太陽におはよう(ユウ)
朝食の時間、無名街のみんなが炊き出し場所に集まる
見渡しても彼の姿が見えず、近くに居たタケシに声をかける
「ねぇ、ユウは?」
「あぁ、まだ見てないな……」
同じく周りを見渡して「まったく、あいつは…」と言って溜息をつくタケシ。
それからこちらを向き合って困ったように話す。
「悪いけど、起こして来てくれないか?」
「わかった。あたしの分取っておいて」
タケシにご飯の確保をお願いして、ユウがいつも寝床として使っている場所へ向かった。
その場所に着くと、案の定彼はお腹を出して大の字で寝ていた。
「ユウ、ご飯だよ」
声をかけるが起きる気配は無さそう。
近付き、出ているお腹を隠してあげるとムニャムニャと口を動かす。
寝ながら何か食べてるのだろうか。
「ユウ、起きて」
今度は肩に手をかけ軽く揺さぶる。
すると、その腕が掴まれ体の重心が前へ傾く。
身体に小さな衝撃、
視界に広がる赤い布、
日向ぼっこした時のような太陽の匂い、
身体を包み込む温かさ。
何が起きたのか分からず固まる。
頭の上でスースーと静かな寝息と目の前の布が動いたことで抱き締められたのを理解した。
「ちょっと、ユウ!!」
理解した瞬間、恥ずかしくなって目の前のユウの身体を叩く。
すると背中にまわる腕に更に力が込められてしまった。
「あったけぇ……」と頭の上から小さく聞こえ、すぐにまた寝息が聞こえ始めた。
二度寝コース
そんなことをしたら、自分もユウもタケシに怒鳴られるに決まっている。
タケシ怒ったら怖いもの・・・
何とか片手を動かし、ユウの脇腹を抓りあげる
「いってぇ!!!」
頭の上から声が聞こえ背中に回った腕の力が緩まる。
それから声の主と目が合ったので『おはよ』と声をかけると彼は今の状況を分かっておらず、目を丸くしていた。
「おはよ……。え?お前いつからいたの?夜?何、襲いに来たの?」
寝起きなのに次から次へと言葉が出てくる彼に呆れながら起こしに来たことを説明すると『なーんだ』とあっけらかんとした返事が返ってきた。
しかし、状況は変わらない。
「…ねぇ、そろそろ離して」
「え?なんで?」
「なんでって…」
「いいじゃん、このまま二度寝しよーぜ」
笑いながらまた抱き寄せられそうになり、拒否するように胸の前に腕を突きつける
小さな攻防が始まる
抱き寄せられる腕の力が徐々に強くなり、付きつけている腕にも力が入る
すると、自分の身体の下の方からと彼の方から小さく『ぐぅ〜』と唸るような音が聞こえた。
お互い目を合わせる。
「・・・」
「・・・」
「・・・くくくっ、あっははは」
「・・・ぷっ、ふふふ」
数秒後、声をあげて笑う彼に釣られて口に手を当てて笑う。
ひとしきり笑った後に彼は、私の背中に回した腕を離し大の字に寝っころがって天井を見上げる。
「あー…、腹減った」
「ご飯、食べよ」
「よしっ、行くか」
立ち上がり、手を差し出す彼
その手を取って私も立ち上がって、みんなが待っている場所へ向かった。
『今日の朝飯は何かなぁ』と口にする彼は太陽の光を浴びて眩しい笑顔をしていた。
(2017.10.12)
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