3つの特殊ノウリョク 3
「……」
「っ……」
ピクリとも動かず、息を潜める両者。
与一は《月光韻》を構え、真音は今だに《蜻蛉》を手に持たないまま大分時が経っていた。
「(真音ちゃん、もしかして《鬼呪装備》を出さないまま戦うつもりなのかな…)」
そう思うと何だか気が引けてくる。
やはり、自分が相手ではあまりにも不足していたのだろうか…と考えていると、
「…与一」
「!? な、何……?」
呼びかけられたのだが、「そのままで良い」と言われすぐに体勢を保つ。
「あのね、これから…僕の"本当の得意武器"を出すから」
「え、今まで出していたのって……?」
「クナイとか手裏剣とかを出してたのは、ご先祖様が忍者の学校に行ってたから」
「えっ!? それじゃ、真音ちゃんは忍者の…」
「違う」
真音は首を横に振る。
「教育の一環として行っていたけど、忍者にはならなかった」
「そうなんだ……?」
「ん。で、今から出すのがご先祖様の本当の職業の武器になる」
そう言った後、右腕を広げるように上げ…
「出て来い、《蜻蛉》」
「! 銃…?」
姿を現したのは、歴史の教科書に出てきそうな長い銃だった。
しかし、外国にあるそれとは少し形状が違う。
「これは火縄銃って言って、室町時代ではよく使われていた銃だよ」
「室町……!?」
「ご先祖様はこれを使って戦ってたんだ」
カチャ…と構えた時、与一は反射的に息を飲んだ。
「本来なら、火種がないと使えない。だけど、僕のはそれが無くても戦える。実際にやってみるね」
「っ…!?」
真音の目付きが真剣なものに変わった。
「与一、上手く避けて」
「うっ上手くって…」
「なるべく、外すように努力する」
「えぇえっ!?」
唐突の事に狼狽える与一。
しかし、真音はそのまま火縄銃に全ての神経を集中させ……
「行くよ。撃ち抜け、"幻影弾(ファントム・バレット)"!!!」
「わわっ…!?」
バァンッ!! と銃声音が鳴ったと同時に鬼が狼として具現化し、与一に目掛けて走る。
それに気付いた与一は辛うじて避け、真後ろにあるビルから大きな爆発音と地響きがした。
「……」
初めて見る真音の真の力に圧倒され、口が開いたまま塞がらない。
「与一、大丈夫だった?」
「えっ!? う、うん。何とか…」
一瞬答えに迷ったのだが、笑顔を見せると真音は安堵した表情を浮かべる。
「さっきのが、真音ちゃんの本気…」
「ん、そうだよ」
「新宿では一度も出してなかったはずだけど……」
そう問い詰めると、今度は顔を俯かせた。
「師匠に止められてた」
「師匠…?」
「ん。僕よりも銃の扱いが上手くて、帝鬼軍の少将をやってる」
「そうなんだ……!」
「どんな人だろうな…」と思ったが、すぐに肝心のことを思い出した。
「でも、どうして止められていたの?」
「与一達に合わせろって」
「僕達に…?」
「話すと長くなるけど、要訳するとそうなる」
「…ごめんね。何か……」
「大丈夫、今日やっと許可が降りたし。それに……」
「それに…?」
顔を上げた後、真音はまっすぐ与一を見つめながらこう言った。
「与一の方が、強くなるから」
「え、…えぇっ!?」
与一は目を丸くさせたと思ったら、真音のその言葉を頭の中で繰り返し仰天する。
「そっ、そんなことないよ!? だって、やっと具現化が出来るようになったばかりで…」
「でも、僕よりも早くそれが出来てた。だから、きっと今よりも強くなれる」
「そう、なんだ……」
与一の問い掛けに「うん」と頷く。
「僕も頑張る」
「あ、あはは…」
先程の凄い技を見た後のその言葉に、思わず苦笑いする。
「という事で、これで終了」
「終了…? まだ、ちゃんと戦ってないはずだけど……」
「今回やってるのは同じタイプの《鬼呪装備》の扱い方を見せる為の模擬戦だから。それに、好きな時に終わらせても良いってシノアが言ってた」
「な、成る程…」
納得の頷きをすると真音が右手を差し伸べ、
「お疲れ様」
「…うん、ありがとうございました」
2人は握手を交わす。
「数の子と君玉子も終わったみたい」
「(知人くんと君月くんのこと…だよね?)」
与一は何故真音は自分の事を名前で呼んでくれるのだろうか…という前々からの疑問がふと浮かんだが、一旦心の中にしまい込んだ。
「シノノンと優二は、まだ終わってないみたいだけど…?」
キョロキョロとシノンと優一郎を探していた。そのとき!
ガギィッ…ン!!
『!!』
遠くから金属音が聞こえ、視線を向けた先には憑依化しているシノンと優一郎が互いの武器を激しくぶつけ合っていた……。