月鬼のゴウレイ 3
〜海老名サービスエリア〜
「は〜、たくっ。朝早くは苦手だっつーのに……」
そう言いながらわしわしと自分の頭を掻く聖璃。
ついさっきまでグレン達といたのだがまだ眠気が無くならない為、顔を洗うべくトイレへ向かっている。
「にしても、襲撃するっていうのに妙に良い天気ね……」
ふと空を見てみると、雲が所々に散りばめられているが青空の方が多く見える。
「…ふぅ」
そんな空に若干の皮肉を感じ、一息つくと……
「あれっ、聖璃"センセー"?」
「ん、"センセー"? って、もしかして……」
聞き覚えある声にピクッと反応し、振り返ってみる。
「あ! やっぱりセンセーだ!」
「利香、久しぶりね」
以前教育係として指導していた鳴海隊の1人・井上 利香と数ヶ月ぶりに再会を果たした。
「真琴ー! 皆ー! 聖璃センセーがいるわよーっ!」
「ちょっ、利香。別にマコ達に伝えなくても…「ご挨拶が遅れてしまい、申し訳ありません! 聖璃教官!!」
鳴海隊の隊長・鳴海 真琴が真っ先に聖璃の元に来たと思ったら、間を置くことなく土下座をしてきた。
「早っ!? ってか土下座すんなマコ!! それだとあたしが何かしたみたいじゃない!?」
「アイツ、昔っから聖璃先生にビビってたもんなー」
「あはは、確かに……」
「タロ、弥生! マコの頭を上げて!!」
聖璃は後から来た鍵山 太郎と円藤 弥生に鳴海を何とかするよう助けを求める。と、
「真琴、聖璃さんが困らせちゃダメだろ」
まだ土下座態勢をしている鳴海に軽くチョップしたのは彼の幼馴染で聖璃の恋人である岩崎 秀作だ。
「! 秀作……」
「お久しぶりです、聖璃さん。すみません、真琴が…」
「秀作、何故チョップをした……?」
「聖璃さんがさっきからずっと頭上げろって言ってたよ?」
「仕方ないだろ、反射神経がそうさせているのだから…」
「らしいですよ、聖璃さん」
「マコ、次から土下座禁止な」
聖璃はビシッと鳴海に告げる。
「秀作。ありがとね」
「いえ、全然構いませんよ」
久々に秀作と話せるのが嬉しいのか、いつも眉間にしわを寄せがちな聖璃が珍しく微笑んでいる。
「と、いうことで……」
「? へっ……?」
「って、どこ行くんだ秀作!? さりげなく聖璃教官の肩を抱いて!」
「少し、聖璃さんと2人きりで話してくるね」
「!? ちょっ…!」
気付いたときにはあっという間に鳴海達と距離が離れていた。
「はぁ〜っ…。何、何を話したいワケなの?」
「いえ、特にないです」
「……はっ?」
秀作の言葉に、耳を疑う。
「何もないんならさっさとマコ達の所に戻るわよ」
「……」
「…何よ?」
「……すみません、もうしばらくここにいさせてください」
「え?」
よくよくと秀作の顔を見ると、ほんの少し頬が赤くなっているではないか。
「…なるほど、そういうことか……」
つられたのか、聖璃も頬に熱を感じる。
「久々に会えたのが嬉しいせいなのか、真琴達に見られたくなかったというか……」
「そりゃあ、あたしもそーだけどさ…」
「聖璃さん」
「な、何……?」
「もし一緒になることがあったら、必ず守ります」
「…!? ば、馬鹿言うんじゃないわよ! 先に自分の身を守れるようになってから物を言いなさい!!」
分かりやすく狼狽える聖璃に秀作は思わず吹き出した。
「聖璃さんのそういう所、好きです」
「あっ、アホ…!!」
思い切り顔を背けている聖璃の耳を見ると、真っ赤になっていた。
一方、建物の中を探検している知人達皆本隊はというと……
「うぉ〜っ、これ懐かしーな!」
目を輝かせながら手に取ったのは有名なキャラクターのご当地限定ハンカチだ。
しかも、崩壊した後は大抵汚れている物が多いが今回手にしたのは珍しく保存状態が良い。
「鈴〜! これ、おまえが好きなモンだったよな?」
「え? わ〜っ! 可愛いーっ!」
「ぐぇっ!?」
知人に呼ばれ小走りする鈴花だが、ハンカチに目が行った瞬間猛スピードで駆け寄り、思い切り知人を突き飛ばした。
「あ、ごめん知君……」
「気にしなくていい…ぞ」
相当な勢いで飛ばされたが、軽く頭を打ち付けた程度で済んでいる。
「鈴花、それは商品だから勝手に取らないように」
「うっ…。は〜い、お兄ちゃん……」
しょんぼりとした鈴花はハンカチを元の場所に戻す。
「綺里。そっちはどうだった?」
「ううん、特になかったよ」
清吾はメンバーの1人である春野 綺里が反対側から戻って来たのを確認して声を掛け、それに気付いた綺里は何もなかったと首を横に振る。
「そうか。…愛紗、そこに隠れるのは危険だから早く出てこい」
「う……」
気付かれていたのか…と恐る恐る出てきたのは、皆本隊のメンバーで聖璃の妹である九鬼 愛紗だ。
「すげぇなあ愛紗。流石幼少期からかくれんぼの名人って呼ばれてただけあんな」
「知人、おまえの幼馴染なんだろう。そんな呑気なことを言ってないで今すぐ呼んでこい」
「いやいやムリだって! 男が苦手な愛紗に近付くなんて自殺行為になっから!?」
「男、嫌……」
そう呟きながらまた隠れてしまう愛紗。
そう、彼女は重度の男性恐怖症なのだ。
「愛ちゃん、私と一緒に行こー?」
「鈴花ちゃん…」
差し伸べてくれた鈴花の手を見て安心感を抱いたのか、手を置いてすぐに鈴花の後ろに隠れる。
「鈴花、でかした」
「それにしても、愛紗ちゃんって本当に男の子がダメなんだねー。いつからダメだったの?」
「気が付いたら、だったかな? いっつもシノンの後ろに引っ付いてたし」
「…知人」
「ん? どした?」
「シノンちゃん、来るの……?」
「おう、そりゃあ来るだろ?」
「…!」
愛紗の表情がパアァッ! と明るくなった。
そんな様子を見た清吾は妙なことを察し、
「…知人」
「どうした清吾?」
「愛紗は、シノン軍曹に…。いや、何でもない」
「…?」
知人に問い掛けようとしたが恐らく彼には理解できないだろうなと思い、シノン本人と会うまで様子を見ることにした。
そんな感じで、あっという間に集合時間になり……。