揚げ立てをあなたに(ピー)
油に潜らせていたソレを取り出すときつね色に染まり湯気が出ていた。うん、我ながらうまく揚げれた。


「美味しそうだな」
「ひっ!?」


隣から声が聞こえ、驚いて隣を見ると困ったように笑って「悪い、驚かすつもりは無かった」と話すピーの姿。

チラリと見えた後ろのカーテンが揺れてるという事はまた窓から入ってきたのだろう。

「今日は、食べてくの?」


いつものように話す。


「いや、今日は…」


汚れた手袋を外して冷たい手が私の頬に触れた。


「なまえの顔が見たかった」


そう柔らかく笑う。
その冷たい手にそっと自分の手を重ねてつられて笑う。

あ、そうだ。


「ちょっと待って」


戸棚から保存容器を取り出して、多めに作った唐揚げを詰める。


「少ないけどみんなで食べて、冷めても食べれるから」


蓋を閉めて、ボーッと見ていたピーに渡す。


「ありがとう」


受け取った彼は大切そうに背負っていた鞄に入れて「悪い、そろそろ…」と入ってきた窓の方に足を進める。


「ピー」


声をかけて振り返った彼の口に揚げたての唐揚げを1つ放り込む。



「あっふ」


口に放り込まれた彼は、最初は眉をひそめていたが、モグモグと動かしていくと徐々に眉が下がっていく。

ごくりっと喉を動かして飲み込んだ彼は


「うん、うまい」


子供のように笑って見せる。

テカテカと油で光る唇をハンカチで拭いてあげると「オレは、子供じゃない」と嫌がる彼に笑いが零れた。


(2017.12.17)
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