「あ!真音ちゃん……!ここにいたんだね」
「ん、与一…」

優一郎の目が覚めた事をシノア隊全員に知らせていた与一。
そして、やっと病院の屋上で空を見上げていた真音を見つけた。

「ずぅっと探してたんだよ? それよりも、優くんが目が覚ましたよ……!」
「…そう」

真音はそっけなく返してから再び空を見上げる。

「真音ちゃん…?」

そんな真音を心配し、少し小さな声で呼び掛けると、

「……僕達、何の為にここに来たんだろう…」
「…!」

その一言に目を見開かせる。

「何の、為……」
「僕達は、吸血鬼と戦う為にここまで来た。けれど…結果は酷かった。何せ、……優二が。あんな事に…」

真音が言う優二とは、優一郎の事である。
そう、優一郎は新宿攻防戦の際突如異変を起こしたのだ。
シノアやシノンによって最悪の事態は何とか免れたが、真音にとってそれは大きな疑問点となっていた。

「僕達は……。ここに、来るべきじゃなかったんだと思う…」
「…………」

無言になった与一は静かに彼女の元へ近付き、

「! 与一……?」

そっと、彼女の手の上に自分の手を添える。

「……確かに、そうかもしれないね…。僕も、実際あの時何も出来なかったし……」
「っ、僕だって…同じ……。シノノンを、泣かせないって誓ったのに…。泣かせてしまった……」
「真音ちゃん……。我慢、しなくて良いよ」
「っ、でも……」

言い返そうと口を開いた瞬間、瞳から一筋の雫が零れた。

「あっ…」
「僕以外、誰も見ていないから…。だから、泣いても大丈夫だよ……?」
「っ…よい、ちっ……!」

その言葉で今まで押し込めていたものが一気に外れ、彼に思い切り抱き付いてから声を殺すように泣く。

「〜〜っ…! うあぁっ……!」
「真音ちゃん……」

真音の涙を静かに受け止める与一は、泣き止むまで頭をそっと撫で続けた……。





「その、真音ちゃん…」
「……?何、与一…?」

ようやく泣き止み、目を腫れぼったく赤くさせている真音。
そんな時、与一が声を掛けてきた。

「…僕じゃ、何も出来ないかもしれないけど…。でも!君を守れるようにもっと強くなりたいっ……!」
「え…?」
「あの!えとその……上手く言えなくてアレだけど、ようやく…自分の気持ちが、ハッキリ出来たというか…」
「そ、れって……」

与一は一度落ち着く為に深呼吸し、

「…真音ちゃんの事が。その…好き、だよ……」
「…………」
「えっ! 真音ちゃん…!?」

想い人と両想いになったと理解した途端に思考が停止し、直立不動の状態となった。
心配した与一は真音の肩を掴み優しく揺さぶると、

「……ホン、トに…?」
「えっ…?」
「ホント、に…。僕の事、好き……?」
「…うん、そうだよ」

不安そうな表情を浮かばせる彼女にそうだよ、と微笑みかける。

「っ…、あ、うっ……」
「ごめんね、真音ちゃん…。その、今まで中々返事が返せなくて……」
「ううん…。今、幸せだから大丈夫……」

そう言うと、真音は再び与一に抱き付く。

「良かった……。えと、これからも…よろしくね」
「うん、こちらこそ……よろしく」

そう返してから、初めて彼に笑顔を見せる。

「えっ…!? (真音ちゃん、こんな風に笑うんだっ…!? か、可愛かった……)」
「与一?」

与一の様子が少しおかしいと気付き、呼び掛けてみる。

「あ、あの…大丈、夫……。多分…」

一方の与一は真っ赤に染まり上がっていく顔を必死に隠そうと上を向いた。

「そう、なんだ……?」
「と、とりあえずっ! 優くんの病室に行こう真音ちゃん!」
「……? うん、分かった…」

こうして、無事に両想いとなった真音と与一は彼の顔の赤みが引いてから手を繋ぎ、そのまま優一郎の病室へと向かった……。




*前/次#