真昼とフタゴ
数日後、とあるビル前…
「真音様、おはようございます」
「ん、おはよう。シノノン」
あの後、日を改めて別の場所に集まるよう言われたシノア隊。
シノンと真音は言われていた集合時間よりも十数分早く着いた。
「シノノン、早いね」
「真音様もですよ」
「…眠れなかった、から」
一瞬、真音の瞳が下を向いた気がした。
「それにしても…。グレン中佐は、何故このような所に集まるよう仰ったのでしょうか」
「大将の考え、昔から読めない」
真音の言葉に、シノンは同意の頷きをする。
「まるで、真昼姉様みたいです……」
「…確か、シノノンとシノアの姉ちゃん、だよね」
「はい……。真昼姉様も、お考えになられてる事をあまり読ませてはくれませんでした」
ふと顔を上げ、雲が散りばめられている空を瞳に写した。その時、
「あれ、真音ちゃんとシノンさん?」
「もう着いていたのか」
「2人共、何を話してた?」
「与一」
「君月様、三葉様も…!」
与一達と合流したのだが、優一郎とシノアの姿が見当たらない。
「馬鹿優はともかく、シノアまでいないとはな……」
「双子妹、何か知ってるか?」
「いえ、でも…。起こしに部屋に入った時には、既にいなかったです……」
不安な表情を浮かべるシノンに、真音達は互いを見合う。
「グレン中佐なら、何か知ってるはずだ」
「そうだな」
「シノノン、大丈夫」
「ありがとうございます、真音様…」
とりあえず中に入ったシノン達は、屋上を目指すべく階段を登り……
「! シノア姉様……!」
屋上に着いたと同時にシノアの姿が見えたシノンは彼女の元へ小走りし、すぐに抱き付く。
「シノンどうしたのですか? 今日は珍しく甘えたさんですねぇ?」
「心配したんですよ、私……」
ぷーっ…と頬を膨らませてみせると、シノアは「おぉ、心配を掛けさせてしまってたんですね!」と大げさに言いながら抱き返し、チラチラと優一郎を見る。
「…んだよ」
「いいえ〜?」
あからさまに「羨ましいでしょ?」というその顔に優一郎は若干苛立つ。
「グレン中佐…お早いですね」
「大将、集合時間までまだ30分以上あるはずだよね?」
グレンは真音の問いに対し、「説得力ねぇ奴が言うな」と答える。すると、
「…あれぇ、私や優さんが聞いてた集合時間と違いますねぇ。まさかこれ、私に姉のことを伝える会だったとか?」
「!? 姉、って…」
目を大きく見開かせながら、グレンに視線を向ける。
「文句がありそうな奴の不満を聞いてやる会だよ。まずシノア、それと…シノンもだ」
「はい?」
「っ……」
身構えるシノンをチラリと見た後、グレンは話を進める。
「おまえらの姉は死んだ、もう戻らない。鬼になって刀の中にいるが制御できてる。俺はあいつに取り憑かれてない」
「…!?」
信じ難い言葉に激しい頭痛がした。
真昼は鬼となり、グレンの"鬼呪装備"になっている。
いや、それをちゃんと自分やシノアの前で話すという事は恐らく本当なのだろう。だが、
「……」
それでもまだ納得が行かない。
なら、どうして真昼を殺したんだ。
その思いが段々と込み上げ……
「…中佐」
「ん?」
優一郎達にこれからどうするべきなのかを話しているグレンに声をかけ、雪浅鬼を取り出そうとしたのだが、
「シノン…?」
「……」
優一郎の呼びかけで我に帰り、顔をしかめる。
こんな事をしても真昼が帰って来る事はもうないのだ。
行き場のないその辛い思いは、涙へと変わっていく。
「…シノン」
「はい…。……!」
そんな心境を察してくれたのか、グレンはシノンの頭にポンと軽く手を置き……
「……」
「!? 中佐っ…」
耳元で囁かれた後、言葉が詰まらせる。
「じゃあ、俺は帰って寝るぞ」
「あっ……」
引き止めようとしたが、既に遠くまで行ってしまっていた。
「シノノン…? どうかしたの?」
「真音様……。いえ、何でもないですよ…」
「そっか」
真音はさりげなくシノンの背中を優しく叩く。と、その時、
「シノン! 真音!」
「! 優様…?」
「何、優二」
「お前らにも教わりたいんだ!」
「おっ、教わりたい……?」
話を聞くと、シノンが真昼の事で憂いていた間に《鬼呪装備》の訓練をする事になったらしい。
「でっ、でも……」
「頼むっ…!」
「うっ……」
面と向かって言われると、とても断りづらくなる。
「…わっ、分かりまし……た」
「! ありがとうシノン!」
「っわ……!?」
突然両手を握られ、咄嗟に慌てふためく。
「僕は与一にしか教えないつもり」
「真音ちゃん…」
与一はあはは…と苦笑する。
「じゃあ〜、さっそく《鬼呪装備》の訓練を始めますか?」
「おう!」
「訓練……」
シノア隊全員張り切る中、シノンだけはあまり気乗りする事が出来ないでいた。
それは、先程言われたグレンの囁きがずっと頭から離れずにいるからだ。
「真昼は、お前を守る為に命を落とした」
一体どういう意味なのだろうか?
シノンは再び空を見上げた……。