プロローグ


会社から帰宅し、飲み物を片手にテレビを眺めていると流れてきた着信音。
何の気なしに取った電話の相手はお母さんだった。


「もしもし?どうかしたの?」


最近、実家に帰れてないこともあり何かあったのかと冷や冷やしたが電話口でケラケラ笑いながら『アンタがちゃんと生きてるかの確認よ』と話す声はいつもと変わらないお母さんの声だった


「大丈夫だよー、生きてるよ。最近帰れなくてごめんね」
『風邪とか引いてない?お父さんも心配してたわよ』
「最近仕事忙しくて……大丈夫だよ」


お母さんは最近あった近所での出来事などを嬉しそうに話してくれた。
それを聞きながら懐かしむように相槌を打っていると
近所の幼馴染みが結婚したとの話を話し出した。


『近所の田中さんとこのハナちゃん結婚したそうよ』
「えっ、ホントに?ご祝儀とか渡した方いいかな」
『今度連絡してみなさい。それよりも、あんたの方はどうなのよ』
「な、何が…?」


突然の方向転換にスマートフォンを握る手に力が入る。
次の言葉に予想はついている。
この年齢になって言われたくない言葉上位に食い込んでいるあの言葉だ。



『いい歳なんだから、そろそろそういう相手はいないの?』



聞こえてきた言葉が胸に刺さり、言葉が出てこない。


「いや、あの、」
『会社の人とかご近所さんとかいい人いたりしないの?』
「えーっと、」


最近の若い人って結構グイグイくる人多いとおもうんだけどねぇ、と話すお母さんの声が遠くに聞こえる。
この歳になって、彼氏もいません。そういう関係すらここ何年もないです。


『もしそういうお相手が居ないなら、お父さんの知り合いの息子さんとかとお見合いとかいうことも』
「だ、大丈夫!居るから!今、結婚考えている彼氏と超ラブラブなの!!」


”お見合い”というワードを聞いて慌てて口に出した苦し紛れの言葉。
お母さん、ごめんなさい、彼氏なんていません。結婚なんて夢の夢です。


『・・・そうなの?』
「うん、そう、今度お互いの親に挨拶しに行きたいねーって話していたの」


ごめんなさい、嘘です。
話す相手もいません。
この際、嘘を突き通そうと決意した。
次の言葉を聞くまではそう思っていた。


『あら、それなら、今度の週末彼氏を連れて帰ってきなさいよ』



詰んだ。
こうして私は今週末までに彼氏を作るという人生最大の難関に挑むことになった。

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