最悪のフタリ 2
〜翌日〜
「はいはーい。今日からは一週間後の鬼呪装備適性試験に向けて、君たちの能力をジャッジしていきまーす」
副担任である花依 小百合の言葉通り、これから鬼呪装備適性試験に向けた演習が始まる。
その内容とは、二人一組になりお互いの息を合わせるという訓練である。
また、倒すのが早かった順に評価点が高くなる。
「二人一組…。優様、大丈夫でしょうか……」
シノンは昨日のこともあり、優一郎の心配をしながら視線を向ける。
案の定、彼は1人ぼっちになっていた。
「やっぱり…。優様!」
「! シノンっ……!」
声を掛けられた優一郎は希望が見えた…! と表情が明るくなった…が。
「柊さん! 良かったら俺と組んでくれませんか!」
「おまっ、抜け駆けすんなよ!」
「柊さんと組むのは俺だぁあああ!!」
「えっ、え……?」
「なっ…!?」
彼女の姿が周りを囲む男子によって見えなくなり、今度こそ絶望した。
「(ど、どうしましょう…。優様から、遠のいて行ってしまいます……)」
流されるがままに優一郎から遠のいてしまったシノンは自分を囲んだ男子全員の誘いを丁寧に断った後、同じ女子と組む事になった。
その際もまだ彼を案じていたが……
「あれ、あの方は…。何とかペアを組めたのですね」
ホッ…と胸を撫で下ろし、大丈夫だなと把握したと同時に訓練に気を集中させる。
そして、訓練が始まり……
「わぁっ!?」
「私の合図の後に、あちらへ行きましょう!」
元々軍の人間であるシノンにとっては難無くこなせる内容であるからか、焦る様子もなくパートナーである女子をしっかりリードし、軍が用意した式神人形の攻撃を避ける。
「柊さん、ペアになってくれて本当にありがとう!」
「ふぇっ。あ、えっと……」
お礼を言われどう返事を返せば…とモジモジしていると、
『ぎゃあああっ!!!』
「うわっ、あの2人息合わなさ過ぎだね。柊さん」
「そ、そうですね…」
向こう側から優一郎と眼鏡の少年・君月 士方の悲鳴が聞こえ、先程まで安心していたのは間違いだったか…と苦笑する。
「ねぇ柊さん、確かあの百夜って子と知り合いなんだよね?」
「え、えぇ。そうですね…」
「大変だよね。ああいうのと知り合いって……」
「あ、あははは…」
返す言葉が全く無い……。
そう思ったシノンは次の式神の攻撃に備え、今度はどっちに避けるべきか考えていた。その時、
「訓練中失礼します! 君月くんはここにいますか!?」
小百合に声をかけた連絡官である男性によると、君月の妹・未来が危篤状態になっているらしい。
それを聞いた君月は一瞬思考するが、続けてくださいと告げた。
その瞬間、優一郎が彼の頬を殴り……
「馬鹿かおまえは!! 評価とかどうでもいいだろうが!! てめえの家族が危ねぇんだぞ!!」
「優様……」
優一郎の言葉はシノンの心にも痛い程伝わった。
グレンから聞いた話によると、彼は4年前同じ孤児院で育った家族が、全員吸血鬼に殺された。
そして、彼だけ生き残った。
シノンも、形は違えど家族を失う悲しみを知っている。
だからこそ、彼の言うことはまるで自分にも言っている。
そんな感覚がした。
その後、2人は急ぐように病院へ向かった。
「…………」
シノンは2人の背中を静かに見送った。
「ん? シノン!」
「優様、君月様。手錠を外す鍵を用意しました」
「……」
訓練場に戻って来た優一郎と君月の元に、シノンが鍵を持ちながら駆け寄って来た。
「君月様、妹様のご容態は……」
「何とか危機は脱したってさ」
「そうなのですね、良かったです…」
「…オイ」
「はい……?」
「おまえまで何で俺の妹のことを気に掛けている?」
そう問い掛ける君月は冷たい視線を向ける。
が、シノンはそれに怯む事はなく答えを述べる。
「…そう、ですね。人はそれをお節介と呼ぶのかもしれません。ですが……。私も優様と同じで、困っている方を放っておけない性分ですから」
「!? べっ、別に俺はそんなんじゃねえよ…」
シノンの笑みを見た優一郎は少し赤らめながら頬をかく。
「…やれやれ、俺もついてねぇな。こんな馬鹿やドのつくお人好しお嬢様と馴れ馴れしくするなんてな」
「あぁ? 誰が馬鹿だこのヤロー!!?」
「お前以外にいねぇよバーカッ!!!」
「ああああっ、お2人共落ち着いてください! 手錠が外せないですよっ…!?」
『!…お願いします』
「い、息ピッタリですね……」
シノンの言葉にすぐ手錠をしている手を同時に差し出す2人。
あまりにもの息の合った動きにシノンはポカンと口を開ける。が、
「オイ、真似すんなよ」
「そっちが真似したんだろ?」
『…………』
「えぇえええっ…!!?」
再び殴り合いが始まってしまい、シノアがある手口を使うまでシノンの必死の制止は続くのであった……。