計画のハジマリ 1






「………やっぱり、名古屋空港に行くのは反対だな…」

車で名古屋空港に向かっているシノン達。
その道中、ミカエラはまだ行くのを反対している。

「ミカ君…。で、でもっ、シノアお姉ちゃん達が待っててくれてるんだよ……」
「シノノンの言う通り」

真音はシノンの言葉に賛同の頷きをする。
そんな2人を一瞥した依音は、フイッと顔を背けるように窓の外を見る。

「シノンちゃん…。だけど、彼女達は僕の仲間じゃない」
「ったく…その話は済んだろー」
「君たちはわかってないんだよ。人間がどれだけ恐ろしいか」
「ンなこと言われても、俺も人間なんだけどなぁ」

優一郎の言葉を聞いたミカエラは、一瞬瞳を揺らす。

「…優君」
「……わりぃ、ミカ」
「大丈夫…」

少し沈黙が続いた後、ミカエラは以前日本以外の人間の魔術組織を潰した事があると話し始める。
その話から、どの国でも《終わりのセラフ》の実験をやりたがっていた形跡があり…その内容は、酷く醜いものであった。

「とにかく、日本帝鬼軍はだめだ。世界の魔術組織の中でも、とび抜けてたちが悪いとされてる場所だよ」
「っ……」

シノンは視線を下に向け、グッ…と両手を強く握りしめる。
父が、兄達が、…真昼が。
そんな悍ましい実験を平然と行っていたなんて……。

「…何度も言う。シノンちゃん、僕は君自身を憎んでなんかいない。寧ろ…ずっと、君を助けたかった」
「ミカ君…。ごめん、ちょっと嫌な質問をするね……」
「…?」
「もし、さっき言ったよりももっと前に私が柊の血縁者だって知ったら…どうしてた?」
「………」

ハンドルを握り直し、眉間にしわを寄せながら考える。

「…尚更、君をそのしがらみから救おうと躍起になっていたと思う」
「……そっか」
「ミカ…」

ミカエラの答えに、シノンだけでなく優一郎も安心した。

「ミカ坊、ナイス回答」
「…あのさ」
「ん?」
「…その呼び方、凄くやめて欲しいんだけど」
「あっそ」
「全く改善する気ない返事しないでくれる?」
「ミカ、多分これ以上言っても無駄だと思うぞ。アイツは人の名前をまともに言う気なんかサラッサラねぇんだからよ…」

そう言いながら振り返ると、シノンの肩に寄りかかっている真音の姿がガッツリ見えた。

「つか! なにげにシノンの肩に寄りかかってんじゃねえよ!!」
「シノノン、優二がうるさい」
「え、えっと…」
「ちょっと単純馬鹿、うちの真音とその親友困らせるんじゃないわよ」
「おまえは何様だよっ!!」
「あわわわっ……」

どこまでもゴーイングマイウェイな虎賀姉妹に翻弄される優一郎と、「どうしたら…」と慌てふためくシノン。
そんな様子にミカエラはハァ…とため息をつき、

「キリがないから話を戻すけど。君たちはいますぐ帝鬼軍を離れるべきだと思っている。僕や優ちゃんはもう《終わりのセラフ》の実験体として利用されてた、これは世界中から狙われる研究だ。むしろそのシノアとかいう子たちのそばにいたら迷惑掛けるくらいだよ」
「ふーむむ、そうなの?」
「そうだよ」
「迷惑……」

その言葉に、シノンは深く考える。
本当に、シノア達はそう思うのだろうかと。

「それでも、きっと……」

これまでの事を思い返し、目を細めた。
恐らく、それでもシノア達は協力してくれるのだろうと確信出来たからだ。そんな時……

「じゃああれか、シノアたちのことは遠くから確認するか!」
「えっ…!」

優一郎の提案に思わず目を見開かせる。

「んで、あいつらが安全そうだったら俺たちでそっと去ろうぜ作戦でどうかな?」
「え、えぇえっ…」

トントン拍子に話が進もうとしており、動揺が止まらない。しかし、

「んで、そのあとはグレンを吸血鬼たちから救出する作戦を俺たちで…」
「…!」
「絶対やだ「あの!私も優君の作戦に賛成ですっ…!」
「シノン、ちゃんっ……?」

どうしたんだとシノンの顔を見ると、とても却下を飛ばさせてくれない程真っ直ぐな瞳をしていた。

「…優ちゃん、シノンちゃんまでやる気になってるんだけど」
「おー! これで2票な!」
「僕は与一の所に戻るから」
「…真音と一緒に行こうかしら」
「……」

各々が自由過ぎて、ミカエラは困惑した表情を浮かべる。

「頼むよミカ〜」
「…ああもう! たぶんね、そのグレンとかいうのがいま殺されてなければそれはなんとかできると思うよ」
「……!」

段々と喜びを見せるシノン。と、

「まじっか!!? おまえすげぇな!! で?」
「……」
「ちょ、ミカ。続きは?」
「……」
「なあなあミカ!! 続き!! グレン救う方法!!」
「もうちょっと! 優ちゃんすごくうるさい! 全然、昔と変わんないんだけど!!」
「あはは」

しつこく聞いてくる優一郎にうるさいと怒るミカエラ。
すると、始終をずっと見ていたシノンが……

「ぷ、ふふっ…!」
「「え?」」
「ご、ごめっ…! 何か、ミカ君のそういう所初めて見たなぁって思って……」
「…〜っ!」

一気に顔を赤く染めたミカエラはキッと優一郎を睨み、

「……優ちゃんの、せいで」
「別に良いんじゃね? おかげでシノンの笑顔がまた見れたんだし」
「ふぇ…?」
「こんな一面、見せたくなかったのに……」
「まーまー」
「他人事みたいに言わないでよ…」

そう言った後、再びため息をついた。

「んで? どーやんだよ?」
「………僕を飼ってた吸血鬼の女王に、頼む」
「吸血鬼の、女王…」

いつ聞いたのかは忘れてしまったが、話を耳に入れた事がある。
京都にある吸血鬼都市・サングィネムを治めている吸血鬼の女王−−クルル・ツェペシ。
どうやら、その吸血鬼の長がミカエラを吸血鬼にしたみたいだ。
ミカエラの話を聞く限り、信用しても良さそうな気がする。
何故なら、

「(もし、その人がいなかったら…。ミカ君と、また会える事が出来なかった……)」

それは、優一郎も同じ考えだった。

「でも、そいつがいなきゃ俺は生きておまえと会えなかったんだ。なら、俺はそいつに感謝しないと」
「それは…。………そうなんだけどさ…」

そんな会話をしている内に、名古屋空港に後少しの距離まで近付いていた……。

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