空の境界
巫条霧絵ちゃんの話です
私のそれまでの人生は、普通に憧れる気持ちなんてわからないような平凡なものだったのだ。
父と母と弟。
些細なケンカもするけれど、仲良しだった。
私が高校に入学する時は、家の前で記念撮影をした。
みんな笑っていた。
「霧絵ーっ!」
同じセーラー服を着た短髪の少女がこちらに向かって走って来る。
「おはよう。
今日は宿題やってきたの?」
うげ、と顔を顰めたので多分やってきてないのだろう。
写すのは構わないのだけれど、私もそんなに頭が良くない。
私のせいで間違えるのは申し訳ないのだけれど、逆に間違っているのがある方がリアリティがあるそうだ。
「テスト前は一緒に勉強しましょうね。」
そう言うとより一層険しい顔をした。
彼女は勉強よりやりたい事がある。
部活を熱心にやっているのは、普段の様子から伝わって来る。
強くなりたい。
その気持ちは私にはわからなかったけど、綺麗な雰囲気が彼女を包んでいたので応援していた。
試合がある時は、教えてね。
と言うと彼女は太陽みたいに笑った。