月鬼のゴウレイ 1






〜東京、名古屋間を繋ぐ
東名高速道路〜






「空が青いなぁ…。こんな天気がいいと、世界が滅亡してるなんてとても思えないな」
「あは、いまさらそれ言います?」
「……」

名古屋に向かう道中でワイワイと賑わうシノア隊。
しかし、シノンだけはぼぅ…と空を見上げ、

「♪♪〜♪……」

気分が良いのか、大好きな子守唄を小さく口ずさむ。と、

「おっ、それこの前聴いたのと同じか?」
「♪〜…ふぇっ!?」

聴こえてないだろうと思っていた矢先の問い掛けに肩がビクッと動いた。

「おやおや〜? この前って何ですかぁシノン?」
「シ、シノア姉様…。顔、近いですっ……」
「さぁさぁ、大人しく白状しなさーいっ!」
「きゃあああっ!?」

突然コチョコチョ攻撃され、くすぐったさから声を上げる。

「オイうるさいぞ双子共、運転の妨げだ」
「諦めろ君月。シノアとシノンはいつもあんな感じだ」
「み、三葉様〜! シノア姉様を、止め…ひにゃっ!!」
「優さーん、シノンちゃんの弱点は腰なんですよ〜」
「変な事教えな、ひぇえええっ!?」
「……」

優一郎はシノンが今どういう状況になってるのか凄く気になっているが、見たらダメなんだろうなと躊躇い前を向いたままでいる。

「シノア、手伝う」
「流石まっちゃん、分かってますね〜♪」
「やめ、やめてぇええっ!」

真音も加わった事により倍くすぐったさが増し、最早悲鳴に近い笑い声を上げるシノン。と、そのとき、

「あはは…あ、ヨハネの四騎士だ」

与一が少し先にいるヨハネの四騎士を発見した。

「僕、処理しよっか?」
「火縄銃吹かそうか?」
「真音。その発言かなり物騒だぞ」
「そうなんだ?」

君月の言葉に不思議そうに首を傾げる。

「…まぁ、たぶんよけれる」
「だめだ、急ブレーキや急カーブは禁止する。軍用車は貴重だからな」
「なら…」
「やるよ」
「僕も「お前は何もするな」
「与一、君玉子がさっきから文句しか言わない」
「あ、あははは……」

与一がそれに対し苦笑いでしか返せずにいると、優一郎が「俺がやるよ」と言ってきた。
その理由は……

「君月がいじめっ子過ぎて暇だから!!」
「うるせぇなぁ、やるなら早くやれ」
「優様…」

まるでだだっ子のような優一郎は車から飛び出してすぐにヨハネの四騎士を斬りつけるが、背後にも現れた。

「! 優様っ!!」

真っ先に気付いたシノンも飛び出し、

「はぁあああっ!!」

素早い槍攻撃で真っ二つにした。

「! サンキュー、シノン!」
「どういたしましてです…!」

これで全部倒せたと思った2人はそのまま車に着地しようとする…が。

「君月さん敵です!! 右によけてください!!」
「ん?」
「ふぁっ…!!?」

君月がハンドルを回した結果、車ではなく道路に着地した。

「へ!? ちょっ、敵!?」
「アクセル全開だ!!」
「じゃあ20キロ先の海老名サービスエリアでまた会いましょー」
『……』

残されたシノンと優一郎は目を瞬かせながら立ち尽くし、

「はああああ!!? ふざっけんな!!」
「……。い、いじめだ…」

優一郎はキレ出し、シノンは膝から落ちるように両手を地面に付け落ち込む。
しかし、どうやっても状況は変わるはずなんてなかった。

「…………行くか、シノン…」
「はい……」

これ以上何してみようもないと諦めた2人はとりあえず歩く。
だが、無言のままなのもアレなのでとりあえず会話を交わす。

「なぁシノン。シノアって昔からあんなだったのか?」
「はい……。昔から、あんなでした…」

昔を思い出しているシノンは嫌なことも思い出したのかむぅ…と頬を膨らまし、眉も寄せている。
それを聞いた優一郎は「やっぱりな…」と納得の頷きをする。

「私だけならまだ我慢のしようがありましたけれど、優様にまで迷惑を掛けるなんて本っ当にシノア姉様は……!」
「何か、おまえが怒ってんのを見るのってすげぇ久々な気がする…」

優一郎はシノンと初めて会ったときを思い出しながらまぁまぁと彼女の肩を軽く叩く。

「え、そうなのですか…?」
「ああ、初めて会ったとき以来だと思うけど?」
「あの時は本当にすみませんでした……」
「いや、俺も悪かった所があったっつーか…」
『…プッ!』

目が合った瞬間、思わず吹き出した。

「何だか私達、似た者同士ですね……!」
「だな…!」
「優様のことを誤解してしまい、本当に申し訳なかったです……」
「気にすんなよ。グレンとシノアのせいだし」
「安易に話を信じ込んでしまった私にも非がありますけれどね…」

シノンは困ったような笑みを浮かべる。

「あー、前にシノアが言ってたな。「シノンは純粋過ぎて何もかも信じてしまうからからかい甲斐がある」だとか」
「…………」

その言葉を言ったときのシノアの表情が簡単に思い浮かび、目をギョロッと開かせる。

「…シノア姉様の事なんて、もう知りません」
「……」

瞳孔を開いたまま再び頬を膨らませるシノンに、優一郎は若干口角を引きつらせる。
これ以上は余計に機嫌を悪くさせるだけだと察し、

「そっそういや! この前の弁当また食いてえなぁー!」
「ふぇ…?」

唐突に話題が切り替わり、シノンは「どういうことなのか?」とキョトンとした表情を見せてくるが、

「…あ。えっ、と……。いつでも、作りますよ!」

ようやく、いつものふんわりとした笑みが見れた。

「今度のも、優様のお好きな物を作りますね」
「おぉ〜っ! ていうか、シノンの作った物は何食っても美味いからなー」
「きょ、恐縮です……」

そんな感じでやっと話に華が咲き始めたとき、

「…優様」
「ん?」
「………」
「シノン?」

シノンの様子に少し違和感を感じ、どうしたのかと訊ねると……

「あ、のっ…。何でも、ないです………」
「そうなのか?」
「はい…」

優一郎が疑問を抱きながら前に向き直したのを確認してから頬に両手を添える。

「やっぱり、分からない……」

鼓動が早くなり、連動するかのように頬に熱が集まってくることが増えてきた。
…しかも、そうなっているときには必ず優一郎と一緒にいる。

「っ……」

結局答えを見出せぬまま、その10分後に何とかシノア達と合流したのだった……。

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