3つの特殊ノウリョク 1






「与一。何かいる?」
「ん〜、ちょっと待っててね」

そう真音に答えた後に与一は《月光韻》を構え、《ヨハネの四騎士》の姿を捉えた。

「どうする、殺るか?」
「ムダに戦闘して他の《ヨハネの四騎士》を呼び寄せても面倒だな」
「そうですよね……」

三葉の意見を聞いたシノンは頷き、シノアはもう少し街から離れたいと言ったとき、

「あ、まずい。一匹こっちに気づ…あれ、全員気付いちゃった。襲ってくるよ」
「ん、じゃあ今すぐ退治に…「ねぇ、皆。僕がやっちゃっていいなら、始末するけど」
『……!』

与一の発言に皆が目を見開かせ、驚く。
しかし、真音だけは……

「…頑張って、与一」
「うん、ありがとう真音ちゃん」

にこっと微笑み、一度深呼吸をした後……

「敵を撃て《月光韻》。みんなを守るよ」

まるで鳥のような鬼を具現化させてすぐに、《ヨハネの四騎士》を全て一掃した。

「やったよみんな!」
「…って、いまおまえ外に鬼出してなかったか!!?」
「へ? …あ、うん。出したけど」
「おいシノアどういうことだよ!!」
「す、凄いです与一様…。まだ、何も教えていないのに……」

与一の精神力の強さにシノンはポカン…と口を開ける。

「与一、お疲れ様」
「真音ちゃん! 上手く出来たよ…!」
「うん、信じてた。与一ならきっと大丈夫だって」
「そ、そんな事ないよ……」
「ある。与一、凄く早い段階で具現化が出来ていて凄い。僕のときなんて1年近く掛かってたし」
「そうなのっ!?」
「うん」

真音は何一つ表情を変えずに答える。

「凄く、カッコよかった」
「何か恥ずかしいなぁ……。でも、僕だけの力じゃないんだよ」
「…?」
「その…真音ちゃんの事を守りたいって想いも、力になったのかなって」
「っ……!」

徐々に真音の顔が紅く染まり上がる。

「よっ、与一…」
「! か、可愛いっ……」
「!?」

ポロリと出た与一の言葉にビクッと反応し、必死に首を横に振る。
そして、その一部始終をずっと無言で見ていたシノア隊の面々は……

「真音様が、表情豊かになってます……」
「何があったんだ? つか、最近よく一緒いるよな?アイツら」
「あはぁ〜、2人共分かってないですねぇ」
「「えっ…?」」

シノンと優一郎は同時に目を合わせる。

「つ〜ま〜り〜、これですよ」
「「……それ?」」

シノアは分かりやすく小指を立ててみるのだが、それでもまだ理解出来ず首を傾げる。

「本当に分かってないのか、おまえたち……」
「分かんねえよ、小指立てられても」
「そこのアホだけならまだ分かるが、双子妹まで知らないとはな……」
「オイ、今何つったテメェ?」
「ああ? 言ったまんまの意味だよ。耳腐ってんのかお前?」
「「…………」」

どちらからともなく、優一郎と君月は額を強くぶつけた。

「わあああっ!!?」

毎度恒例となっている2人の喧嘩を今だに流す事が出来ないシノンは慌てて止めに入る。

「シノン、いちいちそうやって身を呈していたらキリがないですよー」
「シノア、聞こえてないと思うぞ」

三葉が言っている通り、2人の間に何とか入ったシノンは必死に宥めている。
しかし、このままだと潰れてしまいそうだ。

「…シノンを潰したら、すぐに修業を中止しますよ」
「「!!?」」
「と、止まった……」

シノアの一言によって、優一郎と君月はピタッと直立した。

「全く、可愛い可愛い私の妹が必死に止めてるというのに…。ま、潰したらただじゃ置かないですけれどね」
『……』

「ハッハッハ〜!」と笑うシノアに言葉を無くすシノン達。
それから数分経ち、改めて修業に入ろうとしたとき……





「あ、皆さん。もうすぐ特別ゲストが来ますよ」
「特別ゲスト、ですか…?」
「はい、みっちゃんにとっては最高の……ね?」
「あ、あたし?」

唐突に名前を出された三葉はキョトンとしながら自分を指差す。
すると、タイミング良くその特別ゲストがやって来た。

「オーイ!来たぞーっ!」
「知人様…!」
「!? 知人、何でっ……!?」
「んお?シノアから聞いてねーのか?」
「…シノア」
「あはっ♪」

シノアははぐらかすようにお茶目に笑う。

「えっと、お前は確か…シノンたちの幼馴染だっけか?」
「よっ、優。この間はあんまり長く話せなかったもんな。まっ、今は戦場じゃねえし気楽に行こうぜ!」
「知人!!!」
「あいだだだだっ!?」

優一郎にそう言った途端に何故か三葉に腕をつねられ、そのまま説教を受けることになってしまった。

「この間もだけど、おまえら仲悪いのか?」
「いえ、恐らく照れ隠しかと……」
「照れ隠し…?」
「三葉、中々数の子に素直になれ「余計な事を言うなあああっ!!!」
「ああ"ぁあああっ!!?」

つねられている力がより強まり、断末魔のような悲鳴が上がる。

「…シノア姉様、一体どういう経緯なのか説明してください」
「もう少しだけ見てましょうよ〜」
「止めてきます」

話してもダメだ…と察したシノンはすぐさまに三葉を止め、ようやく本題に戻る。

「えーっとですね、今回の修業に知君が来たのにはとある"理由"があります」
「"理由"…?」
「はい。優さんと君月さんと与一さんに、改めて鬼呪装備の本当の使い方を教えようと思いまして」
「勿体ぶってねぇでさっさと言えよ」
「慌てない慌てない」

シノアは茶目っ気溢れる表情のままこう告げる。

「優さん・君月さんと同じ憑依タイプであるシノンと知君。与一さんと同じ具現化タイプであるまっちゃん。つまり…これがどういう事か分かりますよね?」
「……!」

誰よりも早く理解したシノンは恐る恐る手を挙げる。

「早いですねー。シノン、答えちゃってください」
「は、はい…。要するに、同じタイプ同士で模擬戦をしろ、という事ですよね?」
『!?』

シノアは「正解でーす♪」と彼女に拍手を送る。

「どーりで、グレン兄ちゃんが珍しく呼びかけて来たなと思ってた」
「うちの憑依タイプは、あの2人を除いてシノンだけしかいないですからねぇ」
「与一と戦うの、やだ」
「まぁまぁまっちゃん。ここは人助けだと思って」

真音は納得の行かない表情を見せ、「むーっ…」と口を尖らせる。

「という事で、与一さんは必然的にまっちゃんと戦う事になります」
「そ、そうなんですか……」
「…与一、ごめん」

しゅん…となりながら与一に謝る。

「だっ大丈夫だよ! でも、真音ちゃんって近距離タイプなんじゃ…?」
「戦ってからのお楽しみですよ♪」
「……?」
「そして、優さんと君月さんの相手なのですが…」

優一郎はこの時、出来ればシノンと戦いたくないな…と思っていたのだが、

「優さんの相手はシノンに、君月さんの相手は知君になります」
「はぁ!?」
「え……」

こうして、それぞれの模擬戦が今始まろうとしていた……。

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