プロローグ
「なーんか面白い事しようやぁー!」
跡部財閥が主催する中学テニス部の合同合宿4日目。
財閥所有の合宿所には最新設備が揃い、室内コートに食堂、個人の部屋まで用意されていて快適な合宿生活が送られる。
だが、練習はすべて室内。必要なものも合宿所に設けられた売店で全て購入可能。息抜きのためのゲームルームやレンタルショップ並みのDVDコーナーも完備。部員の安全を考慮し、合宿所の外に出ないよう言い渡されている。
予定では10日間の予定の合宿は、まだ半分も過ぎていない。だが面白い事が大好きな四天宝寺の面々は、早々に合宿に飽きてきてしまったようだ。
跡部に内緒でこっそり肝試しをしようとしたら、当然の様に設置された監視カメラであっさりと見つかり跡部に絞られてしまったのだ。
痺れを切らした白石が、声を大にして不満を叫びだしたのだった。
「何でもあって快適やけど面白みに欠けるねーん!バラエティ感が欲しいわ!笑いが!ハプニングが!」
「面白みねぇ…合宿に必要とは思えねぇがな」
「にいちゃんなんもわかっとらんなぁ!関西人に笑いは付きものなんやで!?一日5回は笑わんと調子くるうわ」
呆れたように四天宝寺の面々を見つめる跡部に、金太郎が熱弁する。その言葉に跡部が考えるような素振りを見せた。
「笑い、ね…で?お前らはどんな笑いが御所望なんだ?」
とりあえず言ってみろ、 と投げやりな跡部に、四天宝寺のメンバーがわいわいと話し始める。
「此処なら何でも出来そうやし、テーマパークとかにあるけったいなお化け屋敷みたいなん作ってもらって一人ずつ放り込んだらええんちゃう?」
「それじゃ後半のメンバーにばれてしまうやろ。それに怖がってる顔見続けたって結局飽きてまうわ」
「そうやなぁ、うちは〜、折角なら胸がキュンキュンするようなハプニングがええなぁ〜」
小春が乙女のような顔でそう言うと、ユウジが さっすがやで小春ぅ! とノッてきた。
「キュンキュンなぁ…此処に居るメンバーはオトモダチ以上恋人未満な奴らばっかりに見えるしなぁ…せや!」
今回の合宿には、各学校からマネージャーや女子生徒をサポーターとして召集している。参加しているテニス部員には、その女子達の中に想い人がいる者も少なくないように見えた。それを思い出した白石が、何かを思いついたのか、キラキラした目で話し出した。
「折角一つ屋根の下に好きな子が居るんや、背中押したったらええんや!」
「あぁ?どういう意味だ?」
何を言っているのかいまいち分からない跡部に、ニンマリと笑った白石が続ける。
「せやから、何処でもええしちっさくてもええから密室になる部屋準備してな、そこにお互い好きなんやろなーってカップルを呼び出すやろ。二人で入った瞬間鍵かけて、こっちが出したお題をクリアせんと扉が開かんようにするんや!」
「お題って、何さすつもりなんです?」
「なんでもええ、ハグでもキスでも、そのカップルが無事にくっ付くようなお題にしたったらええねん!」
ん〜、エクスタシ〜!
自分の名案に大満足そうな白石。小春も白石の提案に大興奮し、他のメンバーも バラエティ番組みたいやん! とおおむね乗り気のようだ。
「そんなん言うて、地味に知ってる奴の告白シーンなんてリアルすぎるやろ…それに跡部がけったいな案に賛同するわけあらへんし…」
謙也が冷静に突っこみを入れる。正直な話、自分がその部屋に入れられた事を想像して寒気が立ったからなのだが、流石に跡部が良いと言うとは思えないし、このままお流れになるだろうと思っていた。
「面白そうじゃねーの」
…5秒前までは。
そこからは早かった。難波のスピードスターも怯えて逃げるほどに。
練習棟の隅にあった備品室を改造し、カメラ完備、お題を表示するモニター設置、ターゲット2名が入室したら自動的にロックがかかるシステムを設定し、桃色乙女金色小春のアドバイスの元、『キスを10回しないと出られない部屋』が完成したのだ。
「…なんでやねん」
謙也にはもう、突っこむ力は残っていなかった。
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