思い出のコモリウタ 2






「グレン、兄様っ−−−…!」

グレンが口ずさんでいる子守唄を聴いたシノンは頬に涙を伝わせ……。
その刹那、保っていた何かが切れたかのようにクローリーに斬りかかる。

「シノンッ!?」

優一郎も行こうとするが深夜に押さえ付けられてしまう。

「誰か!! シノンちゃんを抑えろっ!!」
「師匠!! 僕がっ…!!」
「頼む、真音ちゃん!!!」

真音は強く頷き、シノンとクローリーの元へ駆け出す。

「グレン、兄様を…っ、返せっ!!!」
「それは無理な話だな〜、っと!!」
「「クローリー様!!」」

流石のクローリーも先程よりも速くなっている槍攻撃に少々焦りを見せる。

「(ここまで速くなるものなのか? 一体、彼は刹那姫に何を吹き込んだ…?)」
「はぁあああっ!!!」
「っ!!」

グレンに気を取られていた合間に槍の柄が腹部にめり込んだ。

「クローリー様から!!」
「離れなさいっ!!」
「……」

チェスとホーンはシノンの背後に回り込み、攻撃を仕掛けようとしたがもう一つの槍が起こした風によって勢いよく吹き飛ばされる。

「これは…。とんでもない化け物を、生み出したみたいだねっ……」

「………」

こちらを凝視する瞳はまるで自我を失った獣のようだ。
クローリーはめり込んだ腹部を押さえ、一滴の汗を流す。
そして、トドメと言わんばかりに槍が振り上げられた…そのとき、

「シノノンッ!!!」
「っ…!?」

真音が火縄銃を首元に強く押し付け、その衝撃でシノンは即座に意識を失った。

「よくやった真音ちゃん!! 撤退だっ!!!」
「シノン!! 大丈夫か!!!」
「大丈夫!! 少し気を失わせただけ…!!」

シノンを背負ったと同時に五士達が窓を突き破り降り立った。

「! 真音、シノンお嬢様は!?」
「大丈夫!! それよりもっ……!!」

真音はグレンを指差す。

「俺はもう無理だ、力は深夜たちを逃がすために使え」
「一瀬君!? 何馬鹿言ってっ…!?」

聖璃、小百合、時雨、美十の制止を聞かず五士は幻術を発動する。
クローリー達がそれに翻弄されている間にシノン達は市役所から撤退した。

「君、捨てられたな」
「嫌われ者なんでね」
「…あの時、刹那姫に何をした?」

そう聞くとグレンはハッ、と鼻で笑い、

「さぁな? アイツが勝手に命令無視して暴れただけだ」
「……ふむ」

その後、クローリーはチェス達に拘束するよう命じた。
一方、何とか撤退出来たシノン達は……





「っ、…ここ、は?」

いつの間にか閉じられていた瞳を徐々に開けていくと、そこは名古屋市役所ではなかった。と、

「おいおまえら本気か!!? ほんとにグレンを捨てるつもりなのかよ!!?」
「優っ、様…」

優一郎の声で完全に意識を取り戻した。

「! シノノンッ…!」
「真音様…。私達、は…名古屋市役所に、いたはずでは……」

シノンが起きたことに気付いた真音はゆっくり降ろす。

「…グレン中佐、は?」
「……っ」
「まさ、か……」

彼女の反応からあの後の状況を察した。
見渡すと小百合は涙を流し、聖璃は歯を食いしばり、他の皆も俯いたりしている。
そして、優一郎も目に涙を浮かばせている。

「グレン中佐っ……」

シノンはドクドクッ…と早まる心臓を抑えるように手を押し付ける。
何故あのときの記憶が全くないのか…と、後悔の念に駆られる。

「シノノン…」

真音はそんなシノンを心配し肩に触れようとしたが、

「ごめんみんな、やっぱ俺にはチームプレイは無理だった」
「なっ」
「えっ…」
「! 待ってっ!!」

嫌な予感が、した。
優一郎が鬼呪促進剤の入ったケースを取り出す前にシノンは彼の腕にしがみ付いた。

「優様、待ってくださいっ……」
「シノン…。ごめんな、一緒にミカを救うって約束したのに……。守れそうに、ないや………」

そう言いながら小さく震える彼女を優しく抱きしめる。

「それ、って…」

言い切る前に彼は離れ、

「家族を救えないくらいなら−−−」
「優様!? ダメッ…!!」
「死んだ方がましだ」

2錠の鬼呪促進剤を、飲み込んだ。

「今すぐ吐き出してくださいっ!! それで3錠目ですよっ!!?」
「…ん〜でもさ、なんか意外と大丈夫な感じも…」

その瞬間、優一郎は突然襲ってきた激痛から吐血した。

「っ−−…!? 優様ああぁあっ!!!」
「があっ!!! うああああ!!!」

シノンと優一郎の叫びは空へと木霊する……。

prev  On the other side of the fairy tale.">back  next