戦場のゲンジツ 1






「んで、いつまでここで待機なんだっけ?」
「14時15分には貴族を殺し、ここに集合できる部隊は集合するはずですが…」
「いま何分?」
「13分です」
「後2分なのかぁ」

知人がシノアが告げた時刻に反応したとき、向こう側から他の隊の面々がやって来た。
1番前を歩いているのは相原隊隊長の相原 あい子だ。

「一瀬中佐は?」
「まだです」
「15分まで待機」
「……」

彼女達の様子が妙に気になった君月はシノアにこう聞いた。

「あいつら、七人しかいないが……」
「…死んだんだろう」
「えっ…!?」
「………」

シノンはゆっくりと目を閉じる。
戦場である以上、死者が出ないなんてことはあり得ないに等しい。
今していることは哀しい気持ちを抑える為に身に付けた術だ。
なので、密やかに心を落ち着かせていたのだが……

「シノン」
「! 優様…?」

優一郎がそっと肩に触れてから呼び掛けてきた。

「…大丈夫か?」
「え、あっ…はい。少し心を落ち着かせてました……」

続けて「優様、ありがとうございます…」と返すと優一郎は「ああ」と微笑みかける。
その間に鳴海と相原は会話を交わしていたが、

「ね、柊 シノア隊長」
「え!!? ここで私に振るんですか!!?」

鳴海に話を振られ、相原に凝視されているシノアは困惑する。
そんなとき、優一郎が「生きて戻ってよかった」と相原達に声をかけながら前に出た。

「……誰だ、この偉そうなガキは」
「新入りだよ。確か名前は〜、あ〜…」
「おまえこそ覚えてねーのかよ!!」
「(多分、優様にされたことのお返しなのでは…)」

シノンの読み通り、名前を忘れたフリをしていた鳴海は改めて優一郎を紹介する。

「そうか、じゃあ百夜 優一郎。…おまえの言葉に甘えて我々は少し休む、警戒を頼んだ」
「おう、俺らに任せとけ!」

優一郎の言葉の後に相原達は少し離れた場所へ移動を始める。と、

「あ、あの…。相原軍曹」
「? 君は…」
「柊 シノンと申します。相原軍曹と同じく軍曹を務めております」
「私に何か…?」
「すっすみません、急に呼び止めてしまって……。これ、よろしければ…」

ポーチの中からハンカチを取り出し、相原に差し出す。

「…感謝する。柊 シノン軍曹」

相原は少し頭を下げ、受け取ってから先に行った仲間達の元へ駆け出す。
シノンはそのまま彼女の姿が遠くなるまで見送る。

「…やっぱり、任務で仲間が死ぬんだな」
「そうだ。仲間は死ぬ、それが戦場だ」

優一郎の言葉に対し、三葉は自分にはその経験があると答えた。
すると、それを聞いた知人が三葉の近くまで行き…

「…!」
「……大丈夫。絶対オレが守るから」
「知人……」

握られている右手から彼のその言葉に対する思いを感じ取り、同じように握り返す。
そして、シノアが続けてこう言う。

「…ですから、日々を大切に。極力お互いの背中を守り合っていきましょう」

彼女の言葉に賛同の頷きをしたタイミングでグレン隊が戻って来たが、全員の姿がボロボロに見える。

「聖璃様! 一体何がっ…!?」
「シノンお嬢様…。コイツがその元凶です……」

聖璃は親指でグレンを指す。

「お姉ちゃん、随分傷だらけだね…」
「愛紗、余計な一言言うな&あたしが見てない間にシノンお嬢様に何かしでかしてないわよね?」
「うん、バッチリシノンちゃんを守ったよ」

グッ! と親指を立てる愛紗に、聖璃は「本当なのか?」という眼差しを向け、腕に抱き付かれているシノンは堪えられず口を引きつらせる。
そんな中、グレンは鳴海にシノア隊は役に立ったのかと問い掛け、鳴海は「新入りとは思えないくらい、よく動いてくれた」と評価した。

「へぇ…。そうなの、秀作?」
「はい、皆本隊も相変わらず良い連携だったと思います」

秀作が皆本隊の方に視線を向けると知人がブイピースをしていた。

「…あのアホ知人は?」
「百夜特別二等兵と共に、敵を追い込んでいましたよ」
「ふーん……」

他にも聞きたいことが山程あるが、とりあえず頷きながら彼らを見る。
すると、相原達の方を一瞥したグレンは相原に……

「…あい子、犠牲は八人か?」
「あ…す、すみません中佐!!! 仲間を失いました!!!」
「っ、相原軍曹……」

彼女の涙を見たシノンも、耐えたはずなのだがまた気持ちが込み上げてくる。
グレンもまた相原の気持ちを汲み取り、「よく生きて戻った」と告げる。

「これで貴族は三匹殺せた、残りは五匹だ。他の部隊は?」

問い掛けられた鳴海は「まだ戻っていない」と答える。

「…そうか。だが他の部隊が戻る前に次の任務を始める」
「次の、任務……?」
「さっき報告があった。名古屋市役所にいる吸血鬼の貴族…クローリー・ユースフォード、チェス・ベル、ホーン・スクルドを襲った部隊が壊滅。20人が人質に取られたそうだ」
『!!?』
「人質…!!?」

全員驚きを隠せず、徐々にどよめいていく……。

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