Prologue
世界は、一度崩壊を迎えた−−−。
原因は、禁忌と言われている呪術に関係あった。
《終わりのセラフ》、それが禁忌の呪術である……。
その研究と実験を施し続けていた"百夜教"。
そして、"鬼"の素質を生まれつき持っている少女が研究に協力した事で"鬼呪装備"という吸血鬼と対抗しうる武器を得たのだが…同時に、世界を滅ぼす火種を蒔いた。
それによって日本の人口は約1割程になり、その急激な人口の激減は吸血鬼にも影響を及ぼしていた。
この出来事を機に人間と吸血鬼の熾烈な戦いはより勢いを増していった。
現在、その吸血鬼と戦っているのは日本で最大の権力である"日本帝鬼軍"。
彼らは、"百夜教"が遺していった"鬼呪装備"を用いて吸血鬼と戦う。
"鬼呪装備"は、吸血鬼の成れの果てである"鬼"の力を扱う事が出来る。
しかし、"鬼"は負の心を大変好む。
つまり…負の力が強くなりそこをつけ込んだ鬼に屈服されてしまえば、自身も鬼となるリスクの高い武器だ。
だが、ある小さき少女がこれから契約を遂げようとしている"鬼"は…吸血鬼の成れの果てではない。
「お願い、します。私と、共に戦ってください」
「…………」
そう鬼に告げる紫がかった灰色の髪の少女は真っ直ぐな眼差しで鬼を見る。
一方、無数の蝶が周りに舞っている姿が美しき白の髪の鬼は口を開こうとしない。
鬼は顔には表さないが驚いていた。
まだ10くらいであろう少女が、復讐をする為に自身と契約をしようとしている。
これ程、あり得ないと思う事はあったのだろうか……。
鬼としては、彼女に負担をかけさせたくはなかった。
何故なら…目の前にいる彼女は、自身の"生まれ変わり"だからだ。
「お願いします、貴女と契約を交わさないと…私は、力を持てない」
まだ訴え続ける少女。
どんなに頑なに口を閉ざしても屈さない少女の真剣さに、これ以上口を閉ざしても変わらないと思った鬼は……
「……例え、大きな負担がかかったとしても…良いの?」
「! …勿論、です」
「…分かった。貴女の力に、なる。貴女と、共に戦う」
「ありがとう、ございます」
「…私の、名前は……」
こうして、小さき少女は鬼と契約を交わした。
その契約から3年経った時、内に強力な力が眠っている少女も"鬼呪装備"の中でも最高峰となる《黒鬼》の鬼と契約を成そうとしていた……。
「はぁ、はぁ…」
「まーだ諦めないの?いい加減やめたらどうなのさ?」
息を整え、苦しむ少女を嘲笑うように言う長いピンクブロンドの髪の鬼。
しかし、少女は……
「っ……。諦め、ないっ…」
「へぇーっ、まだやるんだ♪ 良いよ、いくらでも相手をしてあげる。でも、それでもボクが負けるワケ……!?」
「……喋るのは、大概にした方が良い」
鬼が喋り続けた刹那、少女は持っていたクナイを鬼の頬に掠めた。
鬼の頬に紅い滴が少しだけ伝う。
「…あっははは!!! 君、中々良いセンスしてるんだね!驚きっ! きーめたっ♪ 面白いから君に協力するよ♪」
「…………」
「ははっ、何度見ても無愛想だねぇ〜。ま、その仏頂面もいつまで保つんだか……?」
鬼はまた嘲笑う。
それは、これから少女がどう動くのかを心から楽しみでいるからだ。
それからまた1年経ち、吸血鬼の都市にいる少女の姉は……
「真音……」
ペンダントの中にある写真を見つめ、愛しい妹の名を呟く少女。
彼女は数年前にある貴族の血を飲んだ事により、最も望んでもいない吸血鬼にさせられた。
だが、何故か成長はまだ止まってはいない。
恐らく人間の血を吸っていない事に深く関係しているのかもしれないと、数年前に結論付いていた。
「ごめんね、真音…。アタシが弱かったせいで……」
切ない表情をする少女。
少女の妹は世界崩壊後に引き離されて以降安否が分からない。
しかし、生きている可能性は低いと思われる。
それは…少女の妹は《終わりのセラフ》実験の被験者だからだ。
「…人間共に、これ以上好き勝手させない」
そう呟いた少女は同僚と見られる吸血鬼に呼ばれすぐに向かう。
一方、時を同じくして渋谷郊外では……
「…………」
栗色の髪を風に揺らしながら、女性は一点を見つめ続けていた。
今女性が立っている場所は女性とその親友にとって思い出の地である。
しかし、昔の面影は何一つ残ってなどいない……。
「真昼、これが…アンタのしたかった事なの?」
空を見上げる女性。
勿論、答えは何も来ない。
真昼ー女性の親友はもうこの世にはいない。
…いや、正しくは生死が不明だ。
「一体どこにいんのよ。アンタは……」
そう言い残した女性は拳を強く握りしめ、眉をしかめながらその場を後にした。
彼女達はまだ何も知らない。
この2年後に、運命の歯車が動き始める事を……。
これが、そんな彼女達4人の物語の始まりとなる。