだぜ?記念に贈っちゃダメ?」
「ダメって…」
「じゃあ、ずっと使い続けてよ。そしたら贈ったカイあるし。俺が贈ったのが汐音の耳の中にあるんだぞ。萌えねー?」
「…萌えません。」
「なんだよ、冷てーなー。汐音がイヤモニしてる最中に俺のこと思い出してくれてればいいよ。俺のイイ声、耳元で聞かせてやるぜ★」
フッと汐音の耳に息を吹きかければ、ビクリと細い肩が揺れる。
「っ…!運転中ですっ!!」
「だいじょーぶだって。信号待ちだもん。」
「いいからっ!運転に集中してくださいっ!!」
「えー、むりー!だって汐音が隣に座ってるんだぜ?頭ん中、エロいことだらけ★」
「椿さんっ!!」
ちゅ、と頬に唇を寄せた椿の顔をグイと正面に向け直す。
力任せに押した汐音の頬は赤く染まっていた。
ケラケラと笑う椿に気づかれないように、汐音は窓の外に顔ごと視線を流す。
けれど椿にはバレてしまっているようだ。
かーいい★と頭をグリグリと撫でられてしまった。
「俺的には、こっちの服も超にあってると思うんだけどー。でもなー、これも捨てがてーしなー。うーん、迷うなー…」
「…どっちも丈が短いと思います。」
「そんなことねーって!てか、むしろもっと短くても…」
「ダメですっ!!」
「ちぇーっ!じゃー…コレ!コレは!?」
椿が選んだのはガーリーなレースをあしらったワンピース。
自分でファッションセンスがあると豪語しているだけあって、汐音に良く似合いそうだった。
「これにシャツを羽織ってー…あ、ボレロでもかーいいかなー。靴はー…」
「椿さんっ!私そんなに…」
「えー!?聞こえなーい!俺に任せろって、超かーいくしてやるぜ★」
「そうじゃなくて…っ!」
「ダーメ!今日は俺が汐音をコーディネートするの★んでもって、汐音はコレ着てイベント出てね。全身俺色の汐音が同じ舞台に…滾るー!!」
未会計の品物をぎゅっと握りしめて悶える椿に、汐音はかける言葉がない。
その日はずっと椿が主導権を握り、来たる日のために汐音を飾り立てた。
「はー、買った買った!」
両手にぶら下げた荷物を無造作に床に下ろし、椿がクッションにボフンと座り込む。
汐音はミニキッチンでお茶を用意すると、グルグルと肩を回している椿のそばに置いた。
「ありがとうございます、椿さん。」
「どーいたしまして。それより約束だかんな、ちゃんとイベントで着てね。」
「はい。…ブレスレットもつけます。」
「マジでー!?」
汐音の返事に椿は目を輝かせて抱きつく。
「あんがと、汐音。俺、超うれしーっ!」
「私の方こそありがとうございます。」
「ホント、かーいいんだから。」
ぎゅーぎゅーと締めつけを強くしながら椿は汐音の耳元に顔を近づける。
「…汐音、緊張してるだろ?」
「え?」
「久し振りな声優の仕事に。」
「あ…」
「だから俺が守ってあげる★イベント中、俺をずっと意識しててよ。服も、アクセサリーも、イヤモニも、全部俺。俺がすぐ隣にいるからな。」
「…椿さん…」
「そんでもって、俺には汐音の歌をちょーだい。汐音が初めて参加するイベントで歌う生歌。」
「…対価に見合いませんよ?」
「そんなことねーって。だって俺、小さい頃からファンなんだぜ?しかもすっげー好きな歌。いやらしーかもしれないけど、今日のプレゼントだけじゃ足りねーくらい。もちろん、純粋にプレゼントしたかっただけだから気にしないでねー。」
にっかりと笑う椿に胸がキュンとなる。
汐音はキュと彼の背中に回した手に力を込めた。
驚いた椿だったが、丸くした目を柔らかくしならせる。
「かーいいね、汐音。」
「…ありがとうございます、椿さん。」
「んーん。あ、でも…」
「でも?」
「対価に見合わねーって言うんだったら、請求しよーかな?俺にしかできない請求★」
「…何ですか、それ?」
「分かんね?…汐音だよ。今すぐ汐音をもらってもいいよね?」
答えは聞かないけど。
どこかで聞いたようなセリフを言う椿の顔が悪戯っぽく笑った。
2015.12.17. UP
50000HITS記念リク。
聖様より『ブラザーコンフリクト椿長編、椿との甘ほのぼのIF未来』です。
IFということなので、夢主ちゃんが声優界に戻ることにしてみました。
IFってアレですよね!?
好き 勝手 に想像していいってことで…
聖様、リクエストをどうもありがとうございました。
ご要望に合った話になっているといいのですが。
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夢幻泡沫