ドラコが大広間を出ていってから未だ帰ってきていない。体調でも優れないのかと心配したが、それ以上に心配なのが彼の後をハリーが追いかけて行ったことだった。
あの二人のことだ。どうせまた突っかかり合って口論になっているはず。
大事になれば面倒だと思い席を立つと、近くに座っていたパンジーが「彼女面しちゃって」と嫌味を吐く。面も何も彼女だし、そんな意味を込めてじろりと睨むとパンジーは怯んで何も言わなくなった。
あちこち探し回っていると、男子トイレが騒がしいことに気が付く。ほら、言った通りだ。やっぱり喧嘩してる。
小さくため息を吐きながらトイレを覗こうとしたときだった。私よりも先に急いで中へ入っていく黒いローブと、入れ違いで出てくるハリー。
咄嗟に彼の腕を掴むと、驚いた様にこちらを振り返った。
「ドラコと何があったの?」
「…別に何も」
「嘘つかないで、教えて」
Ms.エヴァンズ。低い声でそう呼ばれ声のする方を見れば、私達を見下ろす教授とその腕の中でぐったりと気を失っているドラコの姿があった。ハリーの腕を掴む手に力が入るのがわかる。
「Ms.エヴァンズ、後で医務室へ来るように。」
「…はい」
そう告げ教授は早足で去っていった。「離してくれないかな」なんて口にする彼にぶつりと何かが切れるのを感じれば、力任せにトイレの中へと押しやった。ここが男子トイレだということも、床が濡れていることも、相手があのハリーポッターであることも、今は全部どうでもよかった。
「貴方がやったのね」
「違う、僕はただ」
「言い訳なんか聞きたくないの、二度と喋れなくしてやってもいいのよ」
「…校則を破るつもりかい?」
「ここは廊下じゃないわ。仮に廊下であっても今は校則なんてしらない。」
私に初めて杖を向けられた事に驚いた様子でこちらを見詰めている。大切な人を傷つけられた怒りは収まらず、増していくばかりだった。
「吹き飛びたい?それとも石にされたい?」
「どっちも嫌かな、早くそこを通して」
「…
ペトリフィカス・トタルス。次彼を傷つけたら殺すから。」
瞬間、ハリーは動きが止まり石のように固まった。本当ならもっと苦しめてやりたい所だったが、医務室に行かなければいけない事を思い出しそっと杖を下げる。石になっているのをいい事に蹴飛ばせば、抵抗できず彼はそのまま床へ倒れていった。
「失礼するわ。ご自慢のお友達に治してもらいなさい。」
そう吐き捨て急いで医務室へ向かった。
そこには既に教授の姿は無く、ベッドに横たわるドラコをマダムが治療している最中だった。
何も言わずに横の椅子に腰掛け手を握るとその手はしっかりと温かくて安堵すれば、ゆっくりと目を開けるのが見えた。
「…ミク?」
「起きた?」
「…ああ、心配かけたか」
「ううん、もう大丈夫。貴方がちゃんと起きてくれたから。」
「…アイツはどうした」
「ふん、しらない!」
「(絶対何かしたな…)」
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