お米様抱っこ(加藤鷲)
――――達磨一家本拠点
「なまえ!!早くしな!!」
「はい!!すぐに行きます!!」
ココに勤めてからまだ数ヶ月。
日向会の構成員だった父、そのお情けと言う形で達磨一家の本拠地である賭場に置いてもらっている。
花魁の御姉様の後ろを荷物を両手いっぱいに抱きかかえて着いていく。
まだ賭場の表に出れるような立場じゃないため、こうやって荷物係をしている。
「なまえ、次は向こうにコレ持って行ってくれない?」
「わかりました!」
あっちからこっちへ御姉様たちの荷物を運ぶ毎日。
力もすばしっこさもつき、近道も分かるようになった。
荷物を抱えて走り出す。
そこの道を抜けて、角を曲がれば目的の場所はすぐだ。
「あっ」
足がもつれる。
身体が前に倒れる。
宙を舞う鮮やかな布たち。
あ、またお洗濯しなきゃ・・・。
宙を舞う布たちの隙間から眩しいくらい真っ赤な髪が見えた気がした。
迫る地面を見て、目をギュッと閉じた。
「・・・・あれ?」
覚悟していた衝撃が来ない。
恐る恐る目を開くと、本来は目の前にあったはずの地面が少し遠い場所にあった。
「おいおい、危ねぇだろ」
「す、すみません…」
頭の上方から声が聞こえてそちらを見上げると呆れたような顔をした加藤さんがそこに居た。
あ、さっきの赤い髪って加藤さんだったんだ、と納得した。
キョロキョロと周りを見渡すが、先程宙を舞っていた布たちの姿が見えない。
ヤバい、汚したならまだしも無くすだなんてもってのほかだ、追い出される。
そんな思考が頭を駆け巡っているとまた声をかけられる。
「探しもんはこれか?」
そう言ってもう腕に持っている鮮やかな布たちを見せてくる加藤さん。
ホッとしてお礼を言うために離れようと足に力を入れるが
「あ・・・れ・・・?」
「お前、大丈夫か?」
「す、すみません、足に力入んなくて・・・」
「はぁ?」
足に力が入らず、立つどころかよろめいて再び加藤さんにもたれるようになってしまう。
こんな時に、心底恥ずかしい。
しかも、助けてくれた方が達磨一家の実質No.2だ。
恐ろしいことこの上ない。
すると『仕方ねぇなぁ』と声が聞こえ、お腹に腕を回された。
「ひっ」
「しっかり掴まってろよぉ〜」
そう言って、米俵を担ぐようにして私を抱き上げた加藤さん。
視点が高くなり小さく悲鳴を漏らしてしまう。
言われた通りに振り落とされない様、彼の法被を掴む。
しかし、進行方向に背を向けている以上、前が見えない状態は怖いもの以外の何物でもない。
* * *
「ほらよ」
「すみません…。」
目的の場所に着くと肩から降ろされ、座らせられる。
道中、日向のお頭に「あ?おめぇら何やってんだ?」って声掛けられた時は羞恥心で死ぬかと思った。
その時に加藤さんが返した「荷物運びだ」って言うのもどうかと思う・・・。
持ってもらっていた布も返してもらい、頭を下げる。
「お手数おかけして、すみませんでした!」
「お前、ホントさっきからそればっかだな。」
「え、」
「『すみません』ばっか。他に言うことあんだろ?」
「あっ」
そこで思い出す感謝の言葉。
「ありがとう、ございます」
「どういたしまして」
そう言ってガハハッと大きい声で笑ってガシガシと頭を撫でられる。
「入ってまだみじけぇんだ、頑張れよ」
「っ!」
「じゃぁな、もう転ぶなよ〜〜」
そう言って手をひらひらと振って立ち去る彼の後姿を見送る。
見てもらえていた・・・。
入って日も浅く、人数も数多くいるというのに。
その言葉だけで舞い上がってしまう。
「頑張ろう」
自分に言い聞かせるように呟いて、荷物を持ち直して仕事に戻った。
その後、何故かお頭と会うたびに『加藤の米俵』と謎の呼び方をされるようになりました。
(2017.10.13)
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