3つの特殊ノウリョク 5






「と、いう事で…どうでしたか? 模擬戦は」

「「……」」
「えっと……。やっぱり、真音ちゃんには敵わないなって改めて思った…かな」

優一郎と君月はシノアの問い掛けに対し無言でいる。
与一だけは真音の顔をチラッと見た後、頬をかきながら答えた。

「なるほどなるほど〜。要は、そこの3人は本当に容赦無くやったんですね」
「えっ…!?」
「ん? おまえがそうやれつったじゃんか?」
「うん」
「いや〜、シノンとまっちゃんは流石に手加減するかなーと思ってはいたんですけれどね?」
「うっ……」

シノアの痛い所を突く発言が胸に刺さったシノンは、あっという間に縮こまる。

「いや、別に手加減はしなくて良いけどさ…」
「優様……?」

そのまま目を合わせる優一郎とシノン。すると、

「ヒューヒュー、あっついですね〜♪」
「!? シノア姉様っ!!」

茶化されたシノンはすぐにシノアを追いかけるが、後もうちょっとという所で「あっはは〜」とかわされる。
そんな柊双子の様子にやれやれ…と一部の面々が思っている中、優一郎だけは……

「……」

シノンを見つめたまま、先程の模擬戦の事を思い出していた。

「一体、あれは何だったんだ…?」

唯一分かったことは、憑依タイプは人によって少しだけ変化するという事だ。

「何て言うんだろな。シノンだったからなのか? グレンの時よりも攻撃しづらかったというか……」

「うーん…」と考えている間に、シノンはようやくシノアの手首を捉えた。

「はぁ、はぁ…。本当に、貴女という人は…っ…」
「さーて、シノン弄りも終えた所ですし」
「私弄りって……」

一気に疲れが出たシノンはガクッと膝をつく。

「シノン、大変だな……」
「はい…」

三葉に同情の言葉をかけられ、乾いた笑いをするしかない。

「ではでは、ここからが本番ですよ。シノン、優さんと君月さんに説明してあげてください」
「あ、はい…。分かりました」

声をかけられたシノンは優一郎と君月に憑依のやり方について説明する。
しかし、その説明を終えた矢先に優一郎と君月はどちらが先にやるかで揉め始め、

「あのっ、お二人共! 同時にやってはダメです…!?」
「? どうしてだ?」
「同時にやって、どっちも鬼になって暴走したら手が付けられないから」

真音がシノンの説明の補足をしたそのとき、

「俺が先〜!」
「! 優様っ……!」

呼び止めようとしたのだが、既に優一郎は剣に血を吸わせ……

「う…あ」
「始まった!!! 暴走する場合はすぐ来るぞ!! 戦闘準備!!」
「え、え…!?」
「ちっ! 卑怯だぞ優!!」
「さ〜て〜、どうなるでしょうか〜」
「一撃必殺するしかない」
「相変わらず容赦ねーなぁ」
「っ、優様……」

優一郎の様子の変化に気付いた面々は全員鬼呪装備を構え、戦闘態勢を取ったが…優一郎はすぐに倒れた。
何が起きたんだ…? と目を見開かせる君月と与一に、シノアは冷静に現在の状況とこれから起こる事を説明した。
更に、シノンの補足も入り……

「鬼と融合出来るまで、約二十時間はかかるかと……」
「二十時間!!?」

君月は思わず声を上げた。

「まっ、暴走する危険があっからなー」
「だから、その間は仲間のあたしたちがこいつを見守るんだ」

そう言った知人と三葉は倒れた優一郎の近くに座り込む。
そして、いざ全員で彼の事を見守ろうとしたときに君月が、

「おまえら、さっきから仲間仲間言ってるが…正直、俺はその言葉を信用できてない」
「君月様…」
「……なんの話だ?」
「俺と与一は、軍の上層部−−−柊の奴らに尋問を受けた」
「っ…!?」

君月の話にシノンは歯を食いしばる。
シノンもかつて、柊−−−特に、一番上の兄である柊 暮人に尋問を受けた身だ。
当時を思い出すだけで嫌悪感が蘇る。

「で、質問だ。俺たちは本当に仲間なのか?もしそうなら、俺はこいつが目を覚ましたら事実を話す」
「…オレも、おまえらと同じ隊じゃねーけどそれは聞いてみたいかもなぁ」
「…どういう事だ、知人」

キッと睨んでみるが、いつもにっかりと笑っている知人は…真剣な表情を浮かばせている。

「あんまり口答えしたくねーけどさ、…グレン兄ちゃんみたく優を利用しようってんなら、うちの隊で引き取るから」
「それは違いますっ…!!」
「シノン……」
「ここは、私に話させてください…」

シノアが頷いたのを確認したシノンは改めて知人の方に顔を向け、一回深呼吸をした後……

「私は、私達は皆様と仲間であると信じていたいです。だからこそ、この修業を無事に終えることが出来たら優様にあの時のことを全てお話します。そう、シノア姉様と約束しましたから……」
「それでも信用ならない、って…言ったら?」
「…私とミカ様との関係も、お話します」
「! 確か…」
「優の家族、だったよな?」

シノンは「はい」と頷く。

「…まだ腑に落ちねぇが、仕方ねえな」
「ありがとうございます、君月様」
「シノンさん…僕たち、仲間なんだよね……?」
「勿論です、与一様」
「シノノンの言うこと、信じよ…?」
「うん……。そうだね」
「では、無事に意見がまとまったので今度こそ見守りましょうか?」
「はい。…優様、頑張ってください……」

そっと優一郎の手を取ったシノンは、彼の修業が無事に終わる事を静かに願う……。

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