「大丈夫かい?少しは落ち着いた?」
勢いよくぶつかってしまったにも関わらず、優しく抱き止めてくれたのは、偶然その場を通りかかったダヴィンチちゃんだった。人目を気にしてくれたのか、たまたま近くだった私の部屋まで送ってくれ、落ち着くまでそばに居てくれた。
「…大丈夫、です」
「そっかそっか、ならいいんだ。それで?何があったの、って無粋なこと聞くのもあれだけど、ロマニ関係のことかな?」
言い当てられてドクンっと大きく心臓が跳ねた感じがした。
「っ…」
「…当たってたみたいだ。で、何があったんだい?」
この人に隠し事は出来ないな、と頭の片隅で考えつつ、先程見た出来事を少しずつ話した。
「実は、」
「あっははは!ははっ……!」
「ちょ、笑いすぎ……!私は真剣に…!」
「あはは、分かってるよ、分かってるさ!でもあのロマニが廊下でキス?ないないないない、ぜーったいないね!」
…ここまで否定されているドクターが可哀想な気もするが、確かに少しのことで動揺するドクターにあんなことが出来るのだろうか。
「そう、かなあ」
ふと先程の出来事を思い出してみたが、どうしてもそうにしか見えなくてチクリと胸が痛む。ダヴィンチちゃんにそう言われてもなお痛むものは仕方がない。
「何なら聞いてみるかい?明日にでもさ!名前ちゃんが聞けないなら、このダヴィンチちゃんが一肌脱いであげようじゃないか!」
ダヴィンチちゃんは、今この状況がさぞかし楽しそうにペラペラと言葉を紡いでいく。
「聞くっていっても……もしその、か、か、彼女だったら……?」
「もしそうだったら私がロマニを殴ってあげよう!」
星でも出てくるのではないかというくらいのウインクをして、じゃあまた明日ね?あ、ちゃんとロックしておくんだよ?と声をかけて出ていった。
……ダヴィンチちゃん、お母さんみたい。
でもどうして、ドクターを殴るなんて話になってしまったのだろう、とふと考えつつも、明日を迎えるためにベッドへと潜りこんだ。