予想もつかぬテンカイ
〜名古屋市役所〜
「おい! 早く助けないとグレンが殺され…!!」
優一郎が言い切る前に三葉と君月は静かにしろと彼の頭を押さえる。
「ゆ、優様…」
「シノアさん、敵の位置は−−−」
「黙って、すぐ上です」
そう与一に言った後、シノアは《四鎌童子》の索敵能力を使いクローリーのいる位置を捉えた。
「すぐ上…」
「グレン中佐、深夜兄様…。すぐに助けます」
全員身構え、来たるタイミングまで待つ。
その頃、皆本隊は……
「うぉるあああっ!!」
人質の救出を終えた知人は真っ先にグレン隊の援護に向かい、五士の背後にいる敵を斬った。
「典人兄ちゃん!! 大丈夫か!!」
「うるせー馬鹿弟! 大丈夫だよ!!」
五士と知人が会話を交わしていると遅れて着いた皆本隊の面々も攻撃を始める。
「俺に憑依しろ、《鎌鼬》!!」
「力を貸して、《兎ノ輝夜》!!」
清吾は敵に突っ込みながら次々と斬り捨て、鈴花が鉄扇をひらりと振ると風が起こり、数匹程吹き飛ばす。
「私に憑依しなさい、《風刃那》!!」
綺里はその吹き飛ばされた吸血鬼を一匹残らず滅する。
「《狐憑》、あそこにいる吸血鬼達を全部殺して」
愛紗の言葉に応えるように全ての鬼火が吸血鬼に向かい、見事に殲滅する。
「お姉ちゃん、大丈夫?」
「"大丈夫?" じゃないわよアホ」
「あうっ」
聖璃の軽いチョップが頭上に落ちる。
「…でも、ありがとね」
「……うん」
今度は頭を撫でられ、少し嬉しそうな表情を浮かべる。
「聖璃姉ちゃーんっ! こっちはもう終わったぞーっ!!」
「って、緊張感持ちなさいよねあの馬鹿……」
「お姉ちゃん、知人が馬鹿なのは生まれつき」
「そりゃあそうだけれども…」
戦闘中だというのに上にあげた両手を左右に振る知人を見た瞬間にため息を零す。
すると、五士がグーで殴っているのが見えた。
「まぁアイツは良いとして、マコたちの方は……」
鳴海達の様子を確認すると、彼らも人質の救出を終えたみたいだ。
「マコ! それで人質は全員なの!!」
「はい!! 全員です!!」
「っし、任務完了ってとこか…」
無事に任務を達成する事が出来たとひと息ついた。が……
「? ねぇ愛紗、シノンお嬢様達は?」
どこを見渡してもシノア隊の姿だけが見当たらなく、問い掛けてみると…
「……。もしかし、たら…」
「…?」
「さっき、グレンお兄ちゃんと深夜お兄ちゃんが攻撃された時…。一瞬だったんだけど、中に向かっていくのが見えた……」
「はぁっ!? どういうこと!?」
勢いよく愛紗の肩を掴むと「やめなさい聖璃!!」と美十の声が聞こえてきた。
「っ、分かってるわよ……」
「ごめんね、愛紗…」と謝りながら手を離す。
「愛紗、三葉達がいないって……」
怒鳴り声に気付いた知人も真実であるのか問おうとした…そのとき!
ドンッ…!!!
『!!』
「何っ…!?」
建物から音が聞こえ、全員そこに視線を向ける。
「…まさか!?」
聖璃はすぐに察した。
恐らく、シノン達はグレンと深夜を救出しようとしているのだ。
「三葉ーっ!!」
「知人! おまえまで行ったら「離せよ!! 三葉が危険な目にあってんだぞ!?」
「落ち着け!! 知人!!!」
「っ…!? 兄、ちゃん……」
五士の制止が効いたのか知人は段々と抵抗を示さなくなった。
「聖璃ちゃん、俺らもグレンの所へ行こう」
「なっ…! 兄ちゃん!! 俺も一緒に「おまえが行っても足手まといになるだけだ」
「そん、な……」
冷酷に告げられたその言葉に、歯を食いしばり拳を握り締めることしか感情の行き場がない。
「マコ。皆本隊の面倒、頼むわよ」
「はい」
「…知人。アンタの幼馴染も、あたしの大切な主も……。必ず助け出すから」
「聖璃、姉ちゃん…」
「大人しく待ってんのよ?」
「……おうっ!」
知人の返事を聞き取った後、
「…じゃ、面倒いけどこっからはあたしが指揮を取る。行くぞ!!」
早急に建物へ向かった。
一方、クローリーと接触したシノン達は……。