太陽とミカヅキ 1
「っ……あれ?」
「!! 優ちゃんっ…!!」
「優二!! シノノンは…!?」
「シノン…。ハッ! オイ、シノン!!」
優一郎の目を開いた事に気付いたミカエラと真音はすぐさま彼やシノンに呼びかけ、優一郎もハッと目を覚ました後隣にいるシノンに声をかけながら揺する。すると……
「……んっ」
『!!』
床に手を付けたシノンは、ゆっくりと体を起き上がらせる。
「シノンちゃん!! 目が覚めたんだね…!」
「よかった、シノノンッ……!」
「……」
「シノン…?」
優一郎がじっとこちらを見つめる彼女に目を丸くさせていると……
「…………ごめん、なさい」
『えっ…?』
ミカエラ達も目を丸くさせる。
「私、皆様に迷惑を掛けてばかりで…。前に踏み出す事が怖くて、ずっと自分の殻に閉じこもっていた……。だから…」
「!! おまっ…!」
唐突に槍を後頭部に向ける彼女を慌てて止めようとしたが、
ザッ…!
膝まであった長い髪を、肩下までに切り落とした。
その光景に驚いた優一郎達は、瞬きをせずにいる。
「…これは、私なりのケジメなんだ。ずっと真昼姉さんの面影を追いかけてばかりいた証を、断ち切っただけ……」
そう話すシノンの口調が、普段のとは違う。
「今までずっと真昼姉さんの言う事を聞き続けてきた。口調もそう。本当の自分を圧し殺さないと、この世の中で生きる事は出来ないって言われた。…でも、それは違ってたね」
優一郎達に顔を見せた時、瞳には涙が溜まっていた。
「ミカ君や優君達と出逢って、やっと気付いた。私は、私のままでいても良いんだって。本当に…出逢ってくれて、ありがとうっ……!」
その笑顔が心からのものだと見て分かった優一郎達も、シノンに微笑みかける。
そんな時、真音が突然シノンに抱き付いた。
「真音、ちゃん…?」
「……やっと、本当のシノノンに出逢えた。凄く、嬉しい…」
「真音ちゃん……。私も、真音ちゃんとこうやって隔てなく話せる事が出来て…凄く、嬉しいっ……!」
「シノノンッ!!」
「ごめん、ねっ…! それ以上に…。本当に、ありがとう……!!」
ようやく分かち合えた彼女達は、涙を流し合う。
「っ…。アタシまで、何泣いてんのよ……。でも、あの子が真音の友達で…本当に、良かった……」
2人に釣られるように依音の目にも涙が溜まり、すぐに袖で拭う。
そして、シノンに感謝の気持ちを募らせる。
「シノン」
「シノンちゃん」
「優君、ミカ君っ……」
「…あー、何か変な感じする」
「えっ!?」
優一郎の言葉に思わず声をあげ驚く。
「優二、シノノンの悪口言うなら許さない」
「いや、そんなんじゃねーよ!! 何というか、その…」
「優ちゃん、敬語じゃないシノンちゃんがシノンちゃんじゃないって思ってるんでしょ? 僕はすぐに慣れたけど」
「オイイッ!? おまえもさっきまで「敬語じゃ、無くなってる…」って驚いてただろ!?」
ミカエラの言葉に、優一郎は素早くツッコミを入れる。
「それでも、シノンちゃんはシノンちゃんだからね」
「…!」
ミカエラが微笑みかけてきた瞬間、彼の瞳の色が変わっている事にようやく気付いた。
「ミカ君…。それに、依音さんも……。もしかして…」
「「……」」
2人は、ハッとなった後だんまりとする。
その様子で、シノンは全てを察した。
「そう、なんだ……」
「……これしか、もう手が無く…!」
言う途中で、両頬が包まれるように触れられた。
「…ごめ、んね。本当なら私も……あげられたら、良いのにっ…」
「! …シノンちゃん」
「ミカく、っ…!?」
名前を呼ばれ、どうしたのかと聞こうとしたら…腕の切り傷を舐められた。
すると、ミカエラの息づかいが少し苦しそうになり、優一郎達は動揺する。
「ミカ君!! どうしてっ……!!」
「っは…。さっきも言ったけど、例え君が"刹那姫"だとしても……。君は、僕の知っているシノンちゃんだっ…」
「だから、気にしなくて良いんだよ……?」と、今にも泣きそうなシノンの頬に手を添える。
「ミカ、君っ……。あり、がとうっ…」
涙を零しながら抱き付くと、優しく抱き返してくれた。
「良かったな、ミカ。シノン……」
優一郎はそんな2人を見守りながら呟く。
と、その時……
「あっ…。シノアお姉ちゃん達を、助けないと……」
「!……」
優一郎に目を向けると、彼も同じ意思を持っているようだ。
「そうだな、家族のピンチだ」
「ん。与一達の所に、帰らないと…」
「…待ってよ。君たち、まさか人間たちのところに戻るつもり?」
「何で、そんな事……」
「「「……」」」
3人は顔を合わせる。
「ごめんね、ミカ君…。シノアお姉ちゃんは、……私の、唯一無二の血の繋がった大切な"家族なの」
「シノンちゃん…」
「与一がいなかったら、姉ちゃんとまた会える事が無かった。いっぱいいっぱい、助けてもらった」
「っ、真音……」
ミカエラと依音は、彼女達の眼差しに戸惑う。
「そういう事だ」
そう言いながら優一郎は外に出てしまい、シノン達も追いかけるように外に出る。
「っ、僕の話も聞けよ優ちゃん」
「おまえが俺をここに連れてきたんだよな?なら、シノアたちが…俺と一緒にいた仲間たちがどうなったか…」
「ちょっと、人間の話ばっかりするのやめてよ。君がどんな洗脳を受けたかは知らないけど、とにかく日本帝鬼軍だけはだめだ」
「優君…。っ!?」
彼らの心配をした矢先…ミカエラが、動き出そうとした優一郎の首付近に剣を向けた。
「ミカ君っ!? 待って!!」
「シノンちゃん、君からも言ってやって。日本帝鬼軍は危険だって」
「…ミカ君、聞いてくれる? でも、先に剣を引いて……」
「…?」
「シノン?」
言われた通りに剣を引くと、シノンがまっすぐこちらを見つめ……
「…私は、その日本帝鬼軍を創立した…柊の、血族だよ」
「っ…!!?」
「何ですって……!?」
彼女が告げた事実に、2人は口を開いたままになる。
「シノノン……」
「関与している事が少ないけれど、私もその中に含まれているはずだから……。それでも許せないのなら、今ここで殺しても良いよ…」
「……っ、出来るわけ…ないっ! シノンちゃんは何も悪くない!! 君もっ、利用されて…!!」
もう一度顔を見た時、シノンは精一杯の笑顔を見せていた。
「…優ちゃん、知ってたの?」
「…ああ」
「っ…。……そっか」
切ない表情を浮かばせながら、彼女を見つめる。
「だけど、あいつらはずっと昔から僕や優ちゃんを使って人体実験をしてる。そのグレンとかいうのもきっと優ちゃんを助けたんじゃない、僕らは《終わりのセラフ》っていう…」
「どうでもいい話すんなよ。俺は家族を救いたいと言った、ならおまえは俺たちを助けるべきだ」
「……べきって……」
「…真音。アイツ、何様なの?」
「初めて会った時からあんな感じだよ」
真音と依音の会話に、優一郎は「聞こえてんぞ!!」と叫ぶ。
「あはは…。でも、一理あるかな。私達と一緒にいるという事は、お姉ちゃん達と家族になるって事になると思う」
「ちょっ、シノンちゃんまで…」
「そーそー、シノンの言う通りだ。家族を救えないなら死んだほうがマシだ」
「私も」
意見を合わせる2人に面食らったミカエラは、「矛盾してるでしょ!!」とツッコむ。と、
「ミカ」
「絶対に行かせないよ、とにかく僕の話を…「ミカ!!! ………あいつら、家族なんだよ」
その瞬間に先程シノア達に庇われた事を思い出し、ぽつりと呟くと優一郎はそれを聞き逃さず、ミカエラの肩を掴む。
「おまえやっぱあいつらのことなんか知ってんのか!!?」
「……」
「なあミカ!!」
「優君! 私が説明するから…!」
「シノン……!」
シノンは先程まで起こった事を全て優一郎に伝える。
「んな事が…。だから、おまえらは俺たちといるんたな……」
シノンと真音はこくっと頷く。
すると、依音が前に出てきて彼らに問い掛ける。
「確かに、あの子達はアタシ達を助けてくれた。……でも、人間は…欲が深いのよ」
「姉ちゃん、そんなの屁理屈。ミカ坊も、与一達を信じて。一緒に助けよう?」
「…仕方ないわね」
「!? 君、まさか…!!」
「久々に妹にお願いされたからね。アンタも、とりあえず騙されたつもりでついて来なさい」
ミカエラの制止を無視するように、真音の方に顔を向ける。
「…わかった、でも救うのはあの四人だけだ。それに僕に手を貸して欲しいなら、話をちゃんと聞いてもらう」
その言葉を聞いた優一郎は「なんでも聞く!!!」と答え、今すぐにと言わんばかりに周りを見渡す。
「どっちだ!!? シノアたちはどこにいる!!?」
「優君、そっちだと逆方向になるよ…!」
「おっと」
「あと、距離があるから車を調達しよう」
「お…じゃあ俺が運転する」
「いや、僕が運転する」
互いに譲れないのか、優一郎とミカエラは自分が運転すると主張し合う。
「そんな事よりも、早く車を探しなさいよ」
「僕も、車の運転したい」
「アンタ達!! 運転権は真音に譲りなさい!!」
「何でだよっ!?」
「ま、まぁまぁ……」
とりあえず、二手に分かれて動かせそうな車を探す事にした。
そんな時、一緒になったシノンと優一郎は……。