その日は穏やかに晴れた日だった。
お昼ご飯を一緒に食べながら、彼女は授業中にも見ないような神妙な顔をしていた。
「どうしたの?」
訪ねても、返事がうーうー唸るばっかりなので困ってしまった。
「たまごやき食べる?」
そう言うとやっと口がぱかりと空いた。
空いた口にたまごやきを一切れ差し入れると、咀嚼しながら彼女が話し始めた。
「霧絵のお母さんって料理上手だよね…」
「ありがとう」
お礼を言って微笑む。
「…じゃなくてね、」
その、霧絵って好きな人、とか、いる…?
好きな人。
考えた事もなかったので、こちらを伺う子犬のような瞳に
ぱちりと、瞬きしか返せない。
「いまはいないわ」
けれど、彼女にはいるのだろう。
わかりやすすぎて、愛おしい。
彼女はおずおずと、好きな人について語ってくれた。
同じ部活の、先輩。
夏の大きな大会が終わったら、想いを告げたいそうだ。
「わたしにできることはないかもしれないけど、うまくいくように祈ってるわ。」
彼女は照れたように笑った。