戦場のゲンジツ 2






「名古屋市役所にいる吸血鬼の貴族…クローリー・ユースフォード、チェス・ベル、ホーン・スクルドを襲った部隊が壊滅。20人が人質に取られたそうだ」
『!!?』
「人質…!!?」

グレンの言葉に全員戦慄する。

「だが、今後の作戦にはまだ多くの人員が必要だ。だから、俺たちでクローリー・ユースフォードを潰し仲間たちを救う。敵は待ち伏せしているだろう、より危険度の高い任務だ。泣いてる暇はない、気を引き締めろ」
「…………」

聖璃は静聴しながら思う。
先程もグレンに伝えたが、これは本気の罠だ。
恐らくグレンを捕らえるかもしくは殺すかをし、それによって司令塔を失った月鬼ノ組が混乱している隙に一気に畳み掛けようと目論んでいる可能性が非常に高い。
だからか、彼の考えるその作戦が良い傾向に導くとは到底思えない。

「(でも、相手方は貴族が三人。どの道、これは単独で動ける範囲ではないのよね…)」

何度も思考を巡らすが、決まって浮かぶのはこちらが皆殺しにされる光景だ。

「(クソッ、あたしがあっちに行ってたらこんな事態にはならなかったのか? いや、それだと特殊能力が使えないな…。さっきのメノ・ステファノの時だって地下だったから使えなかったし……)」

「建物内でなければ有利だったのに…」と親指の爪を噛んだとき、グレンと深夜が何か話している様子が見えた。

「(深夜様も一瀬君のことを心配していらしてるのね…。一瀬君、顔に出さないだけで相原から聞いた情報にきっと心を痛めてるはずだもの。さゆちゃん達も知っててあの顔だし……)」

ふと小百合達の方に目を向けると分かりやすく心配をしているような表情を浮かばせていた。

「(…出来るなら、シノンお嬢様や愛紗やマコ達を巻き込まなない状況にしたかったわ……)」

今度はシノン達を一瞥したとき、話が終えたらしいグレンは作戦の内容を少しだけ話す。
10分間だけクローリーを襲い、殺せなかった場合は逃げ次の任務に入るとのことだ。

「まだ集合できてない他の部隊はどうしますか?」
「生死がわかってないのは残り三箇所のチームだけだ」

更に、相原達は30分だけ残り他の仲間達に指令を伝えろと加えて言う。
すると、相原は自分達も前線に行きたいと言いかけたのだが「戦場で泣くような奴は足手まといだ」と釘を刺されてしまう。
シノンにもその言葉がグサリと心に突き、「ううっ…」と縮こまる。

「冗談だよ、少し休んで残った七人で取れる連携について話し合え。そうじゃなくても人数が足りてないんだ、頼りにしてるぞあい子」
「は、はい!!」

あい子の返事を確認したところで、次に自分達と共に行く隊を告げる。

「鳴海隊、皆本隊、シノア隊は俺についてこい。クローリー・ユースフォードとその従者二匹を殺し…仲間たちを救出する!!」
『はい!!』

シノア隊、鳴海隊、皆本隊の面々は先頭を行くグレン隊と共に名古屋市役所への移動を始める。と、そのとき……





「シノン軍曹!」
「! どうかされましたか、相原軍曹?」
「これを。本当にありがとう……」

シノンを引き止めた相原は先程借りたハンカチをシノンの手のひらにしっかりと置く。

「えっと、どういたしまして…です」

シノンは少々照れながら微笑む。

「武運を祈ってる」
「ありがとうございます。相原軍曹も、お気を付けて」

相原に「では、また」と言った後、シノア達の元へ駆け込む。

「シノン、また得意のお人好をしたのですか?」
「…私が相原軍曹の立場だったら、もっと泣いていたのかもしれないです……」
「…そうですね。シノンは人一倍泣き虫さんですもんね」
「うっ、否定出来ないです……」

図星を突かれ、顔を背ける。

「ま、それはさておいて……。ここからが、本番になりますよ」
「…分かっています」

様々な思いを抱きながら、シノン達は市役所へ足を進める。
一方、上空では……





「依音、もうすぐ着くぞ。飛び降りる準備を進めろ」
「分かってるわよ、レーネ。…真音、待ってて……」

そう呟いた後、依音は仕度を整える……。

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