三葉のチーム 2






「……すごいね、これ…ほんとに世界って滅亡したんだ」

与一は周りを見渡しながら、世界が一度滅んだというのを痛い程再認識する。

「……」

真音は、そんな与一を横目で見つめる。

「……真音様」
「ん、どうしたの。シノノン」
「先程、与一様に抱き着いたのには……深い理由が、あるのですよね?」
「……」
「無理に話せ、とは言いません。真音様のお気持ちを最優先します」
「ありがとう、シノノン……」

とても優しい気遣いをしてくれるシノンに、真音は微笑する。

「いえいえ」
「……それよりも」
「?…あ、三葉様……」

真音がある所に視線を向け、シノンも同じように向けると…三葉が、城壁外に出た際の危険性についてやたらと饒舌に話していた。

「三葉、何であんなに張り切ってるの」
「ま、まぁ…恐らく、新人である優様達の命をお預かりしているので、責任を強く感じているのではないかと……」
「フーン……」

シノンの推測を聞いた真音は、白けた表情で三葉を見る。そんな時、

「あ、原宿駅だ」

気が付いた時には、任務地である原宿に辿り着いていた。

「吸血鬼、本当にここら辺にいるの……?」
「…………」

真音は疑問を抱きつつも遠くまで見渡し、シノンは段々と顔つきが変わり始めていた。その時!

「きゃあああ!! 助けてぇ!!」
「! "ヨハネの四騎士"がっ……!!」
「まずい!!」

女の子が、"ヨハネの四騎士"に追われ必死に逃げている。
優一郎とシノンはすぐに助けに向かおうとするが、三葉に止められる。

「おいシノア!」
「ええ、たぶん吸血鬼の罠ですねぇ」
「っ……!」

全く表情を変える事なく、シノアは淡々と事の状況を語る。
それを聞いたシノンは、ギリッ…と歯を強く食いしばりながら眉をしかめる。
敵の罠なのは分かっている。
しかし…目の前で、命が失われるのは嫌だ。
そんな二つの思いが脳内で交錯し始めた時……!

「ふざけんなよてめぇ!!! ガキ一人救えなくて何が吸血鬼殲滅部隊だよ!!!」
「優様っ……!!?」

優一郎が激情し、叫んだ後三葉の制止を聞かず女の子と"ヨハネの四騎士"の元へと走り出す。
そして、女の子の元に着いたと同時にすぐに抱き上げ、仲間の元へと投げた時…策略に嵌ったと判断した吸血鬼が次々と空から降りて来る。

「(3体…。倒せなくはないですね……)優様を、助けなくては…!」

君月・与一・真音・三葉が連携して"ヨハネの四騎士"を倒した時、吸血鬼と戦う優一郎の方に体を向けたシノンは地面を強く踏み付け……

「たああぁぁあっ!!!」
『!?』
「シノン!」

勢いよく吸血鬼の元へと飛び、着地したと同時に武器である二つの槍を素早く振り落とす。

「コイツ…っ!?」

1匹の吸血鬼が体勢を立て直す前に、いつの間にか後ろに回り込んでいたシノンの槍攻撃が懐に直撃した。

「ぐぅっ…!? おのれ、下等生物の分際でっ……」

体が真っ二つになる寸前で避けた吸血鬼だが、口には血が滲み出ている。

「……」
「(すげぇ…。本当に、あのシノンなのか……?)」

冷酷な表情をしながら槍の矛先を向けるシノン。
そんなシノンに、優一郎は目を見開かせながら驚愕する。
すると、ある吸血鬼が……

「! オイ、アイツ"刹那姫"じゃないのか……?」
「"刹那姫"だとっ……!?」
「刹那、姫……?」

誰の事を指して言っているのだろうか…?と思った優一郎だが、すぐにその人物が分かった。
吸血鬼達は、シノンに睨み付けながら警戒するように武器を構え直している。
一方のシノンはというと、顔色一つ変えずに鋭く睨み返す。

「今更気付いても遅いというのが、分からないのか……?」
「チッ…! これ以上厄介な事になる前にコイツを殺し……「させねぇ、よっ!!!」
「! 優様っ……!!」

舌打ちした吸血鬼が早い内に始末しようとシノンに剣を突き立てる。
だが、後ろから優一郎が腕を強く引いた事によりかわされ、優一郎はシノンを抱きかかえたまま巨大な一閃を放つ。
その時、三葉が撤退すると叫んだ。

「…は、家畜が……。逃がすわけが…」
「あ?てめえ、今なんつった?」
「っ…! 優、様……」

吸血鬼の言葉に目の色を変えた優一郎に、シノンは驚き一瞬だけ肩が動いた。
それから1分も経たぬ間に、吸血鬼達は逃げるように去った。

「あ、のっ…。ありがとう、ございました。優様……」
「ああ…。怪我、ないか?」
「いえ、私よりも優様がっ……!」

シノンは額の手当てをしようと急いで救急セットを取り出す。

「んな事しなくても、舐めときゃ治る…「ダメです! 傷が広がる前に、早急に手当てしないとっ……!」
「……ありがと、な…」

少々照れながらお礼を言う優一郎だが、シノンは懸命に手当てをしている為聞こえていない。

「シノノン、全く聞こえていない」
「手当てにしか頭が行ってないみたいですね〜?」

そんな2人の様子を見ている真音は変わらず淡としており、シノアもあははといつものように笑う。
そのすぐ後に助けた女の子と共に渋谷拠点監視哨に着いたシノン達だが、三葉が優一郎の頬を強く叩き怒る。
優一郎はそれに対し……





「……ああ、そうだな。だが反省はしない、子供は救う必要はあった。だからどんな状況でも、俺は同じ行動をした」

優一郎は悪かったと思っている、気が済むまで殴ってもいいと続けて言う。

「三葉様、私にも十分非があります。だから、私も……」
「いや、シノンは俺を助けただけだろ? 巻き込んだのは俺の方だ」
「っ……」

申し訳ないと言うように俯くシノン。
三葉は拳を握り震わせながら優一郎に嫌いだと告げた後、お礼を言いに来た女の子に大丈夫だと笑顔を見せた。
そして、女の子が手を振りながら去った後……

「だがお前は嫌いだ!!」
「えー」
「み、三葉様……」

三葉も、苛立ちながら早歩きで去った。

「三葉、相変わらず」
「…三葉様も、色々とありましたから……」
「……そうだね」

シノンと真音は、三葉が去った方を静かに見つめた……。

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