滅びのラッパ 2






「お…おまえ無事だったのか!!? グレン!!!」

「!! グレン、お兄ちゃんっ…!!」

優一郎の声に気付き、声のした方に顔を向けると…こちらに向かって歩いているグレンの姿が見えた。

「良かった…! グレンお兄ちゃんっ…!!」

涙を浮かばせながらグレンの元へ駆け出そうとした。その時!

「!!?」

グレンが優一郎に刀を振ろうとしたが、ミカエラが瞬時に止めた事により事無きを得た。

「どういう、事……」

何が起きたのか…と動揺し、足が止まる。
何故、グレンは優一郎に刃を向けたのか。

「! まさ、か……」

もう一度グレンを見た時、確信がついた。

「……"生成り"」

彼は、人間と鬼の狭間にある状態の事を指す"生成り"になっていたのだ。

「そんなっ…………」

信じたくない思いから茫然と立ち尽くしていると、暮人がグレンに「始めるぞ!!!」と呼びかけているのが聞こえた。

「始、める…っ!?」

顔を上げると、鎖がグレンの腕に巻き付いていた。

「何やってるの…グレンお兄ちゃんっ!!」
「シノノンッ!! 行っちゃダメ!!」

再び足を動かそうとするが、真音が手首を掴んできた。

「真音ちゃん! でもっ、だけど……!!」
「大将の耳に、もう僕達の声は届かないんだよっ!!!」
「!! ……何で、こんな事するのっ…」

最早現実を受け止める事しかないと悟り、強く歯を食いしばる。
すると、グレンが突然敵味方関係なく殺戮を行っている。

「来るぞ葵!! 禁忌を犯した人間に天罰が来る!! その力をコントロールしろ!! 天使を暴走させるな!! 拘束具を…!!」

その瞬間、鎖の出処だった車が爆発し…背中に4つの羽根を持つ幼い少女が上空から現れた。

「……禁忌の、天使」

エリザは少女を見上げながら、誰にも聞こえぬ声で呟く。

「《醜い人間どもよ》《滅亡しろ》」
『!!?』

少女が目の前にあるラッパを吹いたと同時に、空が血のように赤黒く染まった。

「何だ、あのラッパ……? それに、あの女の子…」
「み……未来!!? なんでこんなところに!!?」
「!! 士方の、妹…っ!?」

知人が驚愕しながら見上げた時、葵の命令に応えるようにもう一つの車から鎖が飛び出し、全て未来に突き刺さる。

「…て、てめえら俺の妹になにしてんだああああ!!!」
「君月く…!?」

咄嗟に君月の所へ向かおうとするが、その前にグレンの鬼呪装備《真昼ノ夜》が彼の肩を貫いた。

「ガキが動くな。天使をコントロールするための血がまだ足りてない」
「…なっ、なにしてんだおまえはぁああ!!!」
「っ…!! 君月くんから、離れてっ!!!」

優一郎とシノンは双方から刀と槍を突き立てる。が……

「なんだ、なぜ止める。殺せよ甘ちゃんどもが」
「…う、嘘だろ…。こんなの嘘だと言ってくれ、グレン」
「グレンお兄ちゃん…昔、私に言ってくれたよね。「おまえはきっと、誰も裏切らずに仲間を守れる奴になれる」って。……どうして、そう言ってくれた貴方が仲間を裏切るような事をしてるの!? どうしてなっ…!!」

必死に訴え掛けている最中、どこからか声がした。
以前にも同じ事があったが、今度はハッキリと聞こえた。

「シノン。ずーっと、逢いたかったわ。私の愛しの妹……」

「…本当に、真昼姉さんはグレンお兄ちゃんの……」

ゆっくりと槍を下ろし、次々と襲ってくる現実に気力を失いそうになるが、

「シノンちゃん、シノンちゃんっ!!」
「ハッ…! ミカ、君っ……」

ミカエラのおかげですぐに意識が戻ったのだが…次にグレンに視線を向けた瞬間、優一郎が突き刺された。

「−−っ…!!? ゆ、くん…優君っ!!!」

シノンは我を忘れながら優一郎の元へ駆け出し、着いてすぐ必死に呼びかけ続ける。
しかし、刺された傷は深く呼吸も酷く乱れている。

「早くっ、逃げなくちゃ…!!」

思考が混濁としているが、とにかく優一郎を助けたい一心でゆっくりと彼の体を起こす。
一方、未来の背中から禍々しく悍ましいモノが姿を見せ…全てを覆うような波が押し寄せてきた。





「……何もかも、終わりね…」

秀作を喪ってからずっと座り込んでいた聖璃は悲観めいた事を呟き、死を覚悟したのか目を瞑った。
しかし、波が迫ろうとした瞬間…何もしていないはずの彼女の周りに強力な結界が現れ、弾き返した。

「…………」

目を瞑ったまま死を待ち続ける聖璃。
それに反して、次第に力を増す結界。
一体、彼女の身に何が起こったというのか……?
その答えを知っているのは、ごく僅かな人物だけだ。





「葵、九鬼 聖璃を捜し出せ」
「はい!」

暮人の命令に応じた葵は、部下に聖璃の捜索を命じる。

「奴には、まだ"駒"として生きて貰わねばならないからな…」

不敵な笑みを浮かばせながら、未来と彼女の中にいた悪魔"アバトン"を見る。
そんな中、シノンは優一郎と共にミカエラに抱えられていたが…吸血鬼の女王クルル・ツェペシが目の前に立っていた。





「ミカ、優は手に入れた? …あら、刹那姫も一緒に連れて来たのね」

そう言いながらシノンの近くまで歩み寄り、ジッと顔を見つめる。

「凄く似てるわ、"真昼"に」
「"真昼"……。貴女、真昼姉さんを知って…」
「ミカ、シノン…」
「! 優君…っ!」

シノンとミカエラは、優一郎に視線を向ける。

「グ…グレンが泣いてた…。助けないと………」
「君はまだそんなことを…」
「家族を…」
「家族は僕だけだっ!!」
「………俺は」
「っ…ミカ君、降ろして。優君の代わりに、私がグレンお兄ちゃんを……」
「ダメだシノンちゃん!! そんなことしたらっ…!!」
「……」

ミカエラの制止を聞かず、自ら降り立った。

「シノンちゃんっ…!!!」
「ごめんね、ミカ君…。でも」

その瞬間、天高く伸びる大きな光の柱が現れた……。

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