試すゲンカク 3






「っ!? 優様…!」
「…いったい、これはなんのおふざけでしょうか。グレン中佐」

グレンは「おまえへのお仕置きだ」と答え、続けてシノア自身のミスでチームの人間が簡単に死ぬことを教えてやっていると言う。

「へぇ、私の…。しかし、こんなことされなくても「いや、おまえはわかってないね。おまえは今まで大切な人間を作ったことがない。だから、誰かを失う恐怖を知らない」
「シノア姉様……」

シノンが段々と動揺しているシノアを心配しているとき、

「その点では、シノンの方がそれを受け入れていると思うがな」
「! 私…?」

突然名指しをされ、グレンの方へ視線を向ける。

「シノン、が…?」
「ああ。誰よりも先に前線に立ち、仲間の為に沢山涙を流したのはおまえ以外いないからな」
「あっ……」

何が言いたいのかすぐに把握し、ふと記憶を辿っていく。
10才から帝鬼軍に入り、様々な隊に配属されてはそのチームの人間の死を沢山目撃した。
その度に、誰にも見られぬ所で涙を流し続けていた。

「グレン中佐、知っていたのですね……」
「まぁな。んじゃ、話が逸れちまったから戻るが…おまえらはもうチームワークの訓練はしたか? 危機意識は持ってるか? いまここに圧倒的な脅威が現れたらどうする? 切り抜けられるか?」

グレンの問い掛けにシノアは答えに迷い言葉を濁す。すると、

「よし、試験だ。こっちは俺、十条 美十、九鬼 聖璃、柊 深夜の四人だけで相手してやる。四対七、シノアがちゃんとチームワークの訓練してれば俺たちに勝てるはずだ」
「はあああっ!? 一瀬君! 何であたしがシノンお嬢様と戦わなくちゃいけないワケなの!?」

横でワーワーと文句を言う聖璃を放置しながら話を進めるグレン。
強制的にやることが分かったシノアは狼狽えながらシノア隊全員に一旦外に出ると告げる。
それに対し皆が同じように戸惑いつつも肯定の返事を返したところで、優一郎が戻って来た。





「優様! お怪我はありませんか…?」
「ああ、この通りピンピンしてっけど?」
「良かったです……」

腕を上下に動かす優一郎にシノンはホッと安堵する。

「ねぇ、師匠達と何話してたの?」
「ん? 師匠…?」
「ん、深夜少将は僕の師匠だよ」
「「「えっ!?」」」

真音の発言に優一郎・与一・君月は目を大きく開かせる。

「あれ、言ってなかったっけ?」
「初耳だよ!!」
「あの人が、真音ちゃんの師匠……」
「うん。僕と同じ『黒鬼』装備だよ」
「『黒鬼』だぁっ!?」
「皆、何でそんなに驚くの?」
「「驚かねぇわけないだろっ!!?」」
「あ、あはは……」

とても重要な事なのにしれっと話す真音に優一郎と君月はツッコみ、与一は乾いた笑いをする。

「どうりで妙に強いなって思ったわけだよ……」
「え、もしかして…。深夜兄様と?」
「まぁ成り行きでな…」

優一郎はこの間の尋問で深夜と戦ったときの詳細を話す。

「では…柊 深夜少将への対処は同じ遠距離の与一さんとまっちゃん、お願いします」
「えぇっ!?」
「え……」

与一はビクッと驚き、真音は口をポカンと開ける。

「シノア、僕…師匠に勝てる確信持てない」
「与一さんと一緒でも、ですか?」
「…思いたくない、けど」

複雑な気持ちを抱きながら頷くと、

「でっ、出来る限り頑張ります……」
「…与一が、頑張るのなら……」

与一だけに重荷を背負わせる訳にはいかないと思い、引き受けることにした。

「だが、『黒鬼』は柊少将だけではないぞ」
「はい。…聖璃様も、『黒鬼』装備になります」

そう話すシノンの表情は真剣そのものだ。

「聖璃って、あの馬鹿力姉ちゃんか…」

優一郎は先程まで締められていた首元に手を添える。

「いっ、一応そうではありますね……」
「聖璃パイセン、何かしたんだ?」
「思いっきりがんじがらめで首しめられた」
「えぇっ!? 何故そのような事に!?」
「……」

シノンの事で、なんて言う事が出来ず視線を逸らす。

「あ、後で聖璃様に詳細を…「いや、聞かなくていいから」
「えっ、え……?」

唐突に両肩を掴まれたシノンはパチパチと目を開け閉じする。

「んなことよりも、あの姉ちゃんは何使うんだ?」
「え、と…。聖璃様の鬼呪装備の形状はハンマーで、具現化タイプになります」

優一郎に説明を促されたことにより、そのまま皆に聖璃の鬼呪装備について全て説明する。
鬼呪装備の名前やその使い方、そして……

「最も厄介なのは、特殊能力の"神羅判象"(しんらばんしょう)です。発動してしまったそのときが確実に私達の敗北になるかと……」
「確か、無数の雷を引き起こす能力だったはずだが…」
「そうです。例え晴天であっても、ほんの少しの風だけで雨雲を作り出せます」

その解説に優一郎達は固唾を呑む。

「九鬼大佐の能力が発動する前に、何とか食い止めねばなりませんね……」
「…シノア姉様、聖璃様の相手は私が請け負います」
「! シノン、正気ですか…?」

真剣な表情のまま肯定の頷きをする。

「聖璃様の鬼呪装備はパワーがある反面、動きが鈍くなる傾向があるので私が適任になるかと」
「確かに、シノンの機敏さはこの中でダントツですが……」
「それなら、僕も聖璃パイセンと戦う」
「いえ、真音様は与一様と一緒に深夜兄様を食い止めてください」
「…分かった」

不安そうに眉を下げるが、シノンを信じることにした。
その後に美十、そしてグレンへの対策も伝達し…十数秒後にグレン達が出てきた。

「やるぞ〜ガキども。いいか?」

グレンの一言を聞いてすぐに全員鬼呪装備を構える。

「シノン」
「! 優様……?」
「何かあったら絶対叫べよ? 必ず助けに行くから」
「…はい、ありがとうございます」

その言葉に安心感を抱き、ふわりと微笑む。

「与一。全力で師匠と戦おう」
「うん、頑張ろう……!」

真音の言葉に笑顔で答えた。次の瞬間!

「はーい、行って白虎丸」
「! っ…!!」
「うわっ!!?」

深夜の先制攻撃をギリギリで避けたが、あっという間に陣形が崩れてしまった。
グレン・美十・聖璃はそれを見逃すことなく前に出る。

「はぁ…。これが終わったら一瀬君をぶっ飛ば「たあぁあああっ!!!」
「すっと…!」

シノンの出方を既に把握していた聖璃は《大鎚地》で攻撃を受け止める。

「何? シノンお嬢様があたしの相手…? いくら何でも冗談キツ過ぎじゃないですか……?」
「貴女は、私が全力で倒します!!!」

こうして、シノンと聖璃の一騎討ちが幕を開けた……。

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