注意!
捏造過多 notふじまるりつか
藤丸立香(姉弟設定)





お昼休みの喧噪が私の意識を過去へと引き戻した。
生徒たちの騒めき、埃っぽい空気。
机や椅子が床に擦れる音、上履きの変な感触。
代わり映えのしない退屈な日常なのに、色ばかり濃くて持て余すほどの感情があった。

楽しい事も悲しい事も、些細なひとつひとつが鮮明で苦しいくらいだった。
あの日々を青春と呼ぶのかもしれない。

ーなんて、立ち止まった廊下で感傷に浸っている場合ではない。
私たちに残された時間は限られているのだから。

人理継続保証機関カルデア。

約束された未来は唐突に途切れて世界は白紙へと戻ってしまう。
この危機に気がついているのはほんのひと握りの人達だけ。
未来を本来の歴史に繋ぐために立ち向かう人達がいるなんて、
そちら側に立っていても実感するのは難しい、と思う。

窓の外は吹雪いていて景色と呼ばれるものは見えない。

伸ばした手が触れたガラスは予想に反して何の温度もなかった。

ひとつため息がでる。

私はいつの間にこんな遠くに来てしまったんだろう。

持っていたバインダーが胸にかけてあるネームプレートにぶつかってかちゃりと音がした。
目線を下げると、スーツのタイトスカートに制服のプリーツが一瞬重なって消えた。
巫条と、誰かが呼ぶ声がして振り返る。
殺風景な廊下に私以外の人影はない。

今の声は誰だったんだっけ。
何か重要な事を忘れているような、落ち着かない気持ちになる。

脳裏に走る制服の後ろ姿に、ズキリと頭が痛んだ。

頭を左右に振って不安を振り落とす。
胸に刺さったままの青春の欠片をそっと撫でてから歩き出す。

時間は止まる事がなく、意思とは関係なく人は大人になる。
過去の残像に囚われている暇は、ない。