滅びのラッパ 1






「大丈夫かシノア!!?」
「シノアお姉ちゃん…!!!」
「優さん、それに……シノン?」

一瞬判断がつかなかったが、こちらに振り向いた瞬間にシノンだと分かり、優一郎やミカエラと共に別の所に行ったはずの彼女が目の前にいる事に目を見開かせる。
しかし、何よりも驚いているのは……

「貴女、髪…」

真昼が亡くなってからずっと伸ばしていたその髪を切った事を問い掛ける。

「……」
「あ………」

困ったように笑むその表情は、いつもと変わらずにいた。

「ごめんね、お姉ちゃん…。後で全部話すね……」
「…シノン」

いつ以来かのその呼ばれ方に、ふいに瞳が潤む。

「優!!」
「シノン!!」
「あいつら…!!」
「皆…! 与一君っ!!」
「っ…!?」

君月達に顔を向けようとした時、与一の背後に鎖がすぐ近くまで迫っていた。が!

「"幻影弾・双牙"!!!」
「!! 今の…真音ちゃん!!」

見覚えのある狼に気付き、放たれた方に視線を向けると2つの火縄銃を持った真音がこちらに向かって来ている。

「与一っ…!!」
「真音ちゃんっ…!!」

真音が傍に立つ前にすぐに引き寄せ、抱きしめる。

「与一、会いたかったっ…」
「真音ちゃん、良かったっ……」

また会えた喜びを感じ合うように、強く抱きしめ合う。と…その時、

「……あなた達は」

ミカエラと依音がそれぞれ、優一郎・シノンと真音の近くに現れた。

「! 真音ちゃんの、お姉さん…」
「姉ちゃん……」
「…はぁ、色々と言いたい事はあるけど。今はそんな事してる場合じゃないわよ」

そう言いながら、鎖に剣の刃先を向ける依音。

「人間が人間を…やっぱり来るべきじゃなかったよ優ちゃん、シノンちゃん」
「いや違う、来てよかった」
「うん…」

優一郎の言葉に同意の頷きをしたシノンは、睨み付けるように鎖を見る。

「シノア、何が起きてるか知らねぇけど…みんなで助け合ってなんとかするぞ。俺に指示をくれ」

シノアは思案を巡らせた後、一気に逃げると伝える。

「殿を…」
「俺と知人と優で受け持つ」
「それなら、私もその役目を請け負うよ」
「僕と真音ちゃんと…」
「私がそれを援護する」
「なら、それを私も…手伝おう」

皆がそれぞれの役目を担う中、

「必要ないね」
「? ミカ君…?」
「あの程度の動きの鎖なら僕が全部止める。さっさとこの場を離れよう」
「なら、アタシは手のかかる後輩の援護に回ろうかしら」
「余計な事はしなくていいよ」
「何をしようがアタシの勝手よ。アンタはアンタのやりたいようにしなさい」
「……」

ミカエラは眉間にしわを寄せながら顔を背ける。

「ミカ、チームワークだろ」
「は? こんな光景を見せられて人間を信じろって?」
「いや、俺を信じろ」
「………」

言葉でも態度でも信じろと言わんばかりの優一郎に、若干絆されそうになった。と、

「ミカ君」
「シノンちゃん……。君は後方に「ううん、行かないよ」
「ダメだ、君に何かあったら」
「大丈夫だよ。もう、自分の心の弱さから逃げるのをやめたから」
「だけど…」
「…ミカ君が、優君が隣にいてくれる事が。私の力の源だから……」
「「…!」」

優一郎とミカエラは目を合わせる。

「…俺も、シノンが隣にいると何でも出来そうな気がする」
「…それは、僕も同じだよ」
「2人共……。私達、似た者同士だったんだね」

2人の言葉に思わず微笑んだ。

「じゃあ、やるぞ。みんな」

優一郎の呼びかけにより、全員武器を構える。

「…ふむ、グレンのところの黒鬼か。そして、いないと思ったら吸血鬼と共にいたのかシノン…いや、忌まわしき愚妹よ」
「っ、暮人…兄さん」

暮人に呼ばれたシノンは、キッと彼を睨む。
その瞬間、鎖が更に数を増して出てきた。
殿を担った優一郎・シノン・君月・知人・そしてミカエラは四方から襲い掛かってくる鎖を全て弾く。

「おっ! すげぇなミカ!!」
「…その呼び方で呼ばないでくれる?」
「え? 何でだ? ミカはミカだろ?」
「……勝手にすれば」
「おう! そーする、よっと!!」

会話を挟みながらも、背中合わせで弾き続けるミカエラと知人。

「"優君と君月くんを守れ! "千蝶乱舞"!!」
「っ…! シノン!」
「助かったっ!!」
「どういたしまして、だよ!」

優一郎と君月の背後の鎖を特殊能力で払い退けたシノンは、片方だけになっている槍で鎖を払う。
そんな時、突然鎖の動きが止まった。

「攻撃が、止んだ…っ!? アレは……!!?」

何が起きたのかと見渡すと、遠方から吸血鬼の軍勢が現れた。

「愚かな人間どもめ!! 我ら吸血鬼に手を出したことを後悔させてやる!! 人間どもを皆殺しにしろ!!」
「……」
「っ! エリザ…!?」

エリザの姿を捉えた依音は、動揺から剣を持つ手を震わせる。
一方のエリザも依音に気付いたが、

「依音…」
「! エリザ……」

彼女の頷きで、何を言いたいのか全て察する。

「……」

しかし、同時に迷いも生じ始める。と、

「怯えるな!!! 家畜は卒業だ!! 今日、俺たち人間は吸血鬼を克服する!! さあ、実験が完成するまでの時間を稼ぐぞ!! 人類の未来を、切り拓けぇええ!!!」

暮人の言葉の後、暮人側の帝鬼軍隊士は一斉に戦闘を始める。
シノン達をその中に巻き込んで。

「このままじゃ…!!」

なるべく接触を避けるよう、《雪浅鬼》を振り回しながら距離を取る。

「あ…」
「与一っ…! 師匠!!」

真音が攻撃を放つ前に、深夜の銃撃が与一を襲おうとしていた吸血鬼に命中した。

「僕らが援護する!! 君たちは逃げろ!!」
「行くぞおおお!!!」
「深夜お兄ちゃんっ……!」
「…初めて呼んでくれたね、シノンちゃん」
「……っ!」

感情が溢れ出す前に、混沌としている戦場を駆け抜ける。

「清吾たちはっ…!?」

必死に皆本隊の姿を捜すが、人が多過ぎて中々見つけられない。

「くっ…そおおおおおっ!!!」

悔しさを込めた雄叫びを上げながら、薙ぎ払うように《閃珠丸》を振り下ろす。

「聖璃さん! 聖璃さんっ!?」

シノンも、聖璃を捜していた。

「深夜お兄ちゃん達と一緒にいなかった…。一体、どこに……」

段々と不安が過ぎり始めた。その時、

「グレン!!!」
「!! グレンお兄ちゃんっ…!!」

捕らわれていたはずのグレンが、こちらに向かうように歩いていた……。

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