呪術のモウシゴ 1

Side:Dream heroine 1





−−−ギィンッ!

−−−ガギィッ…ン!!





四方で金属がぶつかり合う音が沢山聞こえる。
私達シノア隊はグレン隊と模擬戦という名目で戦っている。
…そして今、私の目の前にいるのは−−−。





「うっ、るぁ!!」
「くっ…!!」

やはり、聖璃様の力は私の力を遥かに超えていた。
攻撃を受け止めるだけなのに段々と槍を持っている腕が痺れていく。

「シノンお嬢様! 悪いことは言わないので早めに手を引いてくださいませんか、ねっ!!」
「っ……!」

徐々に重みを増すその一振りが体力と持久力を地道に奪っている。
本当に、昔から容赦が無いお方ですね……。
でも、私だって引くわけには行かない。

「イヤ、ですっ!」
「!」

出来るだけグレン中佐や美十様、深夜兄様から距離を取らなければならない。
ひたすらジグザグに走っては、槍を振り下ろすという繰り返しを何回もしている。
けれど、聖璃様が焦っている様子が全く伺えない。
それどころか……

「お嬢様を傷付ける方が、こっちとしては凄く面倒いんですがねぇっ!!」

余計に聖璃様の闘争心に火を付けてしまったのだろうか。
その目はまるで、幾多の死線をくぐり抜けた夜叉そのものだ。

「っ、強…いっ」

実戦経験の差を改めて痛感させられる。
このままの状態が続くのは流石に厳しくなる。
他の皆様も必死に応戦をしていて、とても助けを呼べる状況ではない……。

「(真音様は…!)」

ふと、真音様がどこにいらしているのか目を泳がせると…深夜兄様と素早い銃撃戦を繰り広げていた。





−−−バンッ…!

「真音ちゃん、少し腕が鈍ったんじゃない?」
「禁止令が、長引いてたから…!」

−−−バンッ!バンッ…!

「おっと! 危ない危ない、ほんの少し反応が遅かったら当たってたところだったよ」
「師匠、嘘は駄目。本気の勝負だから」
「分かってるよ、愛弟子とこうやって戦うなんてゆめゆめ思わなかったけどねぇ」
「それは、僕も同じ」





会話を交わしているというのに、油断せず撃ち合いを繰り返す。
あれがお二方の実力……。

「よそ見したら、足元掬われますよっ!!」
「!? っあ……!!」

言葉通り、足首に《大鎚地》の柄が引っかかったことでバランスを崩してしまい、膝と手を地面に付けてしまった。

「! シノンッ「どこ見てんだ、優!!」
「っ!ちきしょうっ……!!」

「さぁシノンお嬢様。これで…チェックメイトになりますよ?」
「そん、なっ……」

このままだと聖璃様が他の方の所に行ってしまう。
それでは、ここまで足止めをしていた意味が無くなってしまう。
何か、良い手立ては……

「折角なんで、特殊能力でトドメを…っ!?」
「ちょっ、聖璃!! 邪魔をしないでくださいますかっ!?」
「それはこっちのセリフよ馬鹿美十!!」

少しだけ運に恵まれたのか、聖璃様と美十様が背中合わせでぶつかった。
…あっ。
たった今、勝てる手立てが浮かんだのかもしれない……。

「…イチか、バチかっ!!」
「! 何っ……!?」

聖璃様が動揺している内に呪を唱え、

「縛ッ!!!」
「なっ…!!? っ、クッソ!!」

久方振りの縛が何とか効いて良かった……。
でも、ここからが私の本領発揮です!!

「〜〜……」

本来なら30秒程掛かる呪なのですが、縛の効果が10秒しか持たないので5秒で全て唱え終え……

「急急、如律令っ!!!」
「…!!!」

的確に、そして確実に聖璃様に命中した。

「今の、何だ…!?」
「あー、すっかり忘れてたな。シノンがトップクラスを誇る呪術使いだってのを……」

「……」
「…勝っ、た……」

一応手加減をしたつもりではありますが、ピクリとも動かない聖璃様の様子から勝利を確信出来た。

「後は、シノア姉様達の…っ!?」
「シノンちゃん、さっきの呪術凄く良かったよ。でも、後ろが完全にガラ空きになっているのに気付いてなかったみたいだね」
「深夜、兄様…。そん、なっ……」

不覚にも、深夜兄様が背後にいることに気付けなかった私はそのまま座り込む。

「ほら、見てごらん」
「っ……」

深夜兄様が指を差した先には、シノア隊の皆様が為す術を見い出せず立ち尽くしていた。

「私達の、負け……」

それは、私の力量不足を思い知る戒めでもあった。
その後のグレン中佐達の言葉が一切耳に届かない。

「私、っ……」

悔しい気持ちをどこにぶつければ良いのか分からなくなり、歯を強く食いしばるしかなかった。
シノア姉様のお役に立つことが出来なかった……。
悔しい、悲しい…。
そんな思いが、ムクムクと込み上げる。

「っ、ぐず…」

泣いてしまったらダメなのに、涙が止まらない。
やっと耳に入ってきたのは沢山の方々のザワついた声やシノア姉様達の声、そして……

「シノン、大丈夫か…?」
「……」

顔を上げてすぐに、優様の顔があった。

「…ゆうっ、さまあああっ……!!」
「!? な、なっ…!?」

顔を見た瞬間、抑えていたものが一気に弾けたように優様に泣きついてしまった。

「いや、あ…えっ」
「うっ、ひっく……!!」
「シノノンが」
「泣いてる、だと……」
「グレン、少しやり過ぎたんじゃない?」
「うるせぇ。おまえも共犯者だろうが」
「(あたし、今度こそ処刑なのか…)」

涙が乾くまで、優様の胸元に顔をうずめた……。

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