裏切りのミカタ 2






「っ、ミカ様あああ!!!」
「!! シノン、ちゃんっ…!」

「姉ちゃんっ!!!」
「真音っ……!!」

シノンと真音に気付いたミカエラと依音は更に走る脚を加速させる。

「ミカエラさん!! あなた、優さんの幼なじみの百夜 ミカエラさんですよね!!?」
「黙れ人間!! 優ちゃんを返せっ!!!」
「とりあえず止めるぞ!!」
「でもっ!!」
「止めなきゃこっちが殺される!!」

そう言った刹那、目の前にはもうミカエラがいた。
三葉や君月は優一郎を守るべく食い止めようとするが圧倒的に圧されてしまい、君月は背負っていた優一郎と離れてしまった。
ミカエラがゆっくり優一郎の元へ歩み寄ろうとしたとき、

「ミカ様っ…!!」
「シノンちゃん……。やっと、また逢えた…」
「っわ……!」

愛おしげに見つめてくる彼に突然抱き寄せられたが、抵抗せずそのまま抱き返す。

「ミカ様、ごめ、なさいっ…」
「何で、謝るの?」

髪を指に絡ませるように彼女の頭を優しく撫でる。

「優様をっ、止められなかったから……」
「え…? それよりも、行こう」
「行く…。どこに、ですか……?」

何処に行くのか問い掛けるが、与一がミカエラの背後にしがみついた。

「 絶対に行かせない!!」
「与一様!!」
「邪魔だと言って…!!」
「殺すなら殺せ!! でも…!! 君が優くんの家族なら、僕らも君の家族だ!!!」

その一言にミカエラは両眉を上げ、一滴の汗を頬に伝わせる。と、

「ミカエラから離れなさい!! 人間っ!!」
「っ…!?」

依音の剣が頬を擦ったことによって咄嗟に離れた。

「依音さん!! 真音ちゃんのお姉さんの、虎賀 依音さんですよね!!!」
「!? アンタ、そんなに死に急ぎたいの…「やめて!! 姉ちゃんっ!!!」
「!! 真音…。どうして、その人間の前に立つのよ……」

与一の前に立ち両手を広げる妹に、依音は剣を持つ手を震わせる。

「与一を殺すなら、僕を殺してからにして。与一は、僕の大切な人だから」
「真音ちゃん…!」
「…っ。そんなの、出来るわけ……!! ミカエラッ!?」

剣を降ろそうとした瞬間、《白虎丸》の刃がミカエラの胸部を貫く。

「お手柄だ与一くん、真音ちゃん。この戦闘は終わった」
「っ!! おまえ…ぐぁっ!?」
「姉ちゃんっ!!?」

憤った依音はすぐにミカエラを助けようと脚を踏み出したが、同時に鳴海の《玄武針》が肩に突き刺さった。

「これで終わりだっ!!」
「消滅しろ、吸血鬼」
「「ぐ…」」
「あっ…」
「だめだっ!!!」
「っ…!! "幻影弾"っ!!!」
「「なっ……!!?」」

深夜と鳴海がミカエラ達にトドメを刺す前に真音は特殊能力を発動させ、それに驚愕した2人は思わず引き抜いた。

「真音ちゃん!! 一体何を……!?」
「師匠!! 姉ちゃんを、これ以上傷付けないでっ!!!」
「真音っ…」
「どいてくれ、真音ちゃん」
「嫌っ!!!」

真音は必死に首を横に振る。

「…なら、君を裏切り者として「"千蝶乱舞"っ!!!」
「!!?」

今度はシノンの特殊能力が深夜達の周りを囲むように発動した。

「シノンちゃんまでっ…!!」
「お願い、しますっ。ミカ様を、傷付けないでっ……」
「シノンちゃん…。……!」

ミカエラは目を疑う。
雪が降っているからなのではない、これはシノンの周りから発している"冷気"だ。
何故彼女の周りに…? と目を丸くさせながら彼女の儚くも凛とした後ろ姿を見つめる。
そのとき、シノアがシノンの隣に現れた。

「シノン、後は大丈夫ですよ」
「シノア姉様…」
「…なんの真似だ?」
「あなたに死なれると、あとで優さんに怒られちゃいますから……。いっそもう、優さん連れて逃げちゃってください」
「! シノア姉さ……「それから、シノンの悲しんだ顔をこれ以上見るのは辛いので一緒に連れて行ってください」
「えっ…!?」

シノンは彼女の袖を掴む。

「シノン、あなたは優さんとミカエラさんを守る役目を任されてください」
「でも……」
「大丈夫です」

シノアが前を向くと君月達も近くまで歩み、鬼呪装備を構える。

「ったく冗談だろ? こんな展開になんのかよ…」
「だがやるしかないだろ、なにせ…」
「僕らのこの世界での行動指針はもう、『仲間を大事に』で決まっちゃってるからね」
「皆様……」

シノンは目尻に涙を浮かばせ、ぎゅっと両手を握り締める。

「まっちゃんも、依音さんと一緒に逃げてください」
「!? どうして……」
「与一さんの提案です」
「与一の…?」

与一と目が合ったが、彼は目を細めながら微笑み掛ける。

「お姉さんと、一緒にいてあげて?」
「…!! 与一っ……」

その一言だけで彼の想いが全て伝わり、とめどなく大粒の雫が瞳から零れ出す。

「ということで、早く行ってください。誤解を解いてから私たちは名古屋空港へ行きます。合流できるならそこで」
「おまえらと合流なんて…」

言い切る前にシノアは「うるさいうるさーい」と鎌を振り回す。

「私は勝手にあなたを信じちゃいますから、あとはよろしく。…シノンのことはもっとよろしくお願いしますよ」
「っ…シノア、姉様っ……!」

呼び止める間もなく、シノア達は勢いよく前に出る。

「……行こう、優ちゃん。…シノンちゃん」
「…は、いっ……!」
「姉ちゃん、しっかり掴まってて」
「ええ……」

シノン達はすぐにシノア達から離れた。
シノアがそれに気付いた刹那に味方に突き飛ばされ、一人が深夜の制止を無視し彼女に向けて剣を振り降ろそうとした…が。

「やめろぉおおお!!!」
「知君!」
「邪魔だガキ…「いい加減にしろ!!」
「九鬼大佐も…!!」

知人と聖璃によって事無きを得た。

「おまえたち、深夜少将の命令を無視するつもりか?」
「そ、それは…。っ、しかし! ソイツが「黙れっ!!!」

聖璃の怒号が響く。

「立てる? シノアお嬢様」
「九鬼大佐…。知君も、すみません……」
「あたしは構わないわよ。…寧ろ、感謝している」
「え…?」
「シノンたち、何とか行ったみたいだな」
「知君……?」

彼女達が何を言っているのか理解出来ず、首を傾げる。

「とりあえず、面倒いけどさっきのことを皆に説明しなさい」
「そんな時間はない!!! すぐに移動だ!!! 敵の増援が…!!!」
「え?」

空を見上げると吸血鬼達が次々と降りてきた。そのとき!

「いやあぁあああ!!!」
「弥生っ!!?」
「てめえぇえええ!!!」
「待て鍵山!!!」
「っ…!! タロおぉおおおっ!!!」

目の前で愛弟子を喪った聖璃は戦意を失い、膝をつきそうになった所を秀作が持ち上げた。

「聖璃さん!! しっかりしてくださいっ!!!」
「秀、作…っ」

彼の裾を強く握る。

「…き、さまああああああ!!!」
「戦うな!!! 貴族が来たら終わりだ!!! 逃げるぞ!!!」
「そんなっ…!!」

深夜の必死の呼び掛けに口答えしようとした矢先、ヘリの数は次第に増えていく。





「優ちゃん…起きてよ…」
「シノアッ、姉様……」
「姉ちゃん、しっかり…」
「っ、う……」

シノン達はそんな惨劇が起こっているとは知らず、走り続ける……。

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