新しいカゾク






「危険な人間は、皆殺しにしよう」
「…与一っ!?」
「優様! 下がってくださいっ!!」

シノンが優一郎に呼び掛けたと同時に弓の雨が降る。
だが、"鬼呪装備"を使って攻撃を躱したグレン以外は何とか攻撃を避けられた。

「グレン中佐」
「これは、一体どういう「だめだ、黙ってろ」

シノアとシノンはグレンに意見しようとしたが、それ以上は言うなと彼女達の言葉を遮り、

「あー優、君月。追加の命令だ」

彼は優一郎と君月に次の命令を告げた。
「"鬼呪装備"を手に入れたが契約したてでは使いこなせないだろう。だから、鬼を呼ばず基礎能力だけで始末しろ」と。
それに対しシノンとシノアは無茶だと焦り、君月はグレンの言うことを聞くように双剣の"鬼呪装備"を構えた。

「あんにゃろ…ってか殺せってどういうことだよグレン!! 与一は仲間だぞ!!」
「はぁ〜? 仲間? ありゃどう見ても鬼だろが。早く殺して楽にしてやれ」
「っ……」

優一郎とグレンが揉め合う中、シノンは何も出来ぬ歯痒さで顔を歪める。
その間にもグレンは彼に現実の厳しさを伝え、

「く…くそ、クソ…くそがあぁああ!!!」

抜刀した瞬間、力がみなぎる感覚がした。
それを実感してすぐ君月と共に鬼と化している与一と戦う。
その際、優一郎が精神の奥深くで眠っているであろう与一に必死に呼び掛けるが、届くはずがなく鬼の攻撃は更に激しさを増していくばかりだ。

「…中佐、グレン中佐。状況と意図が見えません。これは少しやりすぎじゃないですか」
「ああ?」
「あのお二方は先程"鬼呪装備"を手に入れたばかりです。そんな彼らに与一様を殺せだなんてあまりにも……」

シノアとシノンはもう一度グレンに話し掛けるがやはり流されてしまい、「なら、お前達がやれよ」と冷静な口調で返す。

「っ、そういう話では…」
「おまえ、お遊びでうちに入ったのか?」
「!? 違います!! 私は! 私、はっ……」
「なら、アイツらを静かに見守ってやれよ。それが監視官のお前らに出来ることだ」

グレンに言われたシノンは俯かせていた顔を上げ、まだ戦っている優一郎達を見た。その時!

「! 優様っ!?」

優一郎が武器を投げ捨て、何も持たぬ生身のまま再び与一に呼び掛けているではないか。
シノン・君月・シノアはそんな彼を攻撃から守るべく駆け寄り、与一も彼に焦点を当てるように矢を向けた…その時、

「おい与一!! てめぇはまたベッドの下で家族が死ぬのを見てるつもりか!! いいからさっさと出てきて仲間を守れ!!」

グレンの言葉を聞いたすぐ後に矢を放たれたが、優一郎の顔を掠ることなく通り過ぎた。そして、

「う…うわあああああああああああ!!」
「与一様! 戻ったのですね……!」

思い切り優一郎に抱き着く与一。
どうやら元に戻ったみたいだ。
よしよしと頭をポンポンする優一郎と泣きつく与一に、シノンは良かった…と安堵する。と、

「戻んのが遅えええええ!!」
「ぎゃあ!?」
「はうあっ……!?」

グレンが彼らに微笑み掛け…たと思ったら、何の前触れもなく優一郎を蹴飛ばした。

「優様!? 大丈夫ですかあああっ!!?」

シノンは蹴られたことでダウンしている優一郎の体を揺さぶる。

「まさか中佐、こうなるとわかってて…」
「うるさい黙れ、俺は別にガキが死のうがどうでもいい派だ」
「…その割には、最後ちょっと焦ってたように見えましたけど」

シノアの一言が図星だったのか「死ね」を2回連呼する。
その後に与一の背中を軽く踏み、彼が振り向いたときにこう話す。

「復讐? んな小さいものにとらわれんな」

「てめぇも同じだ馬鹿優」と優一郎の頭を蹴り、それによって彼がようやく起き上がった所で話を進める。

「昔の家族はもう忘れろ」
「はぁ? ふざけ…「ここにいるのが、新しい家族だ。おまえは今いる家族に命を懸けろ、馬鹿が」

優一郎は一瞬俯いた後拳を強く握り締め、シノンも……

「……」

"家族"、という言葉に複雑な気持ちを抱く。
シノンやシノアは血は繋がっているもののお互いや上の姉以外の家族や親族とはあまり親しくなく、本当の"家族"というものを知ることなく育った。
だからか、その単語は彼女達にとって無縁な言葉だと思っていた。
そんなシノンの様子を察してか察してないのか、グレンは彼女達にこう告げた。

「さって〜鬼呪装備も手に入れてちょ〜っとチームワークっぽいことができてきたから、そろそろ一回前線出てみっか〜」
「前線!?」
「ああ」

話によると関西方面の吸血鬼達が新宿奪還を計画していることが分かったらしい。
つまり、優一郎・与一・君月にとって初めての任務がいきなりの実戦となるのだ。
一方、渋谷郊外では……





「まっちゃん〜!」
「ん、すずっち」

夜と同じ濃紺の髪色をしている少女は、藍色の髪を靡かせている小柄な少女に呼ばれてすぐ振り向いた。

「って、うっわぁ〜…。まっちゃん、1人で倒したの……?」

濃紺の髪の少女の後ろには世界崩壊時に突如現れた化け物−−−"ヨハネの四騎士"が既に倒されていた。

「流石まっちゃん。『黒鬼』シリーズの持ち主だね〜」
「当然。で、どうかしたの」
「あ、そうだった。え〜っと…あった! はい、これ!」
「……?」

小柄な少女に手紙を渡され、何だ…? と首を傾げる。

「グレン中佐からだよ〜!」
「"大将"から?」

グレン中佐−−濃紺の髪の少女が"大将"と呼んでいる人物から珍しいものが届いたなと思いつつ、早速開いてみると……

「…僕、そんなこと出来る気がしないんだけど……」

そこには、"今度、新しい隊が出来る。
そして、その中には『黒鬼』シリーズ保持者が3人もいる。
お前と同い年でしかもまだ鬼呪装備の扱いがなってねえから、監査官としてソイツらの面倒を見てやってくれ"と書かれていた。
この1通の手紙が彼女にとっても運命が大きく変わる事になるとは思うはずもなかった……。

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