殲滅のハジマリ 2






翌日、
東京 表参道駅地下入口






「奇襲攻撃を行います」
「(奇襲、攻撃……)」

早朝になり、表参道駅地下入口に着いたシノア隊は作戦の詳細を聞いていた。
因みに、優一郎が救出した女の子から得た情報をそのまま話している。

内容は、現在いる場所には7人の吸血鬼が潜んでおり、眠りについている今の時間帯から昼にかけて攻撃を行うというものだ。

すると、説明が終わった時に君月が手を挙げ、中に捕らわれている人達はどうするのか訊く。
その質問に対し、代わりに三葉が「人質は無視する」と答えた。
そんなやり取りを終始聞き続けていたシノンは眉を少しひそめるが、シノン以上に何か言いたそうにしているのが顔に出ている優一郎が三葉に声をかけられ……

「誰が不服っつった? 俺は吸血鬼が殺せんならそれで…」
「あと、吸血鬼7人全員武装した状態で起きていた場合は、絶対に勝てませんのでやはり逃げます」
「あ?」
「(確かに…。いくら私達と同じ数であったり『黒鬼』シリーズ保持者が4人いるとしても、万が一の事を考えたら……)」

そのまま続けるシノアの話を、真剣な顔つきをしながら耳を傾けるシノンはグッ…と握っている手の力をほんの少しだけ強めた。
そして、シノアは今度こそ全部話し終え全員にはぐれないようにと最終確認をし、全員返事を返した所で……

「では、吸血鬼を皆殺しにしましょ〜」
『…………』
「シノア、姉様…………」

明らかに1人だけテンションが違うシノアに、シノンは今日初めのため息をついた……。





「シノノン、あそこ」
「……恐らく、あの方達は人質ですね…」

階段を降りてすぐ目に入った沢山の人に反応した真音が声をかけ、シノンはより険しい表情になっていく。
中には、救出した女の子よりも小さい子供がそこにいた。と、そんな時……

「…? あれ、優様……」

優一郎の様子に違和感を感じ、そっと彼の元へ歩み寄る。

「あの……」
「っ、って…シノンか」
「すみません、勝手に……。でも、見た時に顔色があまり優れていないように見えて…」
「…気にすんなよ」
「……はい」

優一郎の態度で察したシノンはこれ以上深追いをしないよう口をキュッと閉じる。

「…お前、有り得ねぇくらいお節介だよな」
「よく、言われます……」

図星を突かれ、苦笑いするしかなかった。

「何か理由でもあんのか?」
「…昔、沢山助けてもらったんです。初恋の、人に……」
「初恋…?」
「6才の時に出会ったのですけれど、とても優しくて笑顔も素敵で…。今でも、毎日のように思い出せます……」
「…で、ソイツは?」

言葉にしなくても答えが分かるよう、目を閉じ首を横に振る。

「生きていれば一番良いですが…。何もかも壊れてしまったこの世界ではもう……」
「…ごめん」
「いえ、私の方こそ暗い話をしてしまってすみません……」

その後2人は一言も話さず、かといって離れる事もなく歩く。
一方、真音は……

「…………」

何かを探すように、辺りを隈なく見渡していた。

「真音ちゃん?」
「ん…。与一」
「もしかして、誰が探しているの…?」
「…姉ちゃん」
「えっ……?」

真音の一言に与一は目を丸くさせる。

「世界が崩壊した時、姉ちゃんは…吸血鬼に、攫われた……」
「そう、なんだ…」
「うん、だから……。もしかしたら、ここにいるのかな…って」
「……」

哀しそうな表情を見せる彼女にどういう言葉をかければ良いのだろうか。
与一はひたすら考え、

「……?」

彼女の右手を、両手で包み込む。

「大丈夫。きっと…お姉さんとまた会えるよ」

真音と同じで姉がいたからこそ、自然と気持ちが分かる。
自分の姉はもう死んでしまったが、真音の姉は生きている可能性がまだある。
だからなのか、まるで自分の事のように思えてくる。すると……

「……ありがとう」
「…!?」

ほんの一瞬だけ見せたその笑顔を見た瞬間、何故か心臓が飛び跳ねるような感覚がした。

「あ、れ…?」
「? どうしたの……?」
「う、ううん。何でもない…と、思う」
「そっか…?」

一体、さっきのは何だったのだろうか…?と思い始めた時、既に吸血鬼達がいるとされる地下3階まで辿り着いていた。
先程の場所もだが、まるで気力を失ったかのように虚ろとしている人達がいた。
その時、巡回していた吸血鬼の1人がこちらに気付き……

「総員攻撃準備!!!」

全員、鬼呪装備を抜刀した。
だが、優一郎が一目散に敵の元へ突っ込みそのまま斬り捨てる。

「すっ、凄い……」

昨日も思ってはいたが、優一郎の成長の早さにシノンは喫驚した。
更に、三葉の後ろにいた吸血鬼も素早く斬る。

「やーやー。グレン中佐の秘蔵っ子ですから強いってのは分かってましたが、まさかこれほどとは」
「あまり、無茶をなさらなければ安心出来るのですが……」
「その通りですね〜シノン♪」
「…全然、思っていらっしゃらないですよね?」
「あ、バレました?」

シノンに心の内を読まれたシノアは、おどけてみせる。

「こいつらはいったい……」
「『黒鬼』持ち、ってだけじゃない気がする」
「あら、まっちゃん。彼らに何か感じるのですか?」
「…どうだろ」

真音は与一達を見つめながら首を傾げる。

「……よし。おまえら、浮かれるな。まだ敵は5人い……」

三葉は次の目的の為に全員に気を引き締めろと言おうとした時…2人の吸血鬼が、窓を割りそのまま入って来た。

「っ! 三葉様っ!?」

1人が三葉の首を掴み、三葉はそのまま捕らわれてしまった。
そして、周りを見てみると聞いていた人数よりも多く吸血鬼達がいた。

「シノノン、これは…」
「…いえ、あの子は何も悪くありません」

シノンは、目の色を変えた後雪浅鬼を構える。
危険な状況だと悟った三葉は自分を置いて逃げろと叫ぶが……

「うるせえぇえええ!!!」

仲間を見捨てて逃げるわけないだろ!と三葉を助けに向かう優一郎。
シノン達は、それを援護するように吸血鬼達と応戦する。

「ちっ! 人間どもが…「うるさい」
「ぐはぁっ……!?」
「はあぁああっ!!!」
「っがぁ…!!!」

遠方では真音がクナイを的確に投げ、シノンは一気に距離を詰め見えぬ速さで槍を振る。
その間に、無事に三葉を救出した優一郎は吸血鬼達に……

「その人間の醜さに怯えながら死ね、吸血鬼(ヴァンパイア)」
「ったく…めんどくせー奴が仲間だなぁ」
「確かに、面倒」
「はは」
「でも、それが優様の強み…なんですよね」

シノン達は、この後一気に吸血鬼達を殲滅した。
それから少しして、無事に人質を解放する事が出来たのだが…女の子の父親が何故吸血鬼を殺したのかと責め立ててきた時、





「そっ、それは……あ」
「…俺は子供の頃…ずっと吸血鬼の都市にいた」

優一郎が、過去の自分の話を父親に話す。
それを聞いた父親は、今まで堪えてきた事を吐露し涙を流した。
そして…彼らは全員帝鬼軍に保護された。

「一体何なんだよアイツ〜?」
「まぁまぁ……」

三葉に再び嫌いだと告げられ、優一郎は頭をかきながら呆れる。
その時、シノンは……

「…優様」
「ん?」
「……」
「…シノン?」
「っ…すみません。次に出す言葉を、忘れてしまいました……」

潤んできた瞳を隠すように、紫がかった灰の長い髪を揺らしながら踵を返す。

「? ワケ分かんねえの……」
「あはは…」

この時、シノンは思った。
優一郎といると、隠し通しているありのままの自分がつい出てしまうな…と。

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