裏切りのミカタ 1






「敵は二匹だ!! 排除しろ!!」

「「!」」

ミカエラと依音は敵が来るのを待ち構えている。
そのとき、ヘリの音が聞こえた。

「くそ、もう来たのか」
「あれはラクスたちじゃないわね」
「…京都の吸血鬼か」

2人は空を見上げる。

「確か、女王様やエリザも来るって言ってたわね」
「そんなのどうでもいいよ。あれが来たらもう優ちゃんを…シノンちゃんを救えない」
「そうね。なら、今ここでやる必要があるわ」

剣を抜き、再び敵に視線を戻す。

「相手は武装した人間…三十人強」
「ミカエラ、油断しないでよ」
「そっちこそ」
「フン、先輩舐めないでよ。剣よ、アタシの血を沢山吸いなさい」

剣を構えた依音はいつもよりも多く血を吸われる。
ミカエラも同様に多く吸わせ……

「いま行くよ、優ちゃん。シノンちゃん」
「真音、すぐ行くから」

勢いよく、駆け出す。





「来るぞ!! 全員戦闘態勢!!」

彼らがこちらに向かっていていることに気付いた深夜は皆に呼び掛ける。

「…また吸血鬼がいるらしい」
「二匹なら…この人数なら大丈夫なはずです。吸血鬼が始末されるまで私たちは前に出ず、この位置で優さんを守ります」
「優様……」

シノンは優一郎の顔を見ながら《雪浅鬼》を強く握り、視線を変えてからキッと吸血鬼達のいる方を睨む。
一方、ミカエラと依音は鳴海隊の攻撃を躱している。

「っ!! 邪魔、よ!!!」
「くっ!!」

鳴海は依音の力強い剣撃を何とか耐えている。
その隙を突いた秀作は《赤蛇》を発動し依音に攻撃しようとするが、ミカエラに弾き返されてしまう。

「チッ…!!」
「ちょっ、アンタがやらなくても止められたわよ!!」
「嘘でしょ? 君、ソイツを抑え込むだけで精一杯…優ちゃん」
「えっ? …真音!」

捜し求めていた相手をようやく見つけた瞬間、鳴海隊の包囲網をすり抜ける。

「考えなく突進…侮られたものですね」
「こりゃ楽勝だな」
「でも…何か別の目的があるかも」
「…どちらにせよ、確実に殺さないと」
「しぃちゃんの言う通りよさゆちゃん、あたし達はここで止まってられな…!? 依音……っ!!」

侵撃を食い止めようと《大鎚地》を持つ聖璃。
が…二匹の内の1人が依音と知った途端に瞳が揺らぐ。

「何でここにっ……」

そう呟いたときには五士は大勢の軍がいるように見せかける幻術を見せるが、彼女達は動じぬまま突っ込む。
更に足を溶かす幻覚を発動するがそれすらも突破されてしまう。
しかし、小百合・時雨・美十が続けて攻撃し、2人は徐々に手負いになっていく。

「っ!! まさか、真音を…。それにあの吸血鬼、確かシノンお嬢様と一緒に……」

思考を巡らせている最中、倒れたはずの2人は立ち上がった。

「っ、く……。アタシは、まだ…死ねないっ!!」
「ゆ、うちゃん……。シノンッ、ちゃん…!!」

無我夢中で走り続ける。
そこに…大切な"家族"がいるから。
と、そのとき!

「行かせねえ、よ!!」
「!?」

知人が《閃珠丸》を振り落とし、ミカエラは咄嗟に受け止める。
傷を負う前なら互角になるはずだったが足が段々と地面にめり込んでいく。

「こっから先はオレが食い止める!!」
「っ…!! 人間、がっ!!!」
「ミカエラッ!!」
「…ミカ、エラ?」

知人はミカエラの名を聞いた瞬間、どこかで聞いたことが…と目を丸くさせる。

「おまえ、もしかして…。ミカか?」
「…何故、僕の名前を知っているんだ……」
「やっぱりか!! おまえだったんだな、シノンがいつも言ってた奴って!」
「! シノンちゃん…っ。彼女の名前を、軽々と呼ぶな!!」

知人の口からシノンの名前が出たことに激昂したミカエラは素早く剣を振り回す。
が、全て躱されてしまう。

「何で怒るんだよ!! アイツのことが嫌いなのか!?」
「違う!! 彼女は僕にとって、初めて誰かを守りたいと想えた、愛しい人だっ!!!」
「……!」

彼のシノンへの想いの強さを感じ取った知人は何を思ったのか剣を降ろした。

「何の、つもりだ……?」
「いやー、おまえ強えな。降参だ」
「馬鹿なの、君? そこまで望むのなら今すぐ斬…「シノンを、頼むな?」
「…!?」

唐突的に言われたその言葉に思わず動揺する。
そんなミカエラの様子を察してか察してないのか、知人は続けて言う。

「おまえなら、何かシノンを任せられそーな気がしてんだよな。アイツの兄貴分として頼む、アイツを自由にしてやってくれ」
「……」

ふと、頭を下げる彼の姿が優一郎と重なって見えた。

「っ、違う。優ちゃんとコイツは……」
「そこの姉ちゃんも、真音の姉ちゃんだろ?」
「っ!? アンタ、一体…」
「姉妹は一緒にいた方が1番だからな! 早く真音のとこに行って良いぜ!」
「…初めてよ、アンタみたいに無防備に笑いかける馬鹿は」

呆れつつも感謝の気持ちが芽生えた依音はフッと微笑み掛け、彼の横を抜ける。

「……」
「ホラ、おまえも早くしろよ?」
「…礼は言わない」
「別に構わねーよ」

ニッと笑む彼に少し眉間にシワを寄せるが、聞こえぬくらいの小声で「ありがとう…」と言ってから抜けて行く。

「知人!! 何で取り逃がしたんだっ!?」
「あー、アイツら強過ぎて敵わなかったわ。オレの完敗だ」
「そうか…。追いかけるぞ!」
「いんや、追っかけなくていいよ」
「はっ…?」

清吾は耳を疑った。

「……あ、いや。やっぱ追っかけよう」
「…何が言いたいんだ」
「さーな?」

はぐらかすように口角を上げた知人はミカエラ達の手助けをするべく清吾達と共に後を追う。
そのとき、ミカエラ達はシノア隊のすぐ近くまで来ていた。





「ちょ、みんな待って!! ねぇ、あれ…前に新宿に来た優くんの家族じゃないの!!?」
「…え!?」
「!!!」

与一の言葉に反応したシノンは急いで前に出る。

「っ、もしかして…!!!」

真音も何かを直感したのかシノンの隣へ駆ける。
見えるのは他の隊員達に次々と刺されている二匹の吸血鬼の姿。
そして、やはりその姿に見覚えがあった。

「っ、ミカ様あああ!!!」
「!! シノン、ちゃんっ…!」

「姉ちゃんっ!!!」
「真音っ……!!」

シノンとミカエラ、真音と依音は再び邂逅する。

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