交錯するカンケイ 1
〜7日後、サングィネム〜
「真音…」
あれから7日経ち、依音は1人佇んでいた。
妹は生きていた。
それはとても嬉しい事だが、
「っ……」
真音を人間達の手から救う事が出来なかった。
「何で、真音……」
ずっとそれを考えては責め続け…という繰り返しを何度もしている。
まだ、自分には妹を救えるような力が足りないのだろうか……。
「…依音」
「! っ、ラクス……」
肩をポンと叩かれ、ハッと目を大きく開かせながら振り返るといつもと変わらぬ表情のラクスがいた。
「何でこんな所にいるんだよ?」
「……関係、ないでしょ」
いつもならここで強く言い返す所だが、今日はそういう気になれず視線を逸らしながら答える。
だが、ラクスは既に全部見抜いており……
「…それだけ、妹を連れて来たかったのか?」
問い掛けられた依音は、きゅっ…と唇を閉じる。
「あの子は、真音は生きていた。嬉しかった……。けど、また離ればなれになってしまった…。何の為に、今日まで生きてきたんだろ…………」
そう話してからラクスの方にに体を向け、委ねるように彼の胸元に頭を乗せる。
ラクスも何も言わずにそのまま抱き寄せる。
「次があるだろ、次が? 今度はちゃんとエリザ様に確認を取れるだろうから、何とかなるはずだと思うぞ?」
「…何で、そんなお気楽思考でいられんのよ。アンタは……」
ラクスは「さーな?」と肩を上げる。
「…大丈夫、なのかな」
「大丈夫だって。つか、俺からしたら今日のお前の態度の方が大丈夫かすっげぇ不安だけどなー」
「……。殴られたいの?」
「そうそう。やっぱお前はそうじゃないと」
「…あり、がと」
依音のお礼の言葉に仰天するラクスだが、「あーっ…」とため息混じりの声を出し、殴られる事を覚悟しつつ彼女の唇を奪った。
〜一方、新宿病院〜
「えっ、と…」
「……」
ようやく目が覚めた優一郎の病室へ向かう為に屋上からゆっくりと階段を下りながらも、中々目を合わせる事が出来ない真音と与一。
だが、手はしっかりと繋がれている。
彼女達はつい先程付き合う事になったのだが…改めて話そうとしたら妙に緊張してしまい、言葉が煮詰まってしまう。
「…与一」
「わっ!? ど、どうしたの真音ちゃん!」
「…落ち着こう?」
「ご、ごめんね……」
「大丈夫」
真音は少し目を細めながら微笑み、改めて与一に全て話した。
7日前の前線であった出来事全てを。
生き別れた姉・依音とそこで再会した事、彼女は生きていて、吸血鬼になっていた事、そして…今の自分の気持ちを。
「もし、叶うのなら。今度はちゃんと姉ちゃんと向き合いたい……。今度こそ、姉ちゃんを助けたい…」
「そっか……」
与一は繋いでいる手の力をほんの少し強める。
「でも、そうすると与一やシノノン達に迷惑を……」
「…それは、違うよ」
「与一……?」
「迷惑を掛けて良いんだよ、その為の…"家族"なんだから」
「…!」
与一の言葉に感情が込み上げそうになる。
「僕も、"家族"なの……?」
「勿論だよ」
「…いつか、皆にも話してみる……」
「うん、待ってるよ」
「ありがとう、与一。…好き」
真音の告白に、与一は顔全体が一気に火照ってきた。
「う、うううんっ。ぼっ、僕もその…好き、だよ」
「!? ………う、んっ…」
病室に着いた頃には2人揃って顔を真っ赤に染まり上げていた。
それから少しして反対方向からやって来た君月がいち早く状況を察した。
「…与一、おまえ大丈夫か?」
「えっ、なっ何が……?」
「…いや、どーぞ勝手に幸せしてろバカップルめ」
「ありがとう君玉子」
「褒めてねぇよっ!!!」
「ふっ2人共……!?」
何とか真音に食ってかかる君月を宥めた後に病室に入り、改めて優一郎の無事に安堵するシノア隊だが…シノンの姿がどこにも見当たらない。
「……なぁシノア。シノンは?」
「…あの子はとぉっても頑固者で繊細ですからね〜。「優様に会わせる顔がないです……」との事らしいですが」
「……」
優一郎は、どうしてシノンがそんな事を言うのか少し分かった気がした。
「…シノン、どうしてっかな」
誰にも分からぬ声で、シノンの事を考えながら呟いた。
そして、そのシノンはシノア達が帰ってからしばらく経った時に病院の入り口付近まで来ていた。
「っ…………」
病室に行ければ簡単だが、まだ迷いが生じている。
何から話せば良いのか、どんな顔で会えば良いのか。
だが、1番思い悩んでいるのは……
「…ミカ様の事を、どうお聞きしたら……」
自然と、眉間にしわが寄る。
だが、それでも行かなければ…。
話さなくては、何にもならない。
「…よしっ」
深呼吸をし、心の準備が整ったと同時に歩き出した……。