傲慢なアイ 1






「うぁあああああああ!!!」
「っ!? 優君っ…!!!」

突如、新宿の時と同じように暴走を始めた優一郎。
シノンは手を伸ばそうとするが、既に彼の背中には黒い翼が生えていた。

「どう、しようっ…。このままだと、またっ……!!!」

その時、優一郎は空高く飛んで行った。
一方、シノア達も離れた場所から優一郎の暴走に気付き……





「…あれが、優……?」

前の暴走時にいなかった知人は、その変化に目を見開かせている。

「っ、やばい…。前と同じような事が起きたら……」

真音は一滴の汗を伝せながら空を見上げる。

「…優……。頼む…優…。妹を…、助けてくれ…………!」

君月の言葉に応えているか否か、優一郎は未来の背後にいる悪魔アバトンを斬った。

「"第二ラッパ・塩の王"、"第五ラッパ・滅びの悪魔アバトン"……」

エリザは何一つ表情を変えず、その全貌をただ凝視する。

「…終わりだ。人が生み出す欲望の連鎖は、今日すべて塩の柱に変わる」
「……!!」

シノンは駆け出す。
今の彼に何が出来るか分からない。
だが…それでも、彼の元へひたすら走り続ける。

「優君、優君っ…!」

何度も彼の名前を呼んでいる内にすぐ近くまで辿り着き……

「っ、優君ーーーっ!!!」

声の限り、彼に呼びかける。すると……

「……お……。俺は!!! 家族を救うんだあああああ!!!」
「!!?」

《阿朱羅丸》で自身を刺した優一郎が、ゆっくりと落ちてゆく。
落ちきる前に鳴海の《玄武針》が彼の体を支えるように引っかかり、地面に着く直前でシノンが抱きしめるように受け止めた。

「鬼の、ツノ…っ」

彼の頭部に生えている黒いツノに、動揺が走る。

「シノン!! 優は無事かっ!?」
「知人君! 皆…!!」
「!? ツノが…」

シノア隊と鳴海・依音がシノンと優一郎の元へ駆け込んだ時、依音は真っ先に優一郎のツノに目を向けた。

「シノノン、一体何が…」
「それは……「人間どもを殺せえぇえええ!!!」
『!!!』

事情を説明しようとしたが、再び攻防が始まろうとしていた。

「おおおおお!!!」
「……我々シノア隊は、いまから日本帝鬼軍を離脱します!!」
「よし!!」

その時、暮人側の帝鬼軍が優一郎を渡せとこちらに迫って来た。が、

「! ミカ君…!!」

ミカエラが、その一人を斬った。

「君たちを手伝う!! さっさと逃げろ!!!」

彼が現れた事に驚くが、

「行きましょう!! 私たちは絶対に生き残ります!!」

シノアの言葉に全員賛同の頷きをし、出口へと走り出す。
その際、帝鬼軍や吸血鬼達の中を必死にくぐり抜ける。

「人間どもがあああっ!!!」
「…!?」
「みっちゃん!!」
「三葉ちゃ……「三葉に、手を出すなあああっ!!!」
「ぐあぁっ!?」
「知人!」

知人は三葉に襲いかかろうとした吸血鬼を一振りで滅した。しかし、

「はぁ、はぁっ……!!」
「…!」

少し息を荒げているのが見て分かる。
恐らく、ここまでずっと怒りや憎しみと葛藤しながら戦ってきたのだろう。

「知人…っ、ごめん……」
「! 何で、謝るんだよ…?」

三葉の涙でようやく我に返った。

「あたしは、守られてばかりだから…」
「んな事ねぇよ!! オレは、ただっ……」

そこから先の言葉が上手く出てこない。
そこまで三葉を悲しませてしまったのか、そう思うと胸が締め付けられるように痛んだ。
…その時、

「…! これって、もしかして……」

以前五士が言っていた言葉を思い出し、胸部に手を当てる。

「心…。そういう事だったんだな、典人兄ちゃん……」

1ヶ月かけて探し求めていた答えが、見つかった。
それは…本気で誰かを強く想い、命を懸けてでも守り切る事だ。
そして、その相手は……

「三葉、だったんだな……」

当たり前のように傍にいたので中々気付けなかったが、何度も彼女に救われた。
何時でも彼女が自分を支えてくれていた。
…これまで彼女を守っていたのは、無意識に彼女を想っている故の事だった。

「…オレの方こそ、ごめん」
「知人……」
「だから、もう泣くなよ」

そう言った知人は三葉の右手を握り、

「…おまえに伝えたい事があるんだ。だけど、まずはここから出る事が先な?」
「……うん」
「おっし!行くぞっ!!」

離さぬよう強く握り合った後、更に走る速度を速める。
そして、守るように《閃珠丸》を振るう。

「はぁああああっ!!!」

先頭にいる依音も、行く先を妨げる敵を薙ぎ倒す。

「このまま出口まで…っ!?」
「姉ちゃん……?」

途中で言葉が途切れた依音。
彼女が見据えている先には、

「ラ、クス……ッ」

自動車博物館に行ったはずのラクスが、少し先の場所で待ち構えていた……。

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